神の器を持つ引きこもり、世界を救います
蓬ココロ
軍神アレスを宿す者
荒牧 カレン。父はギリシャ人母は日本人と言うハーフであり妹に荒牧 エリスがいる。銀の髪の毛青い瞳、そして白い肌は日本人とは思えない浮世離れした容姿だった。
誰もが羨む美しい容姿だが、その容姿を運よく・・いや運悪く受け継いだ少女カレンはこの容姿のせいで酷く面倒な目に会ってきた。
一応モテてはいた。しかし激しい人見知りで誰かと話したりするのが苦痛だった。女子でも無理なのに、男子となればもっと苦痛だ。女子は好きな男子に振り向いてもらえない恨みをカレンに向け、それはそれは酷い扱いを受けてきた。
中学を卒業したカレンは高校に入学したが、クラスメイトとは馴染めず息苦しい日常から逃げる為、家に引きこもる様になった。
妹のエリスは瞳は青かったが黒髪のお陰でそこまで目立つことは無く、活発な性格で明るく優しかったためカレンとは対照的に楽しい中学校生活を送っていた。
部屋に閉じこもりゲームをする毎日、たまに教科書を読んでノートにそれを移す毎日。寂しくはないが、やっと息の出来る毎日に安心して過ごしていた。
そんなカレンは今人生最大の修羅場を迎えていた。
夜アイスを買うため、コンビニへ向かっていたカレンはその帰りの最中拉致されたのだ。
睡眠ガスを吸わされ意識を飛ばし、目が覚めると一面真っ暗な部屋に赤い玉座に座らされ、手は玉座に固定され動けない様にされていた。
「あ、う、あの・・・えっと・・・」
「あぁ悪い、いきなりこのような場所に連れてきて驚いただろう」
「もっと女の子は丁寧に扱いなよー」
目の前にいるのは金の玉座と銀の玉座に座った二人の男性がいた。
カレンはまるで震えた子犬の様に目の前にいる男性を見た。金の玉座に座った男性はニコニコと笑っている優男。もう一人は銀の玉座に座り、無表情で此方を見つめている冷たい男だった。
パニックになっているカレンに対して、優しい顔をしながら声をかける優男。
「安心して此処は日本政府だよ。拉致のような真似をして御免ね?大丈夫、悪いようにはしないから」
「端的に言う。女、お前は“神の器”を持っている」
「か、神の器・・・?!」
「急にそんな事言っても分からないでしょ!えーと・・・神の器っていうのは、世界に数人しかいなくて、男女関係なく神を宿す事の出来る器を持つ人間の事だよ。僕もその一人。そしてこのこわーい顔をした男の人もね」
カレンはますますパニックになった。
急に分けわからない場所に連れて来られて神の器だとか厨二病みたいな事を言われれば、誰でもパニックになる
「パニックになるのも最もだ。神の器は一般公開されていない。強大な力が宿っているからな」
「そう。神の器は持ち通り、神様の宿る器。神の力が宿っている・・・それは強大で恐ろしい。知られれば悪用しようと考える輩も多いからね」
「は、はぁ・・・その神の器とやらは何なのかは分かりました。けど、如何して私が持って居ると思ったんですか?こんな引きこもりが・・・」
カレンは小さく質問した。二人の男は顔を見合わせると金の玉座に座っている方が小さく苦笑した。
「まぁそれは・・・色々権力的なモノだよ」
「聞かなくて良い事もあるんだ女」
「凄いブラックな事情という事は分かりました・・・でも全然実感ないんですけど!」
「最近何処か体は痛くなったりするときない?あと、変な夢を見るとか」
金の玉座に座っている男性はカレンに問いかけた。カレンは思い当たる節があった。最近妙に腰が痛かった。軽く動くたびに筋が痛くて、妹のエリスに湿布を貼ってもらう毎日を送っていた。
そして最近変な夢も見ていた。宇宙空間のような場所にパジャマで浮いており、聞き取れない程小さい声で誰かがカレンを呼んでいるような夢だった。
その夢はもう1か月近く続いていた。腰痛も湿布を貼ってもらう時エリスから赤い痣が出来ていると言われた事があった。
「思い当たる節があるみたいだね。それは神の器を持つ者にしか基本現れない。体に痣が出来たり・・・ね?」
「・・・た、確かにありますけど・・・でも何で私はこんな所に連れて来られてるんですか?!」
「神の器を持つ者が必要になったからだ。数年前【黄金時代】という名の組織が神の器の存在を知り、その力を悪用しようと近づいた。神の器を持つ者の匂いを嗅ぎ分ける獣を野に放ち、神の器を持つ者を殺しその力を奪おうとしている」
「今の所被害は出ていないんだけど、敵の力も強大になってきたからね。僕らだけじゃ無理があってね」
「ぼ、僕ら・・・?」
二人の男性は軽く微笑むと、玉座から立ち上がった。金色の髪の毛をした優しく微笑んでいる男性は名乗った
「自己紹介がまだだったね。僕は
「俺は
「ちょっとバカって酷くなーい」
二人の男もとい、リーダーである世浦ライマと副リーダーである水無月ジュン。ライマは金髪でジュンは黒髪。美形の分類に入る方の二人は良い組み合わせだ。
「えっと・・荒牧カレン、です・・・私には何が宿ってるんでしょうか・・・?」
「それはもう痣を見なくても分かるよ」
「あぁ何せお前が最後の器の持ち主だからな」
カレン以外の神の器を持って居る者はもうすでにこの組織の一員となっているらしい。
「何しろ君は学校にもあまり行かず家に籠りっきりだろう?接触する方法もないし、家に押しかければ君の両親に気づかれる。これは極秘だから、君の家族と言えど知らせることが出来ないんだよ」
「うっ・・それは、なんか済みません・・・」
「まぁ良い。お前の器に宿っている神は・・・【軍神アレス】だ」
「ぐ、軍神?!アレス?!」
「もう気づいてるだろうけど、僕たちに宿っている神々はギリシャ神話の神だ。ライマに宿っている神は主神ゼウス、俺に宿っている神はゼウスの妻であるヘラ」
軍神アレス。ゲームでも度々登場するキャラクターだが、見た目はイケメンだが性格はは粗野で残忍、かつ不誠実とかなり最悪のため多くの神々から嫌われている神だ。
「まぁ戦闘に特化した神の器を持つ子は心強いよ。主にメンバーは控えもいれて15人だけど、その内戦闘に特化した神の器を持つのは君もいれてもたったの5人」
「俺も含め、戦闘になると役に立たん場合が多い」
カレンは思っていた。ただの引きこもりライフを満喫していた私にそんな戦闘能力なんてあるはずがない、と。
そう思っていたとしても、もう断れる雰囲気ではない。それに敵組織である黄金時代の刺客は神の器を持つ人間の匂いを嗅ぎ分けることが出来るという。此処にいて過ごす方が安全だとカレンは踏んだ
「よ、宜しくお願いします・・・」
「うん宜しくね」
「宜しく頼む」
さらば、私の華麗なる引きこもりライフ!!!!!
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