炉と竈の女神ヘスティアを宿す者
軍神アレスを宿す神の器を持つことが判明し、黄金時代を迎え撃つ為結成された組織【オリュンポス】の一員となったカレンは、一人の青年に部屋へ案内されていた。
「此処が君の部屋。一人部屋だから好きに過ごしていいよ、これが部屋の鍵ね」
薄桃色の髪の毛を揺らしながら、振り返ると愛想の良い笑みを浮かべた青年に対してカレンはコミュ症を発症していた。
小さく『有難うございます・・・』というと青年はニッコリと笑いながら、何か思い出したような顔をした
「挨拶してなかったね。僕はアイギス・ポリウーコス。イージスとも呼ばれてる、神の器は【戦いの女神アテネ】。痣は左胸にあって梟が痣になってるんだ」
「えっと・・・荒牧カレンです・・・神の器?は確か・・・えっと軍神アレスです・・・痣は多分腰にあるそうです」
「へぇ腰・・・まぁ人によって痣の場所は違うからね。腰は目が届かないから分からないよね」
青年、アイギスは微笑むと手を振ってカレンから姿を消した。人と話すのになれていないカレンはアイギスがいなくなった事を少なからず安堵した。
此処に来るまで色々な施設を案内して貰った。食堂にトイレ、お風呂に会議室などもあった。基本的には此処で暮らすらしい。
両親が心配するのでは?と思っていたが、此処には【鍛冶と炎の神であるへパイストス】を宿す人間がいるらしく、彼の能力で相手ソックリな人間を作り出す事が出来る。その能力のおかげて現実世界では彼の能力が生活する事になる。
カレンはちょっと現実離れしすぎる現実に、重い溜息を付きながら部屋に入った。クローゼットを開けるとシンプルだが、それなりに好みの服が何着か入っていた。
しばらく眺めていると、部屋がノックされた。カレンは驚き、反射的に居留守を使いそうになったがこれから生活する相手だったら居留守を使うのは、失礼だと想い意を決して開けた。
「は、はい・・・」
「あっ良かった。居なかったら如何しようかと・・・こんばんわ」
そこにいたのは優しい茶色の髪の毛に、白色のショールを肩に掛けた優しそうな女性だった。男の人よりまだ若干だが女性の方が喋り易かった。
カレンは安心し、大きく息を吐き出すと女性は慌てた様子で声を掛けた
「ご、御免なさい。疲れているわよね?また後日伺いましょか?」
「いえ、大丈夫です・・えっと貴方は・・」
「私はアティスよ。神の器は【炉と竈の女神ヘスティア】でお腹に痣があってね、ロバが描かれているのよ。貴方はカレンさんね」
アティスは優しく微笑みながら自己紹介をした。カレンは慌てて挨拶して頭を下げた。アティスは微笑みながらカレンに提案をした
「ねぇお風呂まだでしょう?一緒に入りに行かない?」
「えっ良いんですか・・・?」
「勿論。それに私新入りさんの案内役でもあるのよ。気にしないで、行きましょう」
アティスに言われるがまま、お風呂に入る準備を整えたカレンはアティスと共にお風呂場向かっていた。
すると前から現れたのは黒い髪の毛をした一人の女性だった。翡翠色の瞳で睨まれるように此方を見た。
カレンは驚き、怯えるようにアティスを後ろへ隠れてしまった。しかしアティスは驚く様子もなく、その前に居る一人の女性に声を掛けた
「あら冥王さんではないですか。冥王さんもお風呂ですか?」
「あぁ、そう・・・この若いのは?」
「最後のオリュンポスメンバーですよ。ほらアレスの」
「あぁー・・・世浦が中々家から出ないって悩んでた奴か・・・」
なんでそこまで知ってるの?!私の個人情報は?!とカレンは叫びたかった。けど、コミュ症のカレンにそんな度胸はない。
アティスはビクビクと怯えているカレンに気づき、優しく問いかけた
「そんなに怯えなくても良いですよカレンさん。確かに冥王さんは女性にしては悪人顔ですが、そんなに怖い人ではないですよ」
「おいアティス。今軽く私の事ディスっただろ忘れないからな」
そんな冥王のツッコミさえも無視して、カレンを前に出した。カレンは急に前に出された事に驚き、顔を右へ左へ動かしていた。
冥王もその怯えように傷ついたのか、俯き完全にテンションが下がってしまっていた。
「どーせ私は人相悪いっつーの。怖がられることには慣れてるわよ・・」
「あらそんなに卑屈にならないでくださいよ冥王さん。ほらご挨拶してください」
「・・・冥王、冥王チハルだ。神の器は【冥府の神ハーデス】で痣は・・・確か左の方の肩だったかな。馬が描かれてる」
「えっと・・・荒牧カレンです!神の器は【軍神アレス】で・・痣は腰にあります!多分!」
「あら、冥王さんより良いご挨拶ですねカレンさん」
アティスは嬉しそうに言うと、チハルとカレンの手を強引に引っ張るとお風呂へ向かった。
チハルはもう諦めたような表情をしながら付いて行き、カレンはアティスの強引っぷりに慌てるばかりだった。
お風呂場へやってくると、三人は横に並んで服を脱いでいった。
カレンは着ていたTシャツを脱いで籠に入れると、ふと横に居るアティスの胸元を見た。
「えっ?!」
「?!如何しましたカレンさん」
「い、いえ何でもないです!」
慌ててアティスの胸元から目を離す。声を上げたのはアティスの胸の大きさに声を上げたのだ。こんなに大きい人あまりいないような気がする。
ボン・キュッ・ボン!まさしく女性が望む理想の体型。そう思いながらカレンは自分の胸元を見た。
決して小さくはない。しかしアティスの胸を見た後に自身の胸を見ると、どうしても小さく見えてしまう。
大きくため息をつきながら、身体にタオルを巻いていると先に脱ぎ終わりタオルを巻いていたチハルの方に目をやった。
目をやったのはチハルの胸元。ちょっとした興味本位だった。
しかしチハルの胸はアティスとは対照的に小さかった。巨乳というよりもどちらかと言えば貧乳の分類だ。
カレンは安堵し、つい声を出しながら安心してしまった
「あ、良かった・・・」
「おい。今お前どこ見て良かったって言った?ん?」
「まぁまぁ落ち着いてくださいチハルさん。それに今時珍しいんですから、そんな絶壁みたいな凸凹してない体なんて」
「アティス。お前のそれは完全に私への侮辱だぞ」
そんな風にアティスとチハルを見ていると、なんか緊張が解けてきた。そのせいかつい笑ってしまった。
「ふふふっ・・」
「ん・・・?」
「あっ済みません笑っちゃって!!」
「良いんですよ。逆に笑ってくれて良かったです」
「え?それってどういう・・・」
「だってカレンさんずっと暗い顔をしてたんですもの。まぁ来て早々驚くでしょうけど、そんなに暗い顔してたら他の人とも馴染め難いでしょう?やっぱりカレンさんには笑顔が似合いますよ」
アティスは微笑みながらそう論した。確かにカレンは此処に来てからずっと不安で笑うとしても意識しないと笑えなかった。
そんなカレンの心情をアティスは察ししたのだ。だから態々カレンの部屋を訪れてお風呂へ誘ったのだ。
「有難うございますアティスさん、チハルさん」
「いや、別に私は何にもしていないし・・・取り敢えず風呂入るぞ風呂!」
チハルは頬を少し赤く染めながら、お風呂の方へ向かって行った。アティスと共に微笑むと、カレンはアティスと共にチハルの後を追った
「待ってくださいな冥王さん!」
「チハルさん背中が流しましょうか!」
「だーもう!何なんだよお前らは!」
神の器を持つ引きこもり、世界を救います 蓬ココロ @kokoro0402
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