八章 学園もの小説になったよ!やったね……(略

世良邸、ここで、世良真琴と黒川マリアは、いつもみたいに、学校や、職場であった出来事を教えあう。

「ほう……それは、実に喜ばしい。マリに心の底から、友人と呼べる友ができたのか」

「母さん、私だって水上くん以外に友人はいます。あと、もう今日のビールは、おしまいです。そのうち死にますよ」

真琴は、冷蔵庫から、缶ビールを取ろうとするのをマリアに止められる。

「何を言う。人は、いずれ死ぬ。それに、酒は、体の調子を整える薬だ。だから、私は、飲む」

「母さん、飲みすぎです。もう、何缶目ですか?飲みすぎです」

「私が酒で失態を犯したことがあるか?」

「母さんは飲むたびに失態してるじゃないですか……」

「マリは、彼氏出来た途端に強気になるな」

「だ……誰が、彼氏ですか!?あんな人彼氏だったら私は、最悪です!顔は、かっこいいし、たまに見せる優しさや笑顔は魅力的ですが、性格は最悪です!」

顔を赤くし強く、真琴の言うことを否定するマリア。しかし、それが真琴には、とにかく面白く写った。

「まあまあ、落ち着きなさいなマリ……彼氏できたなら、初体験は、しっかり予習しておけよ。夫のいない私が言うのも変だが」

「あぁぁあぁあ!母さん!一生禁酒させますよ!」

マリアは、赤面を通り越し、発熱をする。しかし、テーブルが燃えても全く動じない真琴は、思い出したかのようなわざとらしい仕草をする。

「そういえば、少年について、ひとつ分かったことがある。それに付随して、マリに仕事がある。後、ビール飲むわよ」

「あ……水上くんのことについてですか?なんでしょう。後、ビールは飲まないでください」

「ちっ。わかった……じゃあ、仕事内容と調査結果についてなんだが、絶対に少年にもこのことは、話してはいけない」

真面目な顔でマリアに忠告する真琴だが、マリアは、少し不服そうな表情をした。

「なぜですか?これは、水上くんのことです。彼には、説明義務が……」

「マリ、悪いが、これは、サバトからの命令であって、少年のことも考えてのことだ。少年のことを大切に思うなら、なおさら言わないほうがいい」

「しかし!それは、彼を裏切ることに!」

「これを見ても同じ事が言えるか?」

少し、収まっていた気温が、またあがってきた。しかし真琴は、動じず、持っていた、水上家にまつわる調査資料と書かれた資料をマリアに渡す。

「何を……」

納得いかなそうな顔で、資料をめくり始める黒川。その表情は、段々変わる。

「か……母さん。この資料に間違えは、ないのですか?」

「間違えない」

「……そんなわけ。こんな馬鹿げた資料を信じろと!」

「事実だ……全く、ビールが温まったじゃないか」

書いてあることは、マリアの予想をはるかに超えるものであった。

「仕方がない。それに、これは、マリにも関係あることだからな」

「けど……けど……」

慌てるマリア、頭を押さえ、何かに耐えるような。そして、このことを理解できないのか、事実への拒絶。様々な感情が、彼女を支配する。

「こんなもの、見たら混乱するだろう。そうだ、私や、サバトの連中もおなじように混乱していたよ」

「そう……ですか……」

「マリが友人でいたいなら、彼まで混乱させる必要はない。それにこれが事実なのだから、私たちは、少年を守らないといけない。だから、そのためにも言わないでくれ」

頭を下げる真琴。普段から堂々として、なにがあっても自分から謝らない真琴がここまで謝るのは、驚きだった。

そして、マリアは、ひとつの答えを持って答えた。

「分かり……ました。納得はいきませんが、私にも整理の時間が必要です。その上で、いつかは話します。私が、彼にとって誇れる友人になるためにも」

「はは……マリは、強くなったな、私は、驚いたよ」

「私は、母さんの娘で、水上くんの友人ですから」

マリアの顔は、覚悟を決めた強い人間がする前向きな表情だった。


 そして、休日明け、憂鬱な月曜日の教室。唯一、晴れた天気だけが、救いであるのだが、クラスの連中も、俺と黒川が毎日一緒に登校していることに気がつきはじめたのか、少しざわめいていた。

まあ、俺は気にしないのだが……

「なあ、水上!お前、最近黒川さんと付き合い始めたんだって!道後さんだけでは、飽き足らず、ついに二股か!」

「いや……なんでそういう話になっている。俺がイケメンだから嫉妬するのは、分かるが醜いぞ、69番」

「だからなんで俺をそう呼ぶんだ!なんか囚人みたいで困るぞ」

俺に話しかけてきたのは、俺のイケメン度の引き立て役、69番こと六(むつ)実(み)九重(ここのえ)。その名前に数字が、二つあるので、あだ名は、69番。決して下ネタではない。

決して下ネタではない。

大事なことなので、二回言った。

「うるさいぞ69番。お前がありもしないことをいうからいけないんだ。下ネタみたいな名前しやがって」

「いや、水上がそうやって呼んだよね!最初に!」

「いや、最初は、芽唯だ。俺は、悪くない!」

「ひどい責任転嫁をここに見た。道後さんがそんな呼び方をするはずない!俺のアイドルだぞ!」

「そう私は、無罪69番は、69番同意のもとで出来たあだ名」

キレ芸がいたにつき始めた69番だが、いつものお決まりのように芽唯が突然俺たちの間に出てくる。

「ぴゃ!どど…どぉ道後サン!?きょ……今日もイイテンキデスネ」

芽唯が幽霊のように、俺と69番の間に来て会話に突然参加。俺は、そこまで驚かないが、69番は、露骨に驚き、意味のわからない動揺をする。

はっきり言って傍から見て、完全に69番が、芽唯のことを好きなんだとまるわかりなのである。いつか、69番が芽唯に告白するところを盗撮しようと考えているのだが、その時は、俺が、69番と友達をやめる時でもある。

そう考えると下手に盗撮しようとは、思わない優しい自分に惚れ惚れしてしまう。

「天気は、いい。けれどこれから暑くなると考えると憂鬱」

「そ……そうですね!」

嘘を付け、前は、水着が見れるとか言って夏は好きとお互いに語り合っていたろう69番。

お前は、夏教徒背信者だ。

「……で、どうした?芽唯、何か面白いことでもあったのか?」

「それは、もちのろん。あれを見て」

芽唯の指の指す方向には、女性陣に囲まれ、質問攻めにあう黒川がいた。イジメとかそういうものではないのだろうが、完全に狼狽えている。すこし変態仲間と様子を伺う。

「ねぇ!やっぱり黒川さんって水上くんと付き合っているの?やっぱり告白は、水上くんから?!」

少し興奮気味の長髪のゴシップ大好きな女の子が黒川に質問を投げかける。

「あ……あの……私と水上くんは、友人なだけでして……」

「で……でも今日も二人で登校していたんでしょ!」

いつもは、目立たないメガネの女の子も今回ばかりは、キャラが濃くなっている。

「い……いえ……ですが、いつも、胡桃ちゃんや、道後さんもいましたから……」

「でーもー、道後さんと、水上君の妹は、家族じゃない?もしかして家族公認?」

ギャルっぽいクールな子は的確に質問をしてくる。

「ファッ!いえ……その……」

回答に困った黒川は、俺たちが、ニヤニヤと黒川を観察していることに気がつくと、助けを求めるようにアイコンタクトをとってくるが……

「……ぐ」

「頑張れ、黒川」

俺と芽唯は、親指を立てて頑張れとだけ、エールを送った。

「フォローなし!?」

それを見ていた69番は、俺たちの行動に、衝撃を受けていた。

「いや、俺たち」

「私たちは」

「「困った顔を見てニヤニヤするのが趣味なのです」」

「お前ら!家族揃って最低な趣味をしているな!それに、息合いすぎてなんか悔しいわ」

最低ではない。それに、趣味趣向は、人それぞれだ。たまたま、芽唯と俺は、趣味嗜好が近いだけだというのにひどい言い草だ。

「69番、私……さいてい?」

「決してそんなことありません!」

わざとらしい上目使いで69番を見つめる芽唯。自分だけ、最低と言われないようにするなんて……同調からの裏切り芸が身につき過ぎだろう、我が幼馴染よ。

それに、キレ芸芸人のくせして手のひらリバース芸まで極めている69番に関しては、もはや、お笑いに行ったほうがいいのではと思う俺。

「まあ、69番。お前の手のひらリバースは、もっと最低だと俺は、思うぞ。そこのところはどう思う」

「いや、俺の中では、女の子が最優先。野郎なんて蚊帳の外でいい」

「見損なったぞ、69番。俺とお前の仲はそんなものだったのか」

「じゃあ、俺の名前をちゃんと言おうか、水上よ」

「それは、シックスナイ……」

「言わせねぇよ!」

「ナイン」

「道後さん!?頼む、俺のアイドルまで水上みたいに変態にならないでくれ!」

頭を抱えて発狂する69番。いや、芽唯は、授業中だろうが休み時間だろうが、昼休みだろうが、プライベートだろうが、官能小説を読む変態だぞと言おうとしたが。

「恭也?」

「どうした?芽唯?」

芽唯は、俺に話しかけると、変わっていないはずの表情から伝わる覇気を感じた。

「裏切らないよね」

「芽唯を裏切る訳無いだろう」

はい、俺も手のひらリバースしました。

だってしょうがないじゃん。なんか怖いんだもん。

「……うん、水上。お前の家でのカーストが低いのは、わかった。絶対将来は、お嫁さんの尻に敷かれるタイプだよ」

「何を言う。俺は、イケメンとして義務を果たしただけであって……」

「あー、はいはい。自惚れ乙」

……自惚れでは無く、本心なんだが。

「恭也」

芽唯が、凄く真面目そうな顔で、こっちを見てくる。

「なんだ?芽唯?」

俺は、芽唯の真面目な顔に何か大切なことを言うのかと思ったのだが……

「自惚れ乙」

「君も敵なのね!」

芽唯は、俺にガッツポーズそれも、普段見られないような笑顔で……おい、無表情なキャラは、どこに行った芽唯。

そんな話をしていると、予鈴が鳴り、担任の先生が教室に入ってくる教室。突然静かになる瞬間に、俺は今も慣れない。学校ってスゲエ……

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