20-6.自然体

「紗紀子さんは自然体でキレイな人だなって思いました」

「どこが? 昨日なんてめっちゃ気合入れてたよ?」

「でもすごく自然だった。無理してる感がないっていうか。盛りすぎて痛々しい人っているじゃないですか」

 私が難しい顔つきをすると、ナオトくんはうーんと自分の前髪をいじった。


「ええと、難しいな……なんて言えばいいかな、おしゃれが板についてるっていうか、自分のスタイルをちゃんとわかってるっていうか」

「そりゃ、それなりに冒険してきた結果の今のスタイルだもん。それなりの年齢になったらそれなりに落ち着くもんだよ?」

「だからそれって年齢関係なくて。どの年代でも無理してる人は無理してるし、自分を理解できてる人はできてるし。僕、職業柄人間観察には自信あるんだよ?」


「仕事って?」

「当ててみて」

 言われると思った。ちょっとだけナオトくんとの会話のコツがつかめてきた私は、自分も姿勢を楽にしながら返した。

「ファッション関係?」

「はずれ。介護職です」

「ほんと?」


 ナオトくんの髪の毛をガン見しちゃう。介護職って髪色は黒、服装はポロシャツでないとって聞いたことある。

「うちは髪色うるさくないんだ。清潔感があるならって。気分が明るくなるって言ってくれる利用者さんもいるし」

「そっかあ、そうだよねえ。ごめん、偏見があった」

「ほら、そういうところ。紗紀子さんはすごくナチュラル。僕はそういう人が好き」


 前に圭吾くんに、落ち着きのあるなしと年齢は関係ないって言われたことを思い出した。求められてることは同じなのかもしれない。

 そんな圭吾くんとはうまくいかなかったわけで。ありがちな言い方をするなら、私が、ほんとの自分を見せられなかったからで。だから年下相手にいい格好するのはやめようって反省したのであり。


 でもそういう説明をしたところで、年下ってざっくり括るなって絶対反論される。ううん、メンドクサイ。

「めんどくさいでしょ? だからおためし」

 すっかり先回りされて、私は黙るしかない。


「言い方が悪いんだよね。ええと……、更新制! これならどう?」

「うん。意味合いは分かる」

「良かった! ね、これならめんどくさくない。二週間ごとに続行か終了か確認。どちらかが終了したいってなったら理由は問わずそこでお別れ。どうだろう?」

 合理的すぎて情緒がない。でも確かに楽ではありそうで。


「今の内容、文書で保存しとくべき?」

「いいね。リマインダーにメモしておこう」

 マジか。いそいそとスマホを取り出されては冗談とも言えず。

 話をつけたうえで付き合うならいいんじゃないって静香の言葉を免罪符に、私はただ苦笑いですませた。

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