第22話:幕間 三角耳の娘ー1

 まったく。


 まったく。


 全くまったくみゃ。


 ちょっとしたお使いのつもりが随分遠くまでついていかされて、やっと帰ってきたと思ったのみゃ。


 そうしたら下からはとんでもないでかい音が聞こえてきたし、どうも上のほうから入り口を勝手に作って入ってきたやつらも居るみたいみゃ。


 一体、この騒ぎは何みゃ。


 団長に報告する前にほんの少し居眠りしていただけで、この仕打ちはないと思うみゃ。


 って、お前は誰みゃ。


 全身黒ずくめで、硬そうな手甲を着けてるみゃ。それでウチを殴るのみゃ?


 それは痛そうだから遠慮するみゃ。


 メイが居れば相手させるのに、肝心な時に居ないみゃ。いつもは団長、団長とうるさくて、構ってもらえない時には、トンちゃんトンちゃんうるさくなるみゃ。


 ずっとつきまとわれるのも面倒臭いけど、必ず団長の次っていうのも何だか納得いかないみゃ。

 いや確かに団長はかっこいいし、ウチも好きだけどみゃ。


 あ、忘れてたみゃ。だからお前は誰なのみゃ。さっきから何をぶんぶんと腕を振って遊んでるみゃ。


 え、攻撃のつもりだったみゃ?


 悪いけどそれじゃあ、うちの連中は誰も――アビスは食らうかもみゃ。


 ところで知ってるかみゃ?


 何をって、ここはウチの部屋みゃ。勝手に決めただけだけどみゃ。そしてウチは一応女の子みゃ。


 何? 勝手に決めただけと言ったみゃ?


 大事なのはそのあとみゃ。気にしないみゃ。

 大丈夫、痛くはしないみゃ。そう感じる前に気絶させるみゃ。


 それは感じていないだけで痛いのには変わらないとか、細かいことを気にしてはいけないのみゃ。


 あっ、お前のとこのボスみゃ。

 そぉれっと。


 馬鹿なやつみゃ。ウチがお前のボスを知ってるわけないみゃ。


 ――うみゃ?

 今、部屋の外で大きな音がしたみゃ。


 ……何してるみゃ?


「あっ、トンちゃんみゅ! だんちょおに言われて見回りしてたら、この子を見つけたから追っかけてたのみゅ!」


 さっきのやつと同じような格好してるみゃ。どう見ても仲間みゃ。

 事情は分かったけど、どうして追跡で天井を破って落ちてくるみゃ? あ。それと、首を離すみゃ。死んでしまうみゃ。


 もう一度同じことを聞くみゃ。お前たちは誰みゃ。

 どいつもこいつも手強い? ウチたちこそ化け物じゃないかみゃ?


 酷い言われようみゃ。ウチたちは見ての通り、か弱いキトルの集まりみゃ。嘘じゃないみゃ。


「メイたちは、盗賊団ミーティアキトノみゅ!」


 ああ――どうして教えてやるみゃ。そしてお前も、なんだそれみたいな顔するなみゃ。とぼけたウチが馬鹿みたいみゃ。

 メイ、これで縛っとくみゃ。そいつは口の利き方が偉いやつっぽいみゃ。


「分かったみゅ!」


 あっ、逃げたみゃ。そりゃあ、ロープを受け取るだけで両手を離してたら逃げるみゃ。


「みゅみゅうっ!」


 ありゃ、また床を破って下に落ちたみゃ。巻き添えで団長に怒られるのは勘弁みゃ。

 そうか、知らない振りをすればいいみゃ。


 そうと決まればもう一寝入り――また同じ格好のやつかみゃ。いい加減にするみゃ。

 分かったみゃ、お前たちが誰かはもういいみゃ。それよりもお前たちが何人居るのか教えるみゃ。


 教えるわけがないみゃ? それはそうみゃ。

 普通なら、みゃ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る