Epilogue 彼らの旅、少女の話

「旅はとっくに半分を超えたんだ。話の途中だから言わなかったけど。今、切符いいかな?」

「……え?」

「どうした?」

「あのっ……さっき、車掌じゃないって。」

「ああ、そうだね。でも、だからと言って、切符確認が出来ないような立場でもない。」

「……ええっ…。」

「では、切符を。」

「……。」

「……。」

「私……。」

少女は凄く不安そうに腕を見つめた。

「まさか、切符が無いのか?」

「あ、いえ……あの……。」

「まさか……無賃乗車なのか?」

「あ、えっと……。」

「これは困ったな。知っての通り、ここの切符は非常に高いからな。君の話を聞いて、とてもそこまで経済力のある子とは思えないのだが。」

少女の体は、恐怖のせいで震え始めた。

「これは、降りてもらうしか……。」

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

『降りてもらう』と聞いて、少女はすぐ大声を出した。

「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……。でも……お、お願いします、今回だけでいいから……。み、見逃してもらえませんか……。どうしても、この列車に乗りたいんです。終点まで行きたいんですっ。」

「見逃すか……出来なくはないが、理由は?」

「気分転換がしたいんです……じゃないと、私はいつまでも、彼との記憶に囚われたままです……。」

「本当か?」

「そ、そうです……。」

少女は左手で右腕を強く握り締めた。

「し、信じてください……。」

「うーん……。」


どうしようか……。私は考えてみた。


《見逃す》


……少女の顔を見て、躊躇した。

「分かった。今回だけだ。話を聞かせてもらったお礼にしよう。」

「あ、ありがとうございます!」

私の答えを聞いて、少女は飛び上がる程に喜んだ。

「申し訳ありませんでした……。もう二度とこんなことはしませんから。」

少女は謝ってくれた。自分の選択は正しいかどうか分からないが、少女にこの様子を見たら。多分、正しいのであろう。傍観者である私は、相手の奥底にある考えは分からない。だから、この子が喜んでくれたら、良いか。

「じゃあ、ゆっくりしててね。私は次の車両に行かなければならないから。」

「あ、はい! お、お疲れ様でした。」

少女はわざわざ立ってお辞儀をした。そしてまた座った。



私が席を立った時、列車はまだまだ動き続けている。

外の日差しはあまりにも眩しく、窓の方を向いている少女は帽子を下にずらした。

まるで最初のように。




もうすぐこの列車は終点を迎える。

少女が終点の景色を見た時、心は晴れるだろうか。

もう私には、関係の無い話だけど。

背筋を伸ばし、次の車両へと向かった。






まだ乗客が残っている。

彼らの旅は、まだまだ終わっていない___。













『次の、ニュースです。

 ◯◯市◯◯町のとある民家で、手首をリストカットして、自殺している少女の遺体が発見されました。』




《 BAD END 》



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悠遠列車 《Bad End ver.》 姫宮 柚 @yuzu_1027

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