第4話「白の魔法使い」
ことは案外予想どおりに進んでいるのかも知れない。
昨晩見たあの怪物がこの街を襲う脅威であり、俺はそれに対して耐性があるらしい。
それを買われてか、それとも必然か、俺はこの街で黒の獣と戦うことになった。
生徒会の面々を中心に話し合いは進んでいく。
「さて了承を得たところで話し合いを続けようか。君は戦うことを決めた訳だが、とりあえず君の魔法適正を見てみようか。こちらとしては深刻な人手不足だからもし君に才能が欠片ほどもなかったとしても大歓迎だよ」
黒の獣の記憶障害に対する耐性があるっていうことが俺がこの黒の獣退治に誘われた理由だと思っていたのだがどうやらことはもっと単純のようだ。
しかしながら、この今の聞きうる状況から判断するに、ようは主戦力がさきほど会長の言ってた7色の魔法使いだけなのだろう。
「でも魔法はようは異能力な訳でしょう? でも魔法というぐらいだから例えば”プトレノヴァインフィニティ”とか”ボチヤミサンタイ”とかいうんですか?」
「そんな暗黒環境で使われるような呪文は存在しないが、発動主が魔法を使う際にキーとなる口上を発することはある」
「そうなんですか。なんか普通に異能力バトルしているんですね」
会長は少し顔をゆがませながら苦言を呈する。
「事態はそんなに悠長なことは言えないんだけどね。まあとやかく言う前にやることをやるぞ」
今度は背後からの副会長の「おいお前ら早くしろよ」的視線に気づけたようだ。
会長の指示の下で着々と適正試験の場が準備されていく。
「で、これは?」
と副会長はお怒りの模様。
俺の目の前に置かれたのは白いテーブルクロスの上に水の入ったコップが一つ真ん中に鎮座している丸テーブル。
「そのたぐいのネタは相手がでかすぎて無理ってわかっているんですかね?」
と副会長怒りの提言。だがしかし、おれはうっすらわかっているんだ。さっきの呪文の段階でとっくに相手にしてるって
「も、もちろんわかっているとも。これはきっと緊張しているであろう
そして会長は断末魔とともに消えた。
ついでにその光景をみていい気味だと大爆笑をしていた
補足だが、一応の言い訳として小波副会長の前でテーブルクロス引きを実演した会長は見事に失敗してしまい、その時副会長の足にこぼれた水がかかったことが最終的な引き金を引いたかもしれないし、そうじゃないかもしれない。真実は闇の中である。
「さて邪魔者もいなくなりましたし、初心者講習会いわゆるチュートリアルを開始しましょう。内容は簡単です。各色の魔法に反応する魔具といわれるものまあぶっちゃけ武器ですが、それをもってみるなりしてあなたの適正を見させてもらいます。まず最初はこれから行きますか」
「わかりました。これはナイフですか」
「ナイフは不服ですか? これは私が担当させてもらっている水色に反応するように調整されたナイフです。まだまだ水色使いは少ないんで頼みますね」
内心、何を頼まれたか理解したくはなかったがナイフの柄をつかんでみる。が、何も起こらない。
「えっと何も起こらないんですが……?」
「大丈夫。持っただけならまだ普通の刃物としてのナイフです。今からその魔法に対応した色に関係するなにかをイメージしてみてください。私たち魔法使いはその色のイメージにあるものを自身の異能力として自由自在に扱うことができるのです。だからまず最初に自身の力となるものをイメージすることから始めます。また人によってイメージしやすかったり、力として扱いやすかったりする色はちがってくるのでこれからあなたにはとりあえず各色試してみてもらいます。まず、水色からはじめましょう」
言われた通り、目をつむって水色にかかわるものをイメージしてみる……が一向にコツがつかめる気がしない。
水色といったら……例えばさっきコップに入ってた水とかまんまだけどたぶん今一番イメージできる。
水をイメージするところまではできた。なんか力っぽいのがナイフ周辺に集まっているのがうっすらわかる。でもその集まりは油断すればすぐにでも消えてしまいそうだ。
だから忘れないうちに、消えてしまわないうちに形にする。
水をどう武器にするか。単純だけど水鉄砲とか? とりあえずそれでいこう。
力の方向性は決まった。ならあとは形を与えるだけ。
手にある感覚は流動を続けている。同じところをぐるぐると行く場に困っている力に向きを決めてあげる。
するとナイフの切っ先へ力の流れが向かっていき放出されたのが分かった。
「キャっ‼」
さきほどまで冷静だったはずの人の悲鳴がきこえた。
多分目を開けたらころされる気がする。
ここは穏便に
「先輩、もしかして俺なんかやらかしましたか?」
「大丈夫。少しイレギュラーなことがあっただけ、私は少しこの場を離れるからかあとは会長の指示に従いなさい。あと会長が入ってくるまでは絶対にその目をつむった状態を維持すること‼」
と言って副会長はどっかに行ったみたいだ。少しすると廊下からメールの着信音と思われる電子音が聞こえた。
「ああ枢意君。もう目を開けていいよ。まさか君が初日からやってくれるとはね。残念だが君も私もあの奇跡の瞬間を見れなかった。だぁがしかし‼ 我ら人間、いや男子高校生をなめてもらってはこまる。少年、イメージしろ‼」
そんな感じで寄り道から始まった色分け第二ラウンドもどの色も微妙な感じで終わっていた。
例えば、橙ではミカンジュース生成、赤ではチャ〇カマン。とほぼ無害なセレクト。しかし青に関してだけは、
「まさか
となんかおかしな一言をもらった。
「さて結果発表だ。こんなことは先に言ってしまったほうが良いとおもうので言っちゃうと、今の君は戦闘能力はほぼない。だがしかし、最後に見た青色の結果から我らはひとつの可能性を見た。君はまだイメージするにはまだ経験が浅すぎる。なら君にはこれから7人の魔法使いそれぞれの下で修業並びに各色のイメージを得るのを目的とした職場体験改め戦場体験を行ってもらう。せっかくの8人目の魔法使い候補だ(我が生徒会の一員として)徹底的に育て上げさせてもらう」
なにか裏が一部あるのような気がしたが、今後の俺のやるべきことは決まったみたいだ。
あと8人目って……?
「ほかにも魔法使える人ってここにはいないんですか?」
「いない。そのため一部の魔法使いを除いたほとんどの魔法使いが一人で黒の獣と相手している状況だ。記憶障害への耐性があっても戦うことができなければただのお荷物というわけだ。つまりこの戦場のなかで君は貴重な救援物資であると同時にこれからを変えるかもしれない希望の星でもあるわけだ」
俺が何とも言えないプレッシャーに襲われている間にも会長の言葉は続いていく。
「まあ君は待望の魔法使い候補だからね。少し早いが色の贈呈をしようと思う」
「色って会長の橙とか副会長の水色とかですか? それって使う魔法で決まるんですよね。だったら俺にはまだ明確な色はまだ決まってないから無理ですよ」
「もちろんわかっているさ。まだ決まってないからこそふさわしい色があるんだ。だからそれを贈らせてもらう。ずばり君の色は”白”。つまり今日から君は白色の魔法使いだ」
そうして俺の魔法使いとしての色は早々に決まり、これからやっていくこともわかった。
俺の失くした記憶の手掛かりは当然この一日ではまだ見つからなかった。でもこの先になにかが待っているのはわかる。だから今はこの決められた道をただただ歩く。
”もうキミは寝てしまったのかい? 長い一日だったからしょうがないね。じゃあボクの言いたいことを簡単に話すね。キミの得る力はもほかの力も根源は同じものさ。それに気づいているのかはわからないけど危ないところには近づきすぎないようにね。その道ではつながりは固くなる一方だから”
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