第1章 11話 時雨の真実

優人が体育館で男を睨んでいると、ユウガが体育館に到着した。

「あれ? 神崎抱えてんの誰?」

ユウガが抜けた声で男に尋ねる。

「俺は公安の嵐山俊あらしやましゅんだ、この娘は公安が保護する」

「お前新手の誘拐犯だな!? 警察呼ぶぞこんちくしょうめ!」

ユウガがアホ丸だしで喚いているが、優人は華麗にスルーして、俊に言う。

「公安だか何だか知らねぇが、時雨を返せ」

「それは出来ない、それにこの娘は神崎時雨では無い」

俊が意味不明なことを言うと、ユウガがおちょくったような口調で言った。

「は? 何言ってんの? 頭大丈夫?」

「うるさい、アホは黙ってろ」

優人が凄まじい殺気を送りながら言うと、ユウガは若干ビビりながら黙った。

「それで? 時雨じゃあ無いならそいつは誰なんだ?」

優人が俊に尋ねる。

「そうだな、まず本物の神崎時雨は九年前に家族共々交通事故で死亡している、今ここにいるこいつは、神崎時雨の死亡時、事故にあった軍事運送トラックの中にあったサウザントソードの内の二つ、氷華ひょうか雪華せっかがこいつの記憶をロードして生まれた疑似人格だ」

俊の説明が一通り終わる。

「一つ質問良いか?」

優人が言った

「ああ、許可する」

「サウザントソードとはなんだ?」

俊が答える。

「サウザントソードとは、この世界に千本あるとされている特殊な能力を持つ武具だ」

俊の説明が終わると同時にユウガがダガーを引き抜き、俊に襲い掛かった。

「そんな体育祭用の武器ではなにをしても無駄だ」

俊がなぎ払うように腕を動かすと、ユウガの持っていたダガーは二本とも砕け散った。

「何っ!?」

ユウガが驚きの声を上げる。

「だから言っただろう? 無駄だ、と」

やけに重く響く声で、俊が言った。

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