第5話 地球誕生
コーヒーチェーン店のソファでくつろぐ男がいる。この男はスマートフォンでYoutube(ユーチューブ)を見ているようだ。
惑星や天体の話を興味深く観ている。
しばらく食いつくように見ていたがストローを挿して飲んでいたカフェ・モカがなくなっていることに気がついた。
「おっと飲み終わっちゃったよ。えっと時間は・・・ああ、ちょうどいいな」
オメガの腕時計は午前9時50分を差していた。
schott(ショット)のシングルのライダースジャケットを着た男が立ち上がった。
ジーパンはリーバイスの501XX(ダブルエックス)を履いている。
ブーツはオイルを塗って手入れされた光沢があるレッドウィングだ。
歩くたびにいい音を響かせていた。コツコツコツ・・・・。
グラサンをかけて街外れの雑居ビルの中に男は入って行った。
男はエレベーターに乗ると地下一階のボタンを押した。
男は地下一階で降りた。
メディテーションルームと
3分ほど経ってから店のドアの内側からカチッとカギが開く音が聞こえた。
どうやらお店のオープン時間を待っていたようだ。
男はドアを開けて店の中に入っていった。
支配人ミタ「おはようございます、ご予約のシバザキ・レオン様ですか?」
レオン「そうです。なんでわかったんですか?」
支配人ミタ「今日、お一人目のお客様だからです」
支配人のミタは微笑んだ。
支配人ミタ「どうぞ、こちらへ。では、さっそく奥のお部屋へ参りましょう」
支配人ミタは客のレオンを連れて奥の部屋へと移動した。
100号室にレオンは案内された。
支配人ミタ「レオン様、サングラスをお取りになってからそちらへお掛けください」
レオン「ああ・・・そうだったな」
レオンはサングラスを外してWRCと書かれた大きなイスに座った。
WRCが起動してレオンは仰向けの体勢になった。
うえからVRゴーグルが下りてきてレオンの目元を覆いつくした。
支配人ミタがいつものセリフを言う。
「ここはお客様がご自由に仮想世界をお楽しみいただける瞑想の部屋です。
実に様々なお客様にご来店いただいております。
きっと他にはない特別な体験をすることができるはずです。
肩の力を抜いてリラックスして席にお座りください。
それでは始めさせていただきます!3・2・1・・・GO!」
レオンの視界は真っ暗になった。この暗闇は宇宙だ。冷たくどこまでも暗闇が永遠に続く宇宙空間にレオンは浮かんだ。
レオンの後ろのほうでぼんやりと灯りがついて周りが薄っすらと見えはじめた。
とても暖かさがある太陽の光が辺りを照らしてくれている。
レオン「これから地球が誕生する瞬間が見れる。本当に世紀の瞬間ってやつだな」
レオンの鼓動は徐々に高鳴っていった。
遠くのほうから巨大な彗星が近づいてくる。それとは別に違う方角からは巨大な岩石が飛んできた。
2つ・・・3つ・・・。小さい岩石を含めると無数にある。
どこか遥か彼方で衝突を繰り返して、その一部がバラバラになった状態でこの太陽系に飛んできたようだ・・・。
彗星の動く速度はそれほどでもないが巨大な岩石はでたらめに速度が速い。
レオン「もしかしたらあの岩石は・・・ガンマ線バーストによって飛ばされてきたものなのか?」
彗星と岩石はぶつかり大きな衝撃波と光を放った。
彗星は真っ二つに割れた。そして、周りの無数にある岩石にぶつかりながら太陽の周りで周回運動を始めるのだった。
この周回運動の際、無数にある岩石が二つの星にぶつかっていった。通り過ぎていく岩石も無数にある。
彗星が二つに割れた後、遠いほうの星の近くに小さな岩石が集まり始めた・・・。しかし、さらに二つの星が周回運動をしているうちに遠いほうの星から太陽に近いほうの星へ岩石の塊は引力によって引き寄せられていった。
レオン「これは地球と月の始まりか・・・。じゃあ遠いほうの星は・・・火星だ」
二つに分かれた彗星はまったく瓜二つである。どちらが地球かわからないほどにそっくりだった。
少しだけ太陽に近いほうの星が大きく見える。少しだけ大きかったから岩石を引き寄せて衛星にすることができたのかもしれない。
地球には月という衛星がついた。
レオンは
どうやら
3Dの空間の中で見ているので迫力があったのだろう・・・。
地球にも火星にも水があった。最初は真っ赤になっていた二つの星だったが時間と共に水が豊富にある惑星へと姿を変えはじめた。
その時、地球にはオゾン層のバリアができていた。火星にはオゾン層はできなかったようだ。
レオン「どうして地球にだけオゾン層ができたのだろうか?太陽との距離と衛星があることが関係しているのだろうか?」
地球の水はオゾン層によって守られ太陽風が吹いても影響がなかった。しかし、火星のほうは太陽風によって水の蒸発を伴いながら水分はどこかへ飛ばされていった。
現在の地球とは大陸の位置や気候はまったく違う地球誕生を見ることができたレオンは興奮冷めやらぬ状態だった。
「地球と月、火星にはとてつもないロマンがある!これほど素晴らしいものを観れるなんて・・・」
また泣いている。コーヒーチェーン店でくつろいでいたクールなイメージとはかけ離れていた。
画面が真っ暗になった。気づけばVRゴーグルがうえに上がっていくのが見えた。
VRCが元のイスの状態に戻る。
支配人ミタ「いかがだったでしょうか?満足いただけましたか?それではまたのご来店をお待ちしております」
レオン「ああ、いいもの見させてもらったよ。今度、来たときは巨星ベテルギウスを体感させてもらうよ」
シバザキ・レオン、21才。彼は天体をこよなく愛する好青年であった。
支配人ミタ「過去、未来、天体、異次元など、お客様が観たいものは多種多様でございます。最新技術によって作り出されたVRCとVRゴーグルがあれば、どんなものでも観ることが可能でございます。それではまたお越しくださいませ。
本日は誠にありがとうございました」
支配人ミタは笑顔で深々と頭を下げた。
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