番外編2
●第1王子と父。
春の陽射しが近づいてきた今日この頃。
アルベルトはあるものを見守っていた。
「がんばれっ!跡少しだよ!」
生まれてからやっと7ヶ月になった、第1王子アレクトがずるずると四つん這いになり、前に進んでいる。
その様子を父であるアルベルトが見つめているのである。
「アル、そんなに見守っていてもダメよ。あなた、私の代わりに大事な会議が入っているのではなくて?」
「うっ。で、でも…」
「でももだってもないわ」
涙目になり、こちらを見るアルベルトはさながら捨てられた犬のようだ。
アルベルトは今、子供を生んだばかりのシェルナリアに代わってその政務の中継役となっていた。
大事な書類等のはんこはシェルナリアなれど、会議など長時間のものはアルベルトが出席し、シェルナリアはアレクトの面倒を見ていた。
「ほら、いってらっしゃい」
シェルナリアは足元に来ていたアレクトを抱き上げ、膝にのせ、その手を取り、アルベルトに手を振った。
「いってらっしゃい、パパ」
「あーう、パー」
アルベルトはあまりの可愛さに顔を手で覆い身悶えている。
そして、すくっと立ち上がり、アレクトを抱き上げその頬にキスをした。
「いってきます」
アルベルトは時間も迫っていたので、シェルナリアにアレクトを返し、急いで会議にかけていく。
「さて、と。練習しましょうね、アレック」
その後ろ姿を見送り、シェルナリアが言った。
アレック、とはアレクトのことである。
城のみんながアレックと呼び可愛がっているのだ。
☆★☆
長時間の会議を終え、夫婦の部屋の扉を開けた。
目の前にはちょこんと座ったアレクトがいた。
アレクトは体を前に倒し、はいはいをして来た。
「パーパ」
朝はパーだったのに、それにはいはいが出来てる!とアルベルトは思った。
近づいてきたアレクトを抱き、愛しいシェルナリアの元へ向かう。
シェルナリアは隣の部屋のソファーで寝息をたてていた。
アルベルトは子供用のベッドにアレクトを置き、シェルナリアをベッドに運んだ。
その後、アレクトにミルクを飲ませ、子守唄を歌いながら、アルベルトはこんな日々がいつまでも続けばいいな、と思った。
↓その後
「シェリー、いつもありがとう」
「え、なんのこと?」
「照れなくていいよ」
「?」
↓練習
「パパ」
「パー」
「パパ」
「パーア」
「ママ」
「マーマ」
「うーん?パーパ」
「パーァパ」
「すごい、すごい。良くできたわ」
「きゃはは」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます