4-5
「イル・ヴェント・レコ シェーティク・ギレス ブレイ」
アリアが呪文を唱えると、コーボルト達が手にした槍の穂先が白く光り始める。先ほどまでガラスの様に輝いていた高価な「魔の水晶」は手の中で灰色になって砕けた。
「魔の水晶」は魔術を使う魔力を、術者本人からでは無く、握った水晶が肩代わりしてくれる貴重な品だ。神話時代の初期に眷属達が魔法を使うにあたって大量生産され、現在でも各地で頻繁に見つかる。生産技術も今に残っており作る事は可能だが、どちらにしても高価な品物だ。モノにもよるが、アリアは今、それを二つ砕いてコーボルト達へ魔法をかけた。単純比較すれば、2ヶ月まともな施設に宿泊して、三食たべていける価値があった。
惜しくは在ったがアリアはコーボルト達への初陣必勝と、信頼関係を大切にしたかった。砦偵察に入ればどれほど魔力が必要か?今一つつかめない事もあったが、消費すれば回復に半日は掛かる自身の魔力は温存しておきたかった。
「装備は好きなモノをくれてやる、お前の奴隷共の分が減った程度で困るような事は無いからな。だが前払いとして任務達成後の褒章からは差し引かせてもらう。こちらで出せるモノは与えよう。だが成果に見合わなければ赤字になるぞ?収支の計算はちゃんと出来ておられるかな?淑女殿。」
全面に出るのはサール、ヘラレス、コーボルト達、アリアとレティシアは後方で距離を取って控え、援護と周囲の警戒を行う。
サールも隊伍を組んだコーボルト達に「守り」の奇跡を施す。話し合った結果、お互いのコーボルト達は一つの隊伍として使う事を決めた。練度の無い彼等を個別管理の負担を減らし、効率的に数の力を発揮させるためだ。
「ゲラール夫人、大丈夫です。サール様ならあの程度の数の
こちらの内心を見透かしたようにレティシアは揶揄うとも安心させるとも判断のつかない言葉を掛けてくる。上から目線が腹立たしく無いと言えば嘘になるが、彼女の言葉は的確で有難かった。
「ゴアよ、屍にくすぶりし
向かって来る
ガンッ!!
アリアはコーボルト達に取らせた戦術がひとまず効果を発揮したことに安堵した。前衛中央に大盾三枚を並べたコーボルト達の隊伍、その右手に
アリアが予想したよりも戦列の両翼に幅が無く、厚みも薄いのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます