4-9
「温かい食事が出来るって幸せね。」
そう言って スフィーネは隊員が持ってきた昼食の皿を受け取った。
事態は最悪だった。覚悟はあったとは言え、部隊に初めて戦死者が出た事は痛恨だった。そして死ぬかもしれない負傷者多数。いま手元にまともに戦える戦力は無い。だがスフィーネは指揮官として、そんな不安はおくびにも出さなかった。
スフィーネは戦の後処理を黙々とする
だがコーボルトは例外だった。「
そのような逃走者や降伏者達は、
奴隷的な身分である事に変わりはないが、人もコーボルトも最早それが当たり前と成っていた。
スフィーネにも軍人となって数人のコーボルトの降伏を受け入れ、慣例に従って処理をして来た。
いま彼女の指示の元、黙々と、そして一部に和気藹々と仕事に精を出す
でもねえ、、、
いや、違う。
定期のパトロール報告で、コーボルトと遭遇し、彼等が助けを求めず逃げ出した旨の報告は事前に上がっていた。違和感は合ったが、そんなものかと見落としていたのだ。
後から考えれば滑稽な話だ。これまでの亜人の元にいたコーボルト達がどうだったか?少し考えれば解ったかもしれない、少なくとも警戒はできたはずだ。
それはスフィーネの軍略を狂わせ、部隊に想像以上の消耗を強いた。彼女が攻略の切り札とした自身の
スフィーネは成した功績とその容貌から帝都で「碧眼の軍師」などと呼ばれることで、自身がおごり、采配を誤ったことを今なを悔やんでいた。
そしていま命があるのは「赤き闘神」と呼ばれる友が、恐るべき
闇巨鬼の生死、戦果を確認したがったが、そんな余力は部隊に残ってなどいなかった。盟友バセット・バーミリオンとその愛騎はかろうじて戻り、血を吐きながら彼女らしくない皮肉を、少し勝ち誇ったように口にしてスフィーネを驚かせた。
「スフィーネ、「
そう言って友はスフィーネの腕の中に倒れこんだ。
スフィーネは部隊が保持してい治癒ポーションと回復早める魔草を残らずバセットと飛竜に使い、三日目の夜明けと共にバセットを救援と撤退、増援要請ためボルト将軍の城に向かわせた。
瀕死の自軍に対し、バセットが報せを持ち帰り救援の到着が先か?砦の陥落と偵察部隊の敗北と言う目くらましに、亜人が警戒し次の一手を躊躇う時間が尽きるのが先か?そこはもはや神の御手に委ねるしかないのだ。
スフィーネは改めて働く
ゾクリ!
全身が悪寒で震えた。降伏したとはいえ沢山の敵に周囲を囲まれているという事実を認識せざるを得ない。見慣れた彼の犬の顔が獰猛にすっら感じられる。手にした皿の匙が進まなくなる。
もしこの料理に毒でも盛られていたのなら今頃は、、、
スフィーネはこの前線で静かにひろがりつつある、これまでにない亜人の戦術上の変化を感じ取った。それはコーボルトが「無理やり戦場に駆り出された農夫や街人に近い」と言うのが彼女の確信を根底から揺るがし始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます