24-7.絶妙
ひとり暮らしの部屋に帰ってまずしたことといえば、ケーキの箱を冷蔵庫にしまってからお風呂の準備。
シャワーを浴びるとますます疲れを感じてこのまま寝ちゃおうかとも考えつつも電気ポットのスイッチを入れる。
ベッドの上でドライヤーを使ってる間、さらにぼんやり。手持無沙汰なのはスマホが手元にないからか、とふと思い、もっと大事なことを思い出した。
ナオトくんからのプレゼントをまだ開けてもいなかった。
クリスマス仕様のラッピングの中身はブレスレットだった。明るい茶色の革紐と、ピンク色のパールビーズがポイントになった金色のチェーンとが二重になっているつくりで、カジュアルというよりポップな感じ、高校生が身につけるような印象だ。悪い意味じゃなく、それがナオトくんの狙いかなって思ったから。
同じデザインのネックレスだったら、私の普段のファッションに合わせにくい。でもブレスレットならだいぶハードルが下がる。たまにはこういう若い子向けな装飾品も悪くないかな、なんて。
……ナオトくんなあ。いちいち手口が絶妙なのだよなあ。絶対モテると思うんだけどなあ。
でも、本人の証言通り、敬遠されやすいタイプかもっていうのはわかる。相当変わり者だもの。
私みたいなまったく釣り合いの取れてないオンナ(年齢差だけじゃなく性格や好みの面でも)を口説いてごり押ししてくるあたり尋常じゃない。
でも、私にとっても彼の絶妙な距離の取り方はすっごく楽ちんなのだ。楽ちんで、物足りなくなるくらい。……って、欲求不満か。
ばたんと横に倒れて両手で顔を覆ってジタバタしちゃう。
このヤバい感じ。圭吾くんのときと同じな気がする。そう、ワタシはちゃんとわかってる。去年のワタシとは違うんですから!
お腹のあたりがさわさわして不安が広がってくる感じ。そうだ、お腹が空いてるからだ。空腹のときにものを考えるとそりゃあ後ろ向きにもなる。
でも起き上がるのがめんどくさいよー。何か作る気にもならん。
ごろんと仰向けになってブレスレットをつまみ上げる。商品タグのついたままのそれに手を通してみる。
思ったより、いい感じだった。
単純な私はそれで気分を上向かせ、起き上がってスマホを手に取った。
メッセージアプリのナオトくんとのトーク画面を開いてブレスレットをつけた手首の写真を撮り、ハートがうごうごした絵文字と一緒に送信した。
さて、おかげで眠る前に食べる元気が出たぞ。まあ、カップラーメンですけど。
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