第6話 ルーシー・パンプキン 「その3」

 学校から帰ったルーシーは、早速思い付いた案をオリビアに話した。


「あのお城に今、王都から偉い魔法使いが来てるんでしょ。じゃあその人に頼んで王都に連れていってもらおうかと思うんだ。魔法使いだったら王都なんてホウキでひとっ飛びだよ、びゅーーーん! って」


 そう言うとルーシーは、自分の両手を使って飛行機でも飛んでいるかのような仕草をした。

 突拍子もないルーシーの案にオリビアは面を食らったが、元はと言えばこれは自分からした話であることを思い出した。


「でも悪い魔法使いもいるって噂だよ」


 少し怯えた仕草でオリビアはルーシーを引き留めようとする。


「大丈夫だよ。だって捕まってるんでしょ?」


「うん。でももし本当に悪い魔法使いがいたら……そんなところへ来た魔法使いってのもきっとワケアリだよ……」


「心配性だな~オリビアは。王都から来た偉い魔法使いならきっと、正義の魔法使いに決まっているよ! それにこれはチャンスだと思うんだ! せっかく今日、10歳の誕生日に出発するって決めてたのにその計画がバレて失敗になっちゃった。でもそんな日に街の近くに王都から魔法使いが来てるなんてすごい偶然だよ。やっぱり私は魔女になる運命だったんだよぉ~!」


 どこまでも前向きなルーシーに、改めてこの話をしたのは失敗だったかなと思うオリビアだった。

 当初の計画であるバスで王都まで行くのとは違い、無計画で突発過ぎるからだ。

 それでも一度言い出したら聞かないこともよく知っている。


「もう夕方だし、今から出てもお城に着くのは夜になっちゃうと思うよ。その頃にはもう魔法使いさんも王都に帰っちゃうんじゃないかなぁ?」


 オリビアはなんとかルーシーの行き当たりばったりな計画を止めようとしていた。


「そっか! じゃあ早く出発しなきゃ! ほんとは朝出る予定だったから荷造りは終わってるし~♪」


 オリビアの説得を自分の都合よくアドバイスとして受け止められるのは、ある意味ルーシーの長所でもある。


「ルーシー、ほんとに行くのぉ~?」


「大丈夫だよ、オリビア。きっとすぐに一人前の魔女になって戻ってくるよ」


今にも泣き出しそうなオリビアをたしなめて、ルーシーは荷物の入った大きなリュックを背負った。

後ろからだと小さなルーシーが隠れるくらい大きなリュックには、いったい何が詰まっているのかと聞きたいくらいだ。


「じゃあね、オリビア! リンドル先生には上手く言っといて!」


そう伝えるとルーシーは街のはずれにある『小さな城』へと向かった。

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