第27話 絶望の中に響く声とは
ガルスとの戦いでクロエの魔力は尽き欠けていた。
「正直ちょっとナメてたわ。私とマカロンの二人がかりなら王国の魔騎団相手でもなんとかなると思ったんだけど」
「ミレノアールがいなければ貴様をジョヴァング様のところへ連れていくだけだ。抵抗出来ないように半殺しにしてな! フハハハハハッ」
ガルスは勝利を確信したように高笑いしている。
「そうはさせねぇだ!」
マカロンは口を大きく開くと炎を吹き上げる。
――――ブワァァァァ!
「使い魔のドラゴンごときが俺の魔力に敵うと思っているのかぁ!」
両者の炎がぶつかり大きな爆発が起こる。
――――ドッカーン!!
「ちょっとマカロン! 無茶しないで!」
爆発は容赦なくクロエと小屋を吹き飛ばす。
「まずいわ。私の空間魔法の効力が切れる」
爆発をかいくぐって崩れかけの小屋から出てきたショコラがクロエに近づいた。
「ミレノアール様とルーシー様は無事、地下のゲートからお逃げくださいました。クロエ様もどうぞここから早くお逃げくださいませ」
「そう、ありがとうショコラ……私も今すぐ逃げたいところだけど、残念ながらもう魔力が残ってないの」
爆発から守るために残された魔力を使い切ってしまったクロエは立っているのがやっとといったところだ。
「聞こえたぞ。ミレノアールを逃がしたって?」
クロエは自分の真後ろから聞こえた声にビクッとして振り返った。
そこには爆発の煙に紛れたガルスが立っていた。
ショコラとの会話を聞かれてしまったのだ。
「しまった……」
「どこへ逃がしたって? ミレノアールの居場所を教えろ!」
ガルスはクロエの首を掴むとそのまま締め付けながら持ち上げた。
「くっ……!」
「言え! このまま締め殺されたのか!?」
――――クロエが気を失いかけた時だった
ブワァァァァッ! とクロエとガルスの間に竜巻が起きて二人を分けた。
その竜巻に乗ってクロエは空へと浮かび上がる。
「よくも私の愛弟子を可愛がってくれたわね。覚悟しなさい!」
どこからともなく聞こえたその声の主は、ガルスの遥か上空にホウキに跨り浮かんでいた。
声色から女性であることはすぐにわかった。
「魔女だな。こいつらの仲間か?」
気を失いかけていたクロエは風に乗ってふわりを浮かび上がると、その魔女に吸い寄せられるようにしてお姫様抱っこで抱えられた。
「ゲホッ ゲホッ」
「しっかりしなさい、クロエ! あの程度の魔法使いにやられているようじゃ私の弟子失格よ。さては私がいない間、修行をサボっていたわね」
クロエには聞き覚えのある声だった。
ゆっくりと目を開ける。
とんがり帽子に純白のローブ、そして見慣れた赤ぶちの眼鏡。
「ベルコ師匠……」
ブワッと涙が溢れてくる。
その魔女はクロエの師匠であるベルコ・リンドルであった。
「あなたはここで待ってて」
リンドルはクロエに小さな結界を施すと優しい手つきでホウキに乗せた。
そしてそこからスッと飛び降りるとガルスの前に立ちはだかった。
「覚悟はいいかしら?」
リンドルは左手の中指でずれた赤ぶちの眼鏡をすっと押し上げた。
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