一章 はい、それが学園描写少なくて……えぇ学園ものですよ!はい!
俺たちが向かったのは、奥まった闇医者のいそうな病院や隠し通路から入る様な不思議な施設などではなく、どこにでもある水彩私立病院。地下一階から四階まである建物の地下5階にあった。
語弊ではなく、地下5階だった。
しかし、市立病院の地下5階と言っても上の階とは変わらず、清潔感のある清潔感漂うエントランスがあり、唯一違うところをいうのであれば、人が俺と、黒川さんしかいないことぐらいだった。
「はぁ、あのエレベーターに秘密のコードがあったなんてな」
「驚きました?」
ドヤ顔で聞いてくる黒川さんだが……
「いや、むしろこんなものかと思ってる。もっと駅と駅の柱の間に入ると中途半端な番線で、それが魔法の国にいく汽車だったりした方がよっぽど驚く」
「ですよね。驚きま……せんか……。けど魔法学校には、いけませんがここでは、ハイパーセンスのすべてが知れるのですよ!」
「はあ」
「露骨に興味ないのやめせん水上くん?というか普段となんか雰囲気違いません?」
「そりゃ、もう外面見せても問題ないくらいの秘密知られたしねぇ」
カメラ返してくんねえかな。もうそれしか考えていません。本当に。
「ま……まあ、クズが本性だったんですからしょうがないですよね」
「まて、黒川さんも相当な毒舌だぞ」
「盗撮魔……流石の私だって軽蔑もしますよ」
「ハイパーセンスとかいうセンスの欠片もない能力名やら、『フリーテンプチャー』なんてダサい二つ名を名乗っている奴らには言われたくない」
「む……盗撮魔の変態」
「中二病」
「違いますよ!」
「俺だって変態じゃないわ!」
とりとめのない口喧嘩、ついつい言われて言い返してしまったが、そんな喧嘩をしていると診察室と書かれた扉から、ひとりのメガネをかけた白衣の女性が、一升瓶を持ちながら出てきた。
「あー、人が二日酔いで頭が痛いのに大きな声で痴話喧嘩しないでもらえるかしら」
一升瓶を持った女性は、そう言うと、一升瓶を口にしてまた酒を飲み始めた。
「母さん!また仕事中にお酒飲んで!ダメっていったでしょう!」
「あぁ……待ってマリ。本当に待って……私にとってお酒は、血液なんだ……。私から血液を奪わないでくれ!」
「ダメです!お医者さんにもお酒飲みすぎて注意されたでしょ!」
「私も医者だから!あんなヤブ医者よりよっぽど仕事するぞ……だから……」
「ダメです!」
俺は、素直に驚いていた。大概、ハーフ系美少女の母親っていうのは、金髪巨乳なものとばかり思っていたが、黒川さんに母さんと呼ばれた女性は、どう見ても黒川とは似てもにつかない、白衣姿の日本人女性だった。まあ、巨乳っていう共通点は、あるけれど。
「というか……少年は、どうした?マリの彼女か?」
「母さん!私がこんな盗撮魔なんかと恋人になるなんて……それに私は、一生そういう関係になれるような人を作って良い人間じゃないのだって知っているでしょう!」
「おい、黒川さん、お前の母ちゃんの前だが言わせてもらうぞ!自分のことを悪く言うのは良いが、俺のことを悪く言うのは、やめろ!イケメンな俺の泊に傷がつく!」
「水上くんも変なこと言うのやめてください!ややこしくなるから!」
そこから三十分ぐらい身のないような会話が続いた。恐らく、この自体に収拾をつけようとしていた黒川さんが一番疲れただろう。
しかし、俺は、同時に普段学校で見る黒川さんとは違う一面が見れて個人的には面白くも感じた。
結局事態に収拾がつき、みんなが落ち着いたので、お互いの自己紹介や、今の状況の説明をすることになった。
「私は、世良(せら)真(ま)琴(こと)、気軽にまこちゃんと呼んでくれ」
「本当にやめてください母さん、いくつになってそんなこと言っているのですか?」
まこちゃんは、お酒を結局没収され、少し落ち着いたのか、あまり荒れていなかった。
むしろ、黒川さんの方が荒れている。
「水上恭也です。気軽に恭也きゅんと呼んでください」
「水上くんも、酔っ払いに乗らないでいいんですよ!」
「いや、この波は、乗るべきだぞ。マリアきゅん!」
「待ってください。私も変人同盟の中に入れないでください」
いや、なんだ、変人同盟って、俺変人じゃないぞ。
「あははは!いいじゃないか少年!そういう返しは、私好みだ!いいだろう!なんでも聞きたまえ」
俺の返しに笑ってくれたまこちゃんに俺は、気になることをまこちゃんに聞くことにした。
「なんで、まこちゃんと黒川さんは、苗字が違うのですか?」
「……」
「……」
俺の質問にきょとんとする。あれ?俺なんかまずいこと聞いたかな?なんか申し訳ない雰囲気になってしまったぞ。
しかし、次の瞬間、まこちゃんは、大笑いした。
「あははははは!あははははははは!なんだ少年!君は……ふふっ……お笑い芸人か何かか!普通、もっと聞くことあるだろう!」
「まあ、この施設とかは、なんとなく察しはついてますから、黒川さんが、ハイパーセンスは、秘匿しないといけない存在って、あらかた、ここは、ハイパーセンス絡みの怪我や病の病院で、そのハイパーセンスとやらの能力者は、こういう病院で治療したりするんですよね。あとは、俺みたいな、ハイパーセンス予備軍の検査や機関についての説明とかするんですよね。もしかしたら、こういう施設で、ハイパーセンスの管理もしているんでしょうね。なんたって、ハイパーセンスに目覚めた人間は、絶対になんかの病気だと思って、引きこもるか病院で検査をするはずですから」
「少年は、聡明だな。うちの愛娘と違って」
「母さん、余計なお世話です!」
「まあ、それはいいとして、そうね。簡単に言えば、私は、この子の母親替わりよ。昔から、マリの面倒は私が見ていた。考えてみてくれたまえ。29歳の女性に16歳の娘がいるなんて、流石に13歳で出産とか倫理的にまずいだろう。まあそれだけだ。それ以上は、特に何にもないし、聞いても出ないぞ。なんたってワケありだからな!」
俺が言うのもなんなのだが、うん、まこちゃんも、大概の変人なんじゃないのだろうか、そんな余計なことも言わなきゃ気にならないのに敢えて言うなんて。
「おや、私のことが変人だと思っているね、少年。まあわかるとも、しかしこういっておけば、これ以上、聡明な少年でも踏み込まないだろう」
お察しの通りです。
「ほら母さんびっくり余計なことは、いいんです。この変態に本題を言ってあげてください!」
俺とまこちゃんの会話の途中完全に空気になっていた黒川さんが、目立ちに行こうと言わんばかりに方向修正をしてきた。
「何か失礼なこと考えていませんか?水上くん?」
いや、血が繋がらなくても完全に黒川さんとまこちゃんは、親子であった。なんで俺の思考がみんな読めるんだ?
そんなことを考えていると、まこちゃんは、悪役張りの大げさな身振り手振りをすると語りだした。
「まあ、それは、そうだな!まあ少年もなんとなく察しているようだが、ここからは、ライトノベルの読者の待ちに待った世界観の説明と行こうか!」
「母さん、また話が、あさっての方向に飛んでいくので手早く完結に」
「ちぇっ、マリアのイケズ」
うん。この親子本当に仲がいいな。いいことだ。
「さて仕切り直しだ。まあ、簡単なことだ。失礼だが少し疲れたから座らせてもらうよ」
「どうぞ、俺は、別に構いません」
まこちゃんは、待合室のソファに腰を掛けると生き生きとした目で語りだした。
「この世の中には、昔から、ハイパーセンスという能力者達が裏の世界から、時代に流され様々な形で生きてきた。でもって、今は、能力者の能力も平和に活用していこうという流れになった。それでできたのが『平和管理機構サバト』まあ、魔女の夜会とか大それた名前だが、やっていることは、能力者の管理番号や、人権保護、情報の改ざんとか能力者が一般社会で馴染めるようにお手伝いするだけのお役所みたいなものだよ」
「じゃ、このホイッスルも」
「ああ、能力者を目撃した一般人にのみ効く記憶の改ざん音波を出すホイッスルだよ。大抵これが効かない一般人は、能力者予備軍として、今みたいな説明をする。っていうのが私の仕事なんだよ」
合点がいった。黒川さんがあの場でホイッスルを吹いた理由が、つまり、能力者が目撃されることがあっても今まで世間公表されなかったのは、そういうことだったのか。
いや、本人もそう説明は、していたのだが、あの時点で理解ができないだろう。俺だって、いきなり炎を出されたりしたら、正常な判断もできないし。
「まあ、水上くんの場合は、その変態的な性癖がバレないで今まで学校の人気者のは、ハイパーセンスを所有していたからなんですよね。わかります。予備軍かもしれませんが」
納得したような顔で言う黒川さんだが、俺は、全然納得いかなかった。
「なんだって?俺が学園の人気者になるのは、当たり前だろ!こんなにイケメンで文武両道、品行方正。最高の三拍子が揃う俺がクラスの人気者になるのも当然だろうに」
「盗撮魔で、ナルシスト、おまけに性悪、人間として最低の三拍子が揃っている時点で水上くんが人気になる要素なんてどこにもないと思うのですが」
「はん、それは、黒川さんの見る目がないだけだ。学園のアイドルもとい、学園の愛玩動物(マスコット)にあぐらをかいているではないのか」
「誰が、なりたくてあんな変なあだ名を付けられていると思うのですか!」
喧嘩がヒートアップする中それを見て笑うのは、まこちゃんだった。
「あはははは!全く、マリが、私以外にそんな顔を見せるなんて初めてだ、どうしたマリ、少年のことが好きになったか?」
「いやいや、ありえないです。本当にありえないです。生理的に無理なんでやめてください」
突然真顔で否定する黒川さん。
しかし、まこちゃんは、とっても嬉しそうな表情で俺の方を向いた。
「これからも、ウチの愛娘と仲良くやってくれ」
「まあ、それなりには」
「うむ、いい返事だ。では、診察始めようか!事情は、聞かなくてもわかる!よは、マリの吹いたホイッスルが聞かなかったのだろう。年齢的に予備軍である可能性は、低いかもしれないが、無意識の内にハイパーセンスを発動している可能性もあるしな」
いい返事なのか?はっきり言ってすごく適当に答えたのだが……
とにもかくにも、ようやく俺のハイパーセンスに関する診断が始まったのだった。
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