5-8.「いいんじゃない?」
翌日の夜には絵美も合流して、四人でアウトレットモールに出掛けた。
「晃代にセクシーなランジェリーを買ってあげよう」
ノリノリで絵美が言う。
「なんで!?」
「ダンナが二度と風俗行かないようにだよう」
「それはいいかもねー」
詩織ものんびり同意するから、晃代は私に助けを求めてくる。もちろん私も絵美の提案に賛成だ。
「子作りはいいけど雰囲気作りも大事にしてる?」
晃代はちょっと言葉に詰まる。
「さあ、出しなさーいってわけにはいかないでしょ? ちゃんと楽しんでやってる? お互い気持ちいい方が妊娠しやすいんだよね? そうでしょ?」
「それは知ってるけど」
「色っぽく誘って濃いヤツもらえば妊娠なんてすぐさ。あ、二回目のが濃いんだっけ?」
「絵美ちゃん意外と詳しいよね」
「うるさい」
最近のランジェリーは、市販でも可愛くてえっちくさいのがいくらでもある。高級海外ブランドの店に入ってわいわいやっていたら、晃代もだんだん乗り気になってきた。
「アキちゃんはピンクだよピンク」
「赤も可愛いけどなあ」
「黒でしょ」
「あんたがつければ?」
「誰に見せるのさ」
好き勝手言い合って、他のお店も覗いて回って美味しいものを食べて。クリスマスシーズンでイルミネーションが綺麗な遊歩道を歩いて、満足して帰ってくると、うちのアパートの駐車場の片隅で、がたがた震えている人影があっ
た。
「迎えに来いとか言っておいて留守ってのはどういうことだっ」
晃代のダンナ様だ。どうやら、感心なことに寒空の下で辛抱強く待っていたらしい。
「ご……」
反射的に謝ろうとする晃代の口を詩織が抑える。そうそう、謝るのはあんたじゃないでしょ。
私と絵美がじとっと見ていると、ダンナさんは覚悟を決めたように少し頭を下げた。
「俺が悪かった。謝るから家に帰ってこい」
どうにも偉そうだけど、晃代的にはそれで充分だったようだ。
「うん」
私の部屋から荷物を取ってきて、ダンナのクルマに乗り込む。
「紗紀、ありがとう」
「いいえー。またおいで」
「ふたりも、またね」
手を振って路地を曲がっていくクルマを見送り、取り残された私たちはなんとなく苦笑いし合った。
「いいのかね? あれで」
「いいんじゃない?」
細々とした問題は、また時間をかけて二人で解決していけばいい。
友だちがしてあげられるのは、気晴らしに付き合うくらいだ。
「せっかく来たんだし寄ってく?」
私が誘ってあげると、絵美が目を輝かせた。
「久々にパジャマパーティしたい」
「明日仕事だよー」
「いいじゃん」
「はいはい。詩織もおいで」
「わーい」
彼氏やダンナがいれば友だちは二の次になってしまう。寂しいけどそれは仕方ない。だけどそれでも友だちだからね、私たちは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます