4-4

 1体、2体、3、、、


 暗闇を見通す亜人の目で、アリアは鬼火を観察する。数は多くない、そしてシカバネムクロだけ、要は動くだけの死体だ。脅威としては然程では無いが、アリアとしては対処に懸念があった。


 「、、、、」


 悩むアリアの様子をみたヘラレスは、進み出て意見を口にした。


 「よろしいでしょうか奥様?あれは倒して進むべきかと思います。」


 慎重なヘラレスにしては、好戦的な物言いにアリアは興味をしめした。自身の懸念も交えて従者の考えを聞く。


 「どうして?やり過ごせば安全に砦へ向かえるは?物音もあまり立てたくはないし、、、」


 主人に対して老コーボルトはニヤリと笑って答える。


 「お考えは解りますが、いささか慎重が過ぎるかと思います。この位置ならよほどの事をしない限り砦まで物音が響くことも無いでしょう。それにやり過ごしたとしても、後のなってアレが背後に現れないとは限りません。」


 「聞けばシカバネムクロだけ、数もこちらの半分程。ならば市場で引き取った此奴コーボルト等に、戦働きを経験させる良い機会だと思います。大仕事の前に初陣を経験させる。後を考えてもアリア様や此奴コーボルト等自身のためになるでしょう、侮る事出来ませんがアレは動きが遅く、向かってくるだけの相手なので打って付けかと考えます。」 


 老コーボルトの意見に、アリアは確かにそうかもしれないと思った。戦力として高い期待は出来なくても、今はコーボルト達しか居ないのだ。この先の任務を考えれば、彼等コーボルトに少しでも経験を与えてやることが重要だ。そしてアリア自身、実際にコーボルト達が何処まで切り結べるか?確認しておく必要はあった。


 「それに奥様、「何者の遺体なのか?」闇巨鬼コクテンで無いにしても、亜人の遺体ならば調べておくに越したことは無いと存じます。」


 従者ヘラレスの意見はもっともだとアリアもおもった、砦の方からやって来た鬼火オニビ達に、こちらが知りたい情報の断片があるかもしれない。そして珍しくサールが信条を口にした。


 「僕も夫人の従者の意見に賛成だ。あれぐらいの鬼火オニビなら僕の「祓い」の力でかなりの力を削ぐことが出来る。」


 「、、、なにより哀れな彼等の残火ザンカを「自由の神」の「国」へ届けてやりたい。」


 意見に耳を傾け、吟味し、妥当なら誰のものであろうと採用する。そこに個人の嗜好が含まれたとしても、希望を叶えて士気が上がるならそれは全く無駄ではない。

 意思統一を果たした郎党クランの結束を深め、個々に考え、優れた意見や見落としがちな客観看的「価値観」について補佐してもらう事は今後とも重要になる。


 アリアは判断を下す。


 「ヘラレス、有難う。経験者の貴重な助言だったは、砦で装備も改めた事だし、実戦で試す機会も欲しかったのは確かだは。皆、あの鬼火オニビを倒して調べましょう。貴方コーボルト達、予定が変わったけど初陣よ、まずは教えた通りにやってみて、そして私達を信じて。大丈夫よ貴方達も戦える、だってそこに立派なお手本ヘラレスが居るんだもの。私も金髪君も魔法でしっかり援護するから安心して。」


 命令されれば従う奴隷コーボルト達。それは力は無くとも雑鬼コブリンように身勝手に戦線を乱すことが無い利点ではある。だがそれだけでは「石」を並べている事と変わらない。肩を並べて戦う、生き残ると言う事において臨機応変さや状況判断を自身で出来る事も重要なのだ。その点をこれから奴隷コーボルト達と時間を掛けて教え、理解し合う関係を築いていく必要がある。


 アリアは気付いた。


 何故「郎党クラン」を組むのか?


 それは単に支配したり、手間を肩代わりさせるモノでは無い。自分の手足、五感、思考の延長であり、拡大させるモノのなのだ。そして統率者としての使命感と頼り合う、守り合うと言う事への安心感に満たされるモノがある事に。


 

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