第21話 氷結病

奥の部屋はテーブルとソファーが2つ置いてあるだけの応接室のようだった。

旦那の向かいにアルベルトは座る。


「で、この砂の話だったな…」


旦那は戸惑っていたのか、少しして話し出した。


「デザール国は、2年前に変わったよ。ある国と貿易をし出してから」


じっと足元を見ながら旦那は言った。


「ある国、とは?」


「ルービィア王国さ」


どきりとアルベルトはしたが、平然と続きを促した。


「国王は秘密裏にルービィア王国と貿易を始めたのさ。この事は、重要機密だ。だがな、俺は見ちまったのさ。あの日、ルービィアのやつらが何かを撒くのを」


☆★☆


『あれは、久々の大雨の日の次の日だった。

宿を妻に任せ、知り合いの家にお見舞いに行った帰りだ。


黒ずくめの恰幅の良い男が数人、何かを水に撒いていた。

その後に、地面に。


俺は声を掛けようとしたが、物陰から出られなかった。

何故って?


見てたのさ、こっちを。

リーダー格の男が。

黒のフードから覗いていた目はゾッとするほど冷たかったよ。

俺は殺されるかと思ったね。

だが、俺など居ないことのように、男どもは去っていった。


俺は急いで家に帰って、事情を話したが、誰も信じちゃくれなかった。

男どもはそうなることまで考えていたんだろうな。

だからこそ、俺に何もしなかった。


その1週間後だよ。

この状態になったのは。


国王は多分、ルービィア王国と貿易をしていたことを隠したかったから、他国との国交を断ったんだろうよ』


アルベルトはこの話を聞き、早々に旦那の元を離れ、カルロスの元へ向かった。

事態は一刻を争うように、ゆっくりと、しかし確実に進んでいた。


結局、氷結病の詳しいことは分からなかった。

だが、ルービィア王国が関わっているのは厄介だ、とこれからのことを思い、アルベルトは髪をぐしゃぐしゃと掻いた。

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