インターローグ
陶器のひびは二度と直らない
人生は選択の連続だ、と誰かが言っていた。
そんなの、強者の台詞だと私は思う。
私は決断の遅い子供だった。
皆がそれぞれの答えを選ぶ中、最後に手を伸ばす。
何をするにも迷いに迷い、答えを選ぼうと思い立った時には既に選べる選択肢が無くなっている。
そんなことばかりだった。
それが私だった。
そのくせ、選べなかったことに対する憤りだけは心の中に蓄積されていく面倒なやつで、時々、それを爆発させて、感情を撒き散らしていた。
あの時こうしていれば。
そう言われることも、自分でそう思うことも、よくある。
感情が、暴力が、全てが弾け飛んだあのとき。
私を見る周りの目の色が暗く濁っていくきっかけになったあのとき。
それも結局、ずっと、何をするのか、どう対処するのかを選べずにいた、私の決断の遅さが招いた事態だったのだ。
耐えることを選んだのではない。
他の選択をする、それが出来なかっただけなのだ。
それ以来、私は選択を遠ざけるようになった。
そもそも、選ばなければならない状況を作らないようになった。
人と関わると、選択が生じる。
そこには感情が伴い、選択には責任が生じる。
そういう重いものが嫌で、私は他人を遠ざけるようになった。
一人でいれば、納得できる。
選ぶことをせず、ただただ世界を漂うだけの自分にも、納得できる。
弱くて脆い心に負荷をかけることなく、日々を過ごしていけるようになる。
だから、私は、孤独でいい。
選択をしない私の人生は歪な形になるのかもしれないれど、自分が傷付いてしまうよりは断然いい。
そう、思っていたのに。
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