エピローグ はじめまして

胡桃の能力によって、ハイパーセンスを持つことになり、非日常との生活を余儀なくされる人は、増え続けている。胡桃が消えてしまっても、能力は消えなかったらしい。

まこちゃんは、俺たちの屋上での出来事を聞くと、そう教えてくれた。

そんな非日常が続く中、俺たちの日常は、これからも続く。


最近の水彩高校は、俺の話題で持ち切りなる。俺は、自分の席で、鼻を高くしながら話を盗み聞きする。

「最近の水上くんいつに増してかっこよくなったよね」

「そうね。もう私も惚れちゃうわ」

クラスの視線は、俺のイケメン度に湧き始め。

「いやぁ……やはり水上は、将来有望ですな」

「水彩高校の星じゃのう」

教師たちは俺の才能に湧き。

「俺も水上みたいになりたいな」

「いや!お前じゃ無理だよ」

男子は、俺に憧れる。

これが最近の俺の評価。胡桃が消えてから数日、世界は、何もなかったかの様にいつも通り進んでいく。

だけど、これからも胡桃に誇れるような人生を送っていこうとした結果である。

「いやぁ……イケメンは、罪作りだなあ……」

「いや、調子に乗らないでくだい。恭也は、ナルシストで盗撮魔なんでんすから」

「そう。恭也は、結局の所は、恭也でしかない」

「マリアも芽唯も俺のこの愉悦に毒づくのは、やめませんかねぇ!」

まあ、あの後からも俺と芽唯とマリアの関係は変わらない。まあ、水上家の炊事担当がマリアにはなったのだが。

まあ、少しだけ、芽唯は表情を表に出し、マリアの俺に対してのツッコミは、今までより過激にはなっているが……

ということで、俺の席には、芽唯とマリアが集まってきていた。

「まあ、それよりも、結局あの後、ふたりは、記憶を思い出してからどうなったの?」

ウキウキした表情で芽唯は、俺たちに聞いてくる。

というのも、芽唯が気になっているのは、過去の記憶を思い出し、お互いに恥ずかしいセリフを言い合ってしまったことについて、気がつき、マリアと二人で今後についてはなしたのである。

「と……特に、芽唯が喜ぶような話はしてないですよね!恭也!」

顔を赤くして、話の話題を早く終わらせようとするマリア。流石は、我が家のいじられ担当である。いいリアクションだ。

「まあな!別に俺がマリアとセフレ契約なんてしていないぞ」

「ほほう……セフレ」

俺は、冗談半分な、同意を入れると芽唯が食いついてくる。

「な……何もないのに変なこと言わないでくださいよ!恭也!」

さらに、マリアのリアクションは、大きくなる。

「けど、やっちゃたんでしょ?」

「なにを!やったんですかね!」

「セッ●ス?」

「やってないです!」

バカみたいなことを言う幼馴染の芽唯である。しかし、芽唯は、自力で、ハイパーセンスにたどり着き、最後までハイパーセンスを演じきる本当の転載なのである。

ちなみにこれを打ち明けるとまこちゃんは、芽唯を気に入ったのか、アルバイトという形で、ハイパーセンスの集まるあの病院に雇われたりもしたらしいが、まあ俺は、その場にいた訳でもないが……

「まあ、いつか、マリアにもセック●をする機会があるんだから、そこまで怒るなよ」

「そう。誰もがいつかは経験するはず。私も処女だけれど」

こうして話すと今までと違い芽唯は変わった。少しは、芽唯の引きこもりが減ったとは思う。

「そうじゃなくって!そもそもこんな公共の場でそういうことは言うべきじゃないです!」

そして、俺とマリアの関係も少し変わったのだが、それは、二日前にも遡る。


「また、ここにいましたか……恭也」

「まあな……イケメンは、物思いにふけるものだろう」

放課後の屋上、マリアと再会し、胡桃と別れた場所。俺にとっては、思い入れの深い場所にいつの間にかなっていた。

毎日、屋上に足を運んでいたからか、マリアは、恐らく俺を心配してきたのだろう。

「だから、イケメンは、そうやって自分をイケメンって言って、物思いには吹けないのですよ」

呆れたように言う、マリア、それは、再開した時のような余所余所しさがなくなったのは嬉しかった。

「思えば、ここが全ての始まりだったよな」

「そうですね……ここで私は、告白されていたところを盗撮していた恭也が……」

そこまで言うとマリアは、何かに気がついたのか顔を赤くしていた。

「ん?どうしたマリア?やっぱり妹のことをやっぱり引きずっている俺を見てやっぱり失望したか?カッコ悪いもんな」

俺は、自虐気味に笑うが、マリアは、俯き首を横に振った。その表情は、しっかり見えなかったが、顔は、赤いことが良く分かる。

「い……いえ、心配に……なって……恭也、毎日ここに来るから」

俺は、ちょっと反応に困った。これが、一体どう言う感情なのか。

「なんだろうな。まだ、俺は、胡桃のことを引きずってるのかな?俺は、このまま、幸せになっていいのか?胡桃に悪いことしてしまったんじゃないか?俺の気持ちは、本心か?義務なのか?」

わからなかった。俺は、胡桃には、俺が悪くないと言われた。けれど、やっぱり、胡桃のことを気にしている。胡桃は、最後は幸せと言っていた。だから俺には、幸せになるという義務を感じてしまう。俺の感情が本心なのか義務なのか……分からなくなっていた。

「はあ……恭也は意外と根に持つのですね。うん……そうですね」

マリアは、ため息をつくと、俺をジト目で見た。

「な……なんだよ。マリア……俺は真剣に……」

「私、分かりました。恭也!あなたの気持ちは、もしかしたら、過去を引きずっています!それなら私は、ひとつ提案します!」

「な……なんでしょう?」

「今までの恭也は、死にました!今日からは、生まれ変わった恭也です!私も今日から、生まれ変わったマリアです!なので、このごちゃごちゃした感情は、捨てちゃいましょう!」

マリアは、胸を張り、きっぱりと言う。その態度に俺は、少し腹が立ってしまい声を荒らげてしまった。

「どういうことだよ。それは、胡桃を忘れろってことか!」

「違います!絶対に胡桃のことは忘れてはいけません。しかし恭也!折角、胡桃が自分を見直す機会をくれたんです!だから、これからを見てください!そういうことはすぐに答えを出さなくてもいいのです!」

マリアは、言葉が次第に強くなってくる。

「ゆっくり考えていきましょう!それができないのなら、過去の私たちの関係は、忘れて今から、友人として!新しい関係を!それこそ胡桃のためです!」

……俺は、悔しいと思った。

マリアは、胡桃のことお願いをしっかりとくんであげていたのだ。マリアは、あの出来事を乗り越えようとしていた。

血のつながった兄妹の俺より考えて、提案してくれた。

マリアの真っ直ぐさに俺は、あこがれを感じてしまう。だから、自分の気持ちを整理したいからか、聞いてしまう。

「……俺は、幸せになっていいのか?」

「なりましょう。そのためなら、私は、生まれ変われます」

「そっか……」

なんて愚かなことを考えていたのだろう。

胡桃は幸せだった。彼女の言葉を疑ってしまうなんて……

胡桃の願いを叶えてやることを迷ってしまうなんて……

だったら、答えは、一つだ。

俺は、生まれ変わるのだ、妹願いを叶えられるカッコイイ男に!

「マリア!初めまして!俺は、水上恭也!これからもよろしく!」

「初めまして、私の大好きな恭也!私は、黒川マリア!これからもよろしくお願いします!」

俺と、マリアは、笑顔で自己紹介をした。

それは、再開の挨拶ではない。これからの自分たちへの声援。

これから、幸せになるための約束。

「サラっと愛の告白された……マリア、大胆!」

「か……家族としての愛ですよ!それに恭也だって私のこと好きって!」

「お……俺だって家族としてだし!」

今日も俺たちの楽しい、いつも通りのマリアとの口喧嘩が始まる。今日も一日楽しく過ごせるだろう。そんな予感がした。

この日は、晴れ渡る青空。鳥はさえずり、世界は、今日も回る。

こうして今日、俺たちは、生まれ変わった。

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