第3話 ずっと一緒に居たかった

【1】

寒さが深まる晩秋の朝、

かすみを先頭に、三人は住宅街を歩いていた。

築年数が古そうな平屋と二階建ての家屋が並ぶ、

静かな小路だった。


「悪いな。何度も付き合わせちまって」

「いいよ別に。私、かすみのお婆ちゃん好きだもん。

かすみと違って優しいし」

「姉さん。かすみさんは優しいよ」

「修ちゃん、いい加減目覚めなさい。

多少見てくれがよくても、かすみはゴリラの化身よ」

「アタシは間違いなくゴリラより強いけどな」


かすみが次元の違う自慢をしながら、

丁度到着した祖母の家の門をくぐった。

すりガラスにアルミの格子がついた横開きの玄関の前で、

ポケットから鍵を取り出す。

古い型なので解錠施錠には少しコツがいる。

かすみは穴に差し込んだ鍵をぐいっと更に押し込んで

そのまま回した。

手ごたえがあったのを確認して引き抜くと、

カラカラと音を立てて扉を横に滑らせる。


「ばーさーん。きたぞー」

「お邪魔します」

「へい、お婆ちゃん! 生きてるかい!」


シャレにならない小百合の冗談に、

奥から「はいはい、元気ですよ」と穏やかな返事が聞こえてきた。

廊下の左手側の部屋から、

オレンジ色のどてらを着た白髪の老婆が、

腰を曲げてよちよちと出てくる。


「よく来たねえ」


靴を脱ぐ三人を見ながら、柔和に笑っている。

小百合も微笑み返した。


「こんにちは、またお掃除しに来ました」

「お休みのたびに家の事見てもらって、悪いねえ」

「いいんですよ。働いた分のお給料は

かすみから、もらってますから。

まあ、物凄く微々たるものですけど」


小百合が天使のような笑顔で邪悪な嘘を吐いた。


「おや、じゃあ私もお小遣いをあげなきゃねえ」

「姉さん、ご老人を騙しちゃ駄目だよ」

「お前、悪魔みたいな女だな」


ゾッとしているかすみを放ったらかして、

小百合は一足先に廊下へと上がる。

靴下越しに板張りの冷たさを感じて、

ひゃあと声を上げた。

修一はつま先立ちで、後に続く。


「お婆ちゃん、私、お茶淹れますね」

「悪いねえ。小百合ちゃんは私より上手だものねえ」

「いいんですよ。お茶くみ代は、

かすみから毎回ちゃんと貰ってますから。

まあ、条例で定められた最低賃金以下なんですけど」

「おや、じゃあ私もなけなしの年金からお給金を」

「それ、もうやめろや」






仏壇に手を合わせるかすみの大きな背中を、

ちゃぶ台に乗ったお茶の湯気越しに、

お婆ちゃんは眺めていた。


「かすみちゃん。京子は元気にしてるのかい」

「京子さんって、かすみのお母さんだよね」

「どこまで知ってんだよ、きもちわりいな」


小百合に尋ねられて、

細い煙を上げる線香を見つめたままかすみが吐き捨てる。

喧嘩が始まると思ったのか、

お婆ちゃんはかすみと小百合の間で

視線をオロオロと往復させている。


「あれ? そういえば、かすみさんって最近実家帰ってるの?」


場をとりなそうと、修一が手のひらを湯飲みで温めながら聞いた。

左右に首を振ってから、正座したままかすみが膝を三人に向けた。


「いいや。でもたまに電話はしてるよ。

まあ、みんな相変わらずだな」

「あらまあ、だったら私のところばっかりじゃなくて、

お家にも顔見せてあげないと駄目よ」

「やーい、怒られてやんの。鉄砲玉娘」

「いいんだよ、うちは放任主義なんだから」


かすみはちゃぶ台の前にあぐらをかくと、

熱いお茶をものともせずにがぶりと飲んで、どんと湯飲みを置いた。

ビックリ人間を見るような近藤姉弟の視線に気づかずに、

揺らめくお茶の水面を睨みつける。


「それで、婆さん。相変わらず賢三爺ちゃんは?」

「そうねえ、最近も毎晩のように声が聞こえてねえ。

やっぱりあの人も寂しいのかねえ」


お婆ちゃんは萎れた花のようにしゅんとして、壁を見上げる。

姉弟もつられるように、飾られた遺影を仰いだ。

真っ白な髪の毛を七三に分けて丸眼鏡をかけた知的な男性が、

少し緊張気味に、口元を引き締めて写っている。

小百合はしみじみと呟いた。


「イケメンですよねー」

「いけ、なんだい?」

「イケメン。格好いいって意味です」


修一が通訳すると、

お婆ちゃんは元気を取り戻して嬉しそうに破顔した。


「そうでしょう。

若いころはそりゃもうあの人ひっぱりだこでねえ。

私もどれだけ泣かされたことか」

「へえ、真面目そうな人なのに」

「結局、最後は私のところに帰ってきてくれて、

それはね、私もずっと一緒にいたかったから嬉しいのだけど、

でも、死んでしまってまで、一緒に居てもらわなくてもねえ」


言葉とは裏腹にまんざらでもない顔をしたお婆ちゃんは、

もはや恒例となったのろけ話をはじめた。

曰く、声が低くて有名な俳優に似ていたとか、

読書が好きでいつも鞄には本が入っていたとか、

魚の食べ方が誰よりも綺麗だったとか、

賢三爺ちゃんの好きだったところは枚挙に暇がないらしい。

微笑んでひとつひとつ頷いていた修一が、

舟をこぐ姉の鼻ちょうちんに気づくと「さて」と強く両手を叩いた。

びくっとしてはね起きた小百合は、

誰も聞いてないのに「寝てないよ、寝てないよ」と繰り返している。


「じゃあ、掃除始めようか」

「だな、このままだと日が暮れるわな」


かすみが頷きながら、ゆったりと腰を上げる。


「よーし、お婆ちゃんがスッ転んで後頭部強打するくらい

ピカピカにしちゃおうね」


縁起でもないことを言いながら部屋を出る小百合に、修一とかすみも続く。

お婆ちゃんは特に気を悪くした様子もなく、ニコニコしながら、

本当に悪いねえと三人に手を合わせた。





洗面所で、小百合達は声を低くして話し合っていた。


「今日こそ賢三さん、見つけてあげないとね」

「悪いな。爺ちゃんもだけど、婆ちゃんも可哀想でさ」


かすみは雑巾を入れたバケツを洗面台に置き、

蛇口から水が溜まるのを見つめている。

かすみが祖母から受けた相談は、毎晩夢に出てくる賢三が

『出してくれ、助けてくれ』と苦しみ続けているというものだった。

かすみが手加減をして雑巾を絞るのをチラりと見て、

小百合は天井に顔を向けた。


「でも、あらかた探したよねこの家の中。

修ちゃんにも見えないんでしょう?」

「うん、でももう見当はついてるよ。

だから、これから確かめに行こう」


修一は唖然とする二人を残して、

箒を持ったまま、つま先立ちで廊下に出た。



【2】

はたきと雑巾をそれぞれ装備した小百合とかすみは一瞬唖然としたが

慌てて後を追う。

修一は歩きながら誰にともなく呟いた。


「お婆さんって、僕たちが掃除始めると、

絶対にあの部屋から出ないんだよね」


やがて居間のふすまの前で足を止めて、

小百合に小声で囁いた。


「姉さん、もしもの時はうちあわせ通りお願い」

「足だよね」

「うん」


修一が前を向いて小さく頷くと、

引き戸を引いた。


「あの」

「あら、今日はこの部屋からかい?」


修一が声をかけると、入り口に背を向けて座っていたお婆ちゃんが

少し驚いたように振り向いた。

その正座する足首から先は、木の根のように細く広く家中に広がり

床や壁にへばり付いている。

お婆ちゃんが移動するためのレールでもあるそれを、

修一は踏まないように、つま先立ちで避けながら部屋に入る。

血管のように縦横に張り巡らされた奇怪な足が、

この家への、ひいては賢三への

強い執着の形なのだと修一は思っていた。

足場のいい座布団の上に立ち、修一が宣言した。


「はい、それで天気もいいから徹底的にやろうかと思って」

「あら、いいのよお。

私一人の家なんだから、そんなに頑張らなくたって」


お婆ちゃんが申し訳なさそうに微笑む。


「いえ、折角だから畳も干しますね」

「いいのよ、それは、しなくても」

「平気ですよ。かすみさんが居ればすぐですから」

「いいのよ、たたみは、しなくていいの」


お婆ちゃんの顔から笑みが消えた。

恐らく本人の意識の外で、

触手の数本が少しだけうごめき、一枚の畳の上に

感触を確かめるようにずるりと集まった。

修一がその畳を箒で指した。


「かすみさん。多分、その下だ」


それを見た瞬間、

修一を観察していたお婆ちゃんの目が大きく見開かれた。

肉の根が波打ち、修一に襲い掛かる。

うわっと修一が悲鳴を上げて、箒を構えるのと同時に、

危険を察知したかすみが目にもとまらぬ速さで部屋に飛び込んで、

覆いかぶさるように彼を抱きしめた。


「見えねえけど、あってんのかこれで!?」

「これじゃ駄目だ、かすみさん。逃げて!」


だが、突然の乱入者に、無数の足の動きが刹那止まった。

入り口から動かなかった小百合が、すかさず無防備なお婆ちゃんの背中を、

光る右足で勢いよく蹴り押した。

たまらずちゃぶ台に被さり、四つん這いになるお婆ちゃんの左ふくらはぎを、

何の躊躇もなく踏み抜く。

ポキンと枯れ木が折れるような音がして、

すぐにもう一度右の足から同じ音がした。

お婆ちゃんが台にうつ伏せのまま首だけで振り向いて、

自分の膝から下がどうなっているのか確認すると、

出来損ないの笛の音のような息をした。

修一の視界から、部屋中にはびこっていた

おぞましい肌色の繊維が消えていく。

小百合はどてらの後ろ襟ごとお婆ちゃんの服を掴むと、

そのまま後ろに引きずり倒して、後頭部を廊下の板に叩き付けた。


「何しようとしたか分かんないけど、

今、修ちゃんになんかしようとしたでしょ」


小百合は淡々と老婆の上半身にまたがって皮の余った首に手をまわし、

触れた部分から上がる薄い煙を自分の笑顔に浴びながら、力を込め始めた。

修一に見られていようと、もはやためらう様子もない。


「姉さん駄目だ。まだ、賢三さんのこと確かめてない。かすみさん!」

「おう」


かすみは修一に指定された畳を、

あるのかないのかわからないような僅かな隙間に突き込んだ指先の力で浮かせると、

メリメリと引きはがした。

現れた床板を拳で叩き割って、それを取り除く。

真剣な顔をして床下を覗き込む修一を、

しゃがんだままかすみが見上げた。


「どうだ修一」

「・・・・・・うん」


修一がほっと息を吐いた。


「うん。居る」


地べたには遺影の顔よりはるかに憔悴した様子の賢三が、

横たえられていた。

体は殺された時の肉体と同じで、もはや原形をとどめない、

見るも無残な状態だったが

顔だけは無傷で綺麗で、逆にそれが不自然だった。

賢三は、はじめ修一の顔をまじまじと見て、

次にかすみの方を見ると、

驚いたように眼鏡の奥の瞳を開いた。

それを知る由もないかすみが、

彼女には固い土しか見えない地面に向かって呼びかける。


「おい、居るんだな爺ちゃん。

大丈夫か、って、いや死んでるんだっけ」


賢三は目を丸くしたままかすみを見つめていたが、

一度瞼を閉じると、再びかすみを見て笑って

そして消えていった。

修一はそのことを、

ちゃんとかすみに伝えた方がいいと思った。


「賢三さん、かすみさんの事見て笑ってた。嬉しそうだったよ」

「そうかそうか」


かすみは晴れ晴れとした顔で、修一の頭を撫でまわした。

修一の首が、

回転コマンドを入力するジョイスティックのように回る。


「ありがとな、修一」

「ううううんうん」

「ねえ、ちょっと」


美しい光景に、小百合の楽しげな声が圧を持ってのしかかる。

かすみがそちらを見ると、小百合が見えない何かを取り押さえたまま

手のひらから煙を上げていた。

小百合は笑いを堪えるようにして、

顎でその押さえている何かを指し示す。


「コレ、かすみに助けてほしいみたいだけど」

「ああ?」


予想を超越した思いがけない小百合の言葉を聞いて、

かすみの瞳孔が一瞬で開き、顔の筋肉が強くひきつるのを修一は見た。

声を掛けられずにいる彼をおいて、

かすみがゆっくりと小百合に歩み寄る。


「何て言ってんだそいつ」

「『かすみちゃん、お婆ちゃんを助けて。殺されちゃう、助けて』だって」


小百合は何のてらいもなく、一字一句洩らさず伝言した。


「殺されちゃう、だあ?」


かすみの赤い髪の毛が、炎のように怒りに揺らめいた。

踏みしめる畳が軋んだ音を立てる。


「爺ちゃん殺したのはお前の方だろうが!」


かすみは犬歯をむき出しにすると、

喉笛に喰らいつくような殺意を込めて吼えた。

姿は見えやしないが、その老婆が何らかの希望を抱いて

自分を一心に見上げているのかと思うと、

それはかすみにとって不快と激怒の種でしかなかった。


「婆さん、こっちはアンタなんて知らねえんだよ。

この、ストーカーババァが」


自分とは何ら血のつながりもない

見えない老婆を口汚く罵りながら、

それでも言い足りないと矢継ぎ早に言葉を続ける。


「頭のおかしなアンタが

勝手に爺ちゃんと結婚してると思い込んでおしかけて、

あんな酷い殺し方して、挙句の果てに後追ったかと思えばてめえ、

死んでまで爺ちゃん縛り付けて迷惑かけてたのかよ。

どうせ、婆ちゃんやったのもお前だろうがよ、オイ」


かすみは今も病院でベッドに座っているであろう、

祖母の事を思っていた。

祖母は賢三の死後、自分以外誰も居ない筈のこの家の二階から

誰かに突き落とされて、二度と自力では歩けない身体になっていた。

受け身も取れないような酷い落ち方だったので、

それでも運がよかったですと医者に言われた。


病室でかすみと二人っきりになると、

ベッドの上のお婆ちゃんは、

あら、じゃあ、あの人が守ってくれたのかしらと笑っていた。


腕っ節は私より弱いけど、頼りになる人だったのよと、

涙を溢れさせながら微笑んでいた。


歌が下手糞で、

走るとすぐ息が切れて、

口喧嘩するとスネて喋らなくなって、


祖母の挙げる夫の情けなかったところは枚挙に暇がない。

彼女は泣き笑いのまま悪口を並べて、かすみの顔を見上げて、

でもやっぱり、と言葉を詰まらせた。

とうとうそこで、祖母の笑顔がへにゃっと完全に崩れた。


でもやっぱり、もっと、ずっと、一緒に居たかった


そう泣き声交じりに吐露するとそのまま、

シーツを胸元に抱え込み、身体を小さく固く丸めて

嗚咽を漏らすことしかしなくなった。

それまでかすみにとって祖母は、

絶対無敵の最強のおばあちゃんだった。

その打ちのめされてうずくまる姿に、

かすみはもう何一つかける言葉を持っていなかった。


「アタシがアンタのこと直接ヤれるなら、

どれだけよかったか・・・・・・」


米神に血管を浮かべて拳を握り締めるかすみが

見えない老婆に向けて、低く低く唸るように呟いた。

そのまま奥歯をかみ締めて、かすみは沈黙した。

無言のままのかすみを、小百合が笑顔で見上げた。


「かすみ。もういい? もう、言いたいこと言った?」


あまりに普段と変わらないトーンだった。

かすみは虚を疲れたようにぽかんとして、

自分が何を言われたのかよく分からないような顔で

小百合を見下ろした。

返事が返ってこないので、小百合はさらに訊ねた。


「かすみ。まだ、コレに聞いて貰いたいことある? 

あるなら、もうちょっと待つけど」

「・・・・・・え、いや」


ん?と首をかしげる小百合を見て、

かすみは長い息を吐いた。

風船がしぼむ様に脱力すると、

強張った手を二度三度握りなおして

最早そんなものからは興味を失ったように背を向けた。


「・・・・・・いや、もういいや」

「うん、分かった。お婆ちゃん。かすみね、もういいって」


姉が再び作業に戻る姿を、なすすべもなく見守る修一は、

しばらくして今日、三度目のあの音を聞いた。

枯れ木がへし折られるような音だった。






「まったく、男前な旦那を持つと苦労するのよ。

かすみ、あなた腕力はもうあるんだから

頭の良くて、何より女性に人気のない人を選ぶんですよ」

「どうかなあ、なんせ修一は頭良いけどジゴロだからなあ」


祖母のアドバイスを聞いて、かすみが愉快そうに修一を見た。


「かすみさん。

ジゴロってモテる男の人の事だって店長さんが言ってたよ」

「だからそのジゴロだよ」


人差し指を突きつけられて、修一は眉をひそめた。

こういう件に関して、少なくとも修一に心当たりがあるのは、

かすみと、小百合と、そして喫茶店の店長の三人で、

そのうち二人は姉と男なので、当然ノーカウントである。

これってモテてるって言うのかなと、いささか疑問だった。


「あ、何か今、修ちゃんが私の愛をぞんざいに扱う気配がした」

「あれ、僕声に出してた?」


適当に言った筈だった小百合が、

えっ、修ちゃんマジで・・・・・・?と、しわがれた声で呟いた。

飼主から豆鉄砲の銃口を向けられた鳩のような顔をしている。


「小百合お前、すげえ勘してんな。

実は妖怪なんじゃねえの? ほら、サトルとかいう」

「サトリだよ、かすみさん。サトルだと普通の男子だよ」

「ばーか、かすみのばーか。

かすみの方がよっぽど筋肉妖怪よ」

「なんか筋肉が溶ける病気みたいだなそれ」


やりとりを聞いていたかすみのお婆さんが、

たまらず噴出して、歳にしては大柄な身体を車椅子ごと揺らした。

むき出した歯の中に、きらっと輝くかすみと同じ鋭い犬歯を見て、

修一は何かに導かれるようにふらりとお婆さんに近づいた。


「やっぱりお婆さんの髪の色、

かすみさんと同じで綺麗ですね」

「あら、急にどうしたの」


何の脈絡もない唐突な賛辞にお婆さんは少し驚いて、

緩く編んで右肩から前に垂らした自分の髪を

ふわふわと撫でた。


「でも、ありがとう。あの人もよく褒めてくれたのよ。

情熱的で貴方によく似合ってるって」

「はい、僕もそう思います」

「あーっ、修ちゃんが今度はお婆ちゃん口説いてる!」

「やっぱりジゴロじゃねえか」

「口説いてないし、ジゴロじゃないよ」


姉と幼馴染の追撃をのらりくらりかわしながら、

修一は、賢三さんはあの消える直前、

勘違いでもお婆さんの姿を見ることが出来たのかなと思い返していた。

あの人が驚いた目で、数秒の間見つめていたかすみのと同じ、

燃えるように赤いお婆さんの髪を見ながら、

そうだといいなと思った。




ずっと一緒に居たかった  終

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