四章 ありきたりなデート回

自宅を出るとそこには、晴れ渡る空とさえずる小鳥たちは、俺のために存在しているかのような清々しい日曜の朝。今日は、休みということもあり、一人で出かけようとしていたのだが……

「なんで、黒川さんがいるんだ……」

「仕方ないです。水上くんの監視は、私の仕事なんですから」

ムスっとした顔の黒川さんが何故か、ウチの家の前に立っていた。

まあ、事の発端は、俺が出かけようとしたら、黒川さんがやってきた。

どうやら、俺のハイパーセンスの診断結果が出るまで、外出時は、同行しないといけないらしい。

少しくらいの融通を利かせて欲しいと思ったが、サバトの方針上それは、許されないらしく、どこから聞いたのか、黒川さんが俺のお出かけについてくるらしい。

「はぁ、たまの休みくらい、俺一人で出かけさせてくれないか?」

「いや、私は、たまの休みを水上くんに潰されたのです。ため息は、私がつくべきです」

互いにやりたいことがあったのか、ため息をつきあった。

「まあ、黒川さんみたいな学園のアイドルとデートに行けるならむしろ俺は、嬉しいんだけれど」

まあ、ここで、明るくいかないのは、紳士の名が廃るので、俺は、軽い冗談をいったのだが、黒川さんは、俺の言葉を聞いて顔を真っ赤にした。

「な……で、デート!?そそそそそ……そんなデートなわけがないです!?」

そういうが、しっかりと化粧をして、純白のワンピース姿でおしゃれしている黒川さんは、人目を引く様な美少女で認めたくないが、ものすごく可愛い。

「いや、気合入れたファッションして、そうとう時間かけて準備したろう?」

「くっ、男性なのに高い観察眼……」

「まあ、イケメンだから」

「イケメンは、自分のことをイケメンなんて言いませんよ」

それは、しょうがない。イケメンなんだから。

「けどなんで、俺が、出かけるなんてわかった?」

俺は、以前にでかけるなんて話してはいなかった。精々、胡桃に外食するからご飯は、作らなくて言いっていったくらいで……あれ?もしかしてだが……

「ひとりで、理解しないでください。水上くんが理解しても、勘違いされると困るので」

「だって、胡桃に俺の予定聞いたろう?」

「確かにそうです。私は、胡桃ちゃんに聞いて昨日のうちに準備しました。聞き出すためにものすごく苦労したんですから。胡桃ちゃんに、質問攻め食らったりして大変だったんですから」

……なんだか、そんな気はした。胡桃ってなんだかんだ他人の恋愛事情とかが気になるのか、そういう話題が好きで女の子……芽唯と出かけるだけでもワクワクした表情でデートなのかと聞いてくるのである。

芽唯からは、兄弟揃ってそっくりだと言われる。完全にゴシップ好きの兄たる俺にそっくりで、兄としてもなんだか悲しいものがある。

「……妹のことに関しては、俺が、全般的に悪い。謝る」

「……まあ、お姉さまって呼ばれて私も嬉しいのでそこは大丈夫です」

「よし!じゃあ今日は、学園のアイドル黒川さんと、二人でデートと洒落込みますか!」

「で……デートって!なに……何言っているのですか!?私は、あくまで監視です!水上くんがサバトについて話さないように、私は、見張るだけですから!仕事です!仕事!私は、空気なんで、気にしないで大丈夫ですよ!」

顔を真っ赤にして俺の発言を否定しようとする黒川さん。

なんだか、面白くなってきてしまった……胡桃や、黒川さんってからかうと、いい反応してくれるから、ついつい面白くてからかってしまう。

「ほーん、監視だけなんだな、わかった。じゃあ、エロビデオ屋とかエロタワー行ったり、エロ本、エロ同人漁ったり、エロフィギア買ったり、エロ友達とエロ話で盛り上がる。エロエロ日帰りツアーにでも行こうかな……」

「べ……別に、私も、大人ですから、エロとか耐性ありますし……全然私は、びっち?ですから、エロとか平気……です」

「具体的には、(自主規制)買ったり、(自主規制)見て(自主規制)したり、(自主規制)(自主規制)な集まりしたりするから、ビッチな黒川さんは、(自主規制)に(自主規制)されるけれどいいのか?」

俺が、具体的で生々しいことを言い始めると、段々、黒川の顔が赤くなって来て、家の周りの温度が、比喩では、無く本当に上がってきた。

「ごめんなさい!ただの貧相で未経験の私にそれは辛いからやめてください!」

そうして、黒川さんは、昨日のような発火は、抑えたようだが、メンタルのほうが持たなかったのか、俺に全力で謝ってきた。

「わかった。俺も、昨日みたいに発火されても困るし、今日は、映画でも見て、ご飯食べて、ショッピング!まあ、こっちのほうが、俺もエロい店行くよりは好きだから、そうしよう」

「あ……ありがとうございます!私も健全な高校生はそういう遊びをするべきです!」

「まあ、元々、そのつもりだったし。別に、エロいところに行く予定は無いから安心してくれ!自称ビッチ!」

「や……やめて下さい!私、ビッチじゃないです!そもそも、男性とデートすらしたこと無いんですよ!」

「ほーん、そうしたら、今日が男との初デートか、おめでとう。黒川さんの人生初のデートの相手は、世界一のイケメンが相手だ、光栄に思うがいい」

「はぁ……なんか、最悪です。こんなナルシストと初めてのデートだなんて。最悪です」

……あれ、俺とデートしたら、きっと全世界の女子は、歓喜の渦に巻き込まれるはずなんだが、なんで、黒川さんは、ため息をついているのだろう。もしかして、ブサイク好きなのだろうか……俺は、黒川さんの性癖が心配になってきた。

「まあ、黒川さん、会った時に言うのを忘れてた」

「なんです?エロいことでなければ、別にいいですが」

やけに、俺の発言を警戒する、黒川さん。どれだけ、エロいことを言われたのが嫌だったのだろうか?

しかし、俺は、今日あった時言わないといけないと思った、大切なことを言った。

「今日の服、すごく可愛い、似合ってるぞ」

「またまた、そうやって、私をからかうのですね。もう驚かないですからね」

「何言ってるんだ、黒川さん、俺の本音だぞ。イケメンは、審美眼が肥えているんだ。美しいものに、嘘はつかない」

まあ、どんな理由にしろ、俺は、自分のためにおめかしをしてくれた女性を褒めるのは常識と、世界一周旅行中の両親に言われていたので俺の中では、もうそれが習慣になっていた。

しかし、それを聞いた、黒川さんは、また、顔を赤くし始めた。信号機も驚きの、速さで顔を赤くした。

「な……何を真顔で話しているのですか!?」

「いや、本当のことだし」

「しかし、こういう時の水上くんって冗談ばかりで……」

「俺は、自分も、相手も本気で褒める主義だからな」

「そ……そうですか。それなら、洋服を選ぶのを頑張った甲斐がありました」

「それは、何よりで……っとそろそろ行かないと、映画の時間が押すのは、困るから、行こうぜ!折角の休みなんだ!楽しまないと!」

「あ……」

俺は、黒川さんの手を引いて、駅まで急いでいこうとした。

手が、異常に熱かったが、離して、先に言ったら、黒川さんの仕事にも支障が出てしまうと考えたからの行動なのだが。

「も……もう、なんでこんな時にいきなり水上くんは、キザになるのですか?いつもみたいにからかっていいのに」

「まあそれは、また今度にするわ」

こうして俺たちは、映画館に向かうことにした。

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