4-4.ドブに捨ててやりたい
絵美は学生時代、インディーズバンドのドラマーに入れ込んで、追っかけみたいなことをして手紙を渡したりしていた。ほどなく男から付き合おうって言われて、絵美は有頂天だった。
男のアパートにお弁当を持って通ってセックス三昧らしかった。それだって若気の至りってヤツだ。よくある話。
問題は避妊をしてなかったことだ。
「だって、外で出せば大丈夫って」
そいつとが初めてだった絵美は、お腹の上に射精されてびっくりしたけど、それが普通だと言われ納得してしまっていた。
「ゴムは体に合わないからヤダって。これで妊娠させたことないって」
これを聞いた私は、あまりのことに目の前が真っ赤になった。
男も大概だけど、自分の親友がこんな大バカ者だったなんて。
あのときの私は怖かったと今でも絵美は時々言う。
今まで妊娠しなかったことに感謝しろとどやしつけ、私は絵美にお説教した。
絵美は基礎体温についてきちんとした知識もなく、自分の排卵日すらわかっていなかった。なんていう無知。
私の勢いに絵美は涙目になっていた。
親や学校が性教育を施さないから、いやらしいことだと目を覆ってばかりで正しい知識を与えないから、真面目で純真な子ほど、偏った知識で達人ぶったおかしな連中の餌食になってしまう。
私だってそうだ。恥ずかしがらないで、友だちとだってそういう話をどんどんすれば良かった。情報を共有すれば良かったんだ。
激しく悔やんで、私は絵美に基礎体温計を買いに行かせ、危険日を避けたうえで必ずコンドームを使うことを約束させた。
絵美はまたすぐに私に相談してきた。
「彼がどうしてもヤダって。そもそもコンドームなんか持ってないって。どうしてもって言うならお前が買ってこいって」
私は目の前が真っ赤を通り越してどす黒くなる感覚を味わった。
なんだそれ。コンドームも持ってないくせにいっちょ前に行為だけはしたがるなんて何処の王様だよ。
そんな男のアレはちょん切ってドブに捨ててやりたい。
そんな男でも絵美はそいつのことが好きなのだ。別れろってどやしつけてやりたいけど、そんなことして私と絵美がケンカになってしまったら、私は絵美を守れなくなってしまう。
「それなら買いに行ってきなよ。そしたら使ってもらえるんでしょ」
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