第5話 迎撃! 廃村防衛戦

「よし、それじゃあゴブリン達を迎撃する」


「「「「!!」」」」


 俺の号令を受け、果実兵達が整列する。

 果実兵達の数は10体か。

 ゴブリンが弱いとは言え、実力が分からないし数の上でもまだ有利とはいえないから過信は出来ないな。


「部隊を三つに分ける。俺に加えて四人、更に三人ずつに分かれて行動する。俺の部隊がゴブリン達と戦闘を始めたら、お前達はゴブリン達の真横から攻撃を仕掛けてくれ」


「「「!!」」」


 果実兵達がまかせろと元気よく手を上げる。


「お前達は回り込んでゴブリン達の後方の物陰に隠れてくれ。そして俺の合図があったら、一斉に攻撃を行ってくれ」


「「「!!」」」


 こちらの果実兵達も任せろと手を上げる。


「それじゃあ作戦開始だ!」


 俺達は村の中に待機しつつ、森からやってくるゴブリン達に見える様に村内の道に立って武器を構える。

 ゴブリン達に自分達しかいないぞとアピールする為だ。


「グギャギャ!」


 案の定ゴブリン達から嘲りの笑い声が響く。

 普通の敵なら罠を疑うところだが、こいつ等は10年以上外敵に脅かされることもなく過ごしていた、珍しい平和ボケしたゴブリンだ。

 一応罠に引っかかったふりをしている可能性もあるかと警戒していたが、ゴブリン達はそんなそぶりも見せずに向かってくる。


「よし! 迎え撃つぞ!」


「「「「!!」」」」


 果実兵達が おー! と士気高くゴブリン達に向かってゆく。

 俺も負けじとゴブリン達に襲い掛かる。


「はぁ!」


「ぐぎゃあ!」


 前衛のゴブリンと剣を交わすと、後ろにいる槍を持ったゴブリン達が仲間の背後から槍を突いてくる。

「おっと!」

 俺はバックステップして回避しつつ、果実兵達の様子を見る。


「「「「!」」」」


 すると意外にも果実兵達は善戦しており、ゴブリン達の剣と槍を回避しつつ、互角以上に打ち合っていた。

 果実兵達がゴブリンよりも強いのはありがたいな。

 っていうかあの木剣、ちゃんと切れるんだな。ただの木刀だと思ってたよ。


「そら!」


 俺はゴブリンにフェイントを放ちバランスを崩させた所で、思いっきり蹴って後ろのゴブリンへと吹き飛ばす。


「グギャガ!」


「ギャガ!」


 仲間に押しつぶされた槍持ちのゴブリンが不甲斐ない仲間を怒りその頭を叩くと、吹き飛ばされたゴブリンが怒って槍持ちに殴り返す。

 俺は同士討ちの隙を見逃さず、後ろからゴブリン達を立て続けに切り捨てた。


「「グギャァァァ!!」」


 残り18体!

 そして俺と共に戦っていた果実兵達がゴブリンの注意を引いている隙をついて、待機していた果実兵達がゴブリン達を横から襲い掛かる。


「「「!!」」」


「グギャアア!?」


 俺達に夢中になって伏兵の存在に気づかなかったゴブリンが2体、果実兵の奇襲で倒される。

 更に奇襲に驚いたゴブリンが3体、俺と果実兵の攻撃で倒される。

 これで残り13体!


「ギャギャギャ!」


 リーダーらしきホブゴブリンが号令をあげると、ゴブリン達が下がって周囲を警戒しだす。


 と言っても、そこまでリーダーシップは無いのか、2体のゴブリンが命令を無視して戦闘を継続した為、数の暴力で瞬殺された。

 これで残り11体。


 とそこでゴブリン達が予想外の行動に出た。

 何と残ったゴブリンとホブゴブリンが全て俺めがけて襲い掛かって来たのだ。

俺がリーダーだと判断しての行動か!


「くっ! 出番だ!」


 俺は背後に控えていた果実兵達に合図を送ると、果実兵達がゴブリン達に奇襲を仕掛ける。


「ギャガ!」


 ホブゴブリンのリーダーが声をあげると、二体のゴブリンが果実兵達の足止めに走る。


「あのホブゴブリン、結構知恵が回るな」


 伊達にリーダーをやってないって事か。

 とはいえ、悲しいかな、所詮はゴブリン。

 2体が足止めに徹した事で、戦力差は8対9。

ゴブリンより強い果実兵なら1体差は全くハンデにならない。


それを補うために俺に狙いを定めたみたいだが、それなら逆に俺が囮になって逃げまわれば良いだけだ。

 俺が後ろに後退しながらゴブリン達を引き付けると、ゴブリン達は果実兵を無視して突っ込んでくるので、果実兵の攻撃を無防備に喰らってしまう。

結果、更に3体のゴブリンが倒され、残りは6体。


 俺はゴブリン達を捌きつつ軽く反撃をして注意を引き付ければ、果実兵達がゴブリン達を死角から攻撃して更に数が減ってゆく。


「グギャア!」


 仲間が倒されてゆくのも構わず、二体のホブゴブリンが飛び込んでくる。

 だが俺もそれなりに修羅場をくぐった元冒険者だ。

 二対一でもホブゴブリン程度なら問題なく対処できる。

 一体の攻撃をバックステップで回避し、もう一体の攻撃を剣で防御しつつ膝を蹴る。


「グギャア!」


 ホブゴブリンがバランスを崩した所で、コイツの横に並び、もう一体のホブゴブリンの攻撃から身を守る為の盾にする。

 さすがのホブゴブリンでも仲間を攻撃するのはためらわれたのか、一瞬攻撃が止まった。

 その隙を逃さず、俺は体勢を立て直したばかりのホブゴブリンを切り捨て、後方に下がる。

 ホブゴブリンは傷つけられた仲間を気遣うことなく俺に向かってくるが、そこにゴブリンを倒した果実兵達が群がってくる。


「グギャア!?」


 そしてホブゴブリン達は瞬く間に果実兵達の餌食となったのだった。


「ふぅ、終わってみれば簡単だったな」


 最初は数の不利でどうしたものかと思ったが、ラシエルに果実兵を産み出してもらったお陰で予想以上に楽にゴブリン達を撃退することが出来た。


「皆お疲れ様。助かったよ」


「「「「!!」」」」


 果実兵達をねぎらうと、彼等はどんなもんよと誇らしげに胸を叩く。

 確かに見た目の頼りなさとは裏腹に、果実兵達は頑張ってくれた。

 というより意外に強かった。


 数体ほどダメージを受けていた果実兵達だったが、死者はいないみたいだ。

 いやまぁ、果物が死ぬのかは疑問なんだが。


「ともあれ、ひとまずピンチを切り抜けたな!」


 ゴブリンを倒した俺達は、意気揚々とラシエルの下へと戻るのだった。

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