第20話 黒い砂
アルベルトが王都カンザスタンに着いてから一週間が経っていた。
町中で情報収集してみるも病についてはほとんど情報が得られなかった。
アルベルトは宿の窓からふと外を見る。
いつの間にか辺りが暗くなっていた。
もう夜になったのか、と時計を見てみると針は3時42分を指していた。
それも午後の。
アルベルトは不思議に思って、また窓の外を見た。
目を凝らして見てみるとその正体は砂のように思える。
実際、細かい、黒い砂が渦を巻いて町に舞っていた。
町にある砂は全て茶色だったはずだ。
黒い砂は初めて見た。
アルベルトは急いで部屋を出て、隣の、従者カルロスのいる部屋のドアを叩いた。
のっそりと出てきたカルロスは、アルベルトが言いたいことを分かっていたかのように口を開いた。
「デザール国の王に謁見を申し出てみる」
アルベルトは大きく頷いた。
このままむやみやたらに調べていても埒があかない。
直接、王に謁見を申し出て、聞く方が早い。
それは窓の外の異常を見た誰もが思った。
カルロスは王に謁見を申し出るために書簡を出すためにベリル王国宛の手紙を書き出した。
アルベルトは宿の旦那にこの異常事態について聞くために1階に降りた。
宿の旦那は平然とロビーの椅子に座っていた。
この事態に慣れているような様子だ。
アルベルトは旦那へ近づいた。
「すみません、旦那さん」
アルベルトが近づいている事に気づいて居なかったのかも知れない。
ビクッと肩を揺らし、こちらを振り向いた。
お化けを見たような顔をしたが、男が誰かを認識し、平然とした顔を作っている。
驚いた所を見られて、恥ずかしかったのか、その頬はほんのりと赤みがかっていた。
「なんだ、お客さんか。どうしたんだ、急に」
ごほん、と咳払いをして旦那が話し出した。
「この、砂」
「あぁ、これのことか。気にすんな、いつもの事なんだ」
アルベルトの声を遮って旦那は話す。
何かを隠したいようだ。
「いつからですか」
アルベルトも旦那の気持ちを無視して続けた。
「……ずっとだ。この国が出来る前から」
目を落とし、旦那は言う。
「嘘ですね。この黒い砂は最近起こりましたよね?その頃から、ある病が蔓延しだしたはずです。私は、その病に効く薬を作ろうとしています。教えてくれませんか?何があったのか、正直に」
「………あんた、
「医師兼薬剤師ですよ」
「その若さでか?信じられん」
アルベルトは腰に着けたホルダーから免許を2つ取り出す。
それを見た旦那はさっきよりも驚いた表情をした。
「あ、あんた、何歳だよ?」
「15です」
「だ、だよな。15、って、ええっ!!15!?2つとるためには10年はかかるって……」
アルベルトは免許をもとあった場所に戻す。
「あぁ、免許を取得するためには8年かかりました。これで分かって頂けましたか?」
「あ、あぁ。じゃ、こっちにこい。ここでは無理だ」
そう言って、旦那は奥の部屋へとアルベルトを連れていった。
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