第6話 喜びも哀しみも

では、何のために難病の患者は生きているのでしょうか?

生きていることが、辛く悲しいだけなのになぜ。

患者それぞれの楽しみやうれしいことを家族が見つけているのでしょう。

本人がどう思っているのかは別にして。

そう、本人の思いとは別のところで、勝手に決められていることです。

本人の意思は、あくまでもわからないのです。

本当に末期の難病患者は、ほとんどの人が、寝たきりで喋れなくなりますが、本人、脳はしっかりしているので、何をされているのか理解はしています。

なのになぜ生きていられるのでしょうか?

答えは、至極簡単です。

死ねないから、単に呼吸をして、心臓が動いているだけなのです。

本人、苦しいだけなのに、家族の思いと死なせない医療のエゴイズムだけで生きさせられているだけなのです。

楽しむことは、もうできません。

もう、夢も希望も持つことは許されません。

一応の反応が残っている場合、笑ったように見えることもありますが、笑ってはいません。

病院の神経難病の病室で、様々な患者とその家族を、観察していると家族は患者のことを理解しているように見えますが、その実、何も理解していません。

当たり前ですよね。

現在、地球上のありとあらゆる科学者と医学者と研究者達がこぞって研究に研究を重ねて尚わからないから難病なんです。

難病の中の一つでも解決できればノーベル賞ものです。

それを、その辺りの一般人がわからないのも道理で、恥ずかしがる必要は、ありませんよね。

しかし、わかったつもりで勝手に決めつけているのはどうかと思うことも正直あります。

患者本人は、哀しかろうと辛かろうと、どうにもできないのだからどうでもいいのかもしれませんが。

神経難病の入院患者の約8割以上は寝たきりで、意思の疎通すらままならないような症状です。

ほとんどが高齢で、ある程度のわがままも出てくることから、家庭ではとてもじゃありませんが、面倒をみきれません。

それでも、連れて帰ろうとする家族には、頭が下がります。

癌患者の緩和ケアのような施設があれば良いと思うのですが。

現在の医療制度では、家族の負担軽減措置としては、レスパイト入院と呼ばれる、短期入院のみですので。

家族は、それほど休まらないのが事実でしょう。

もちろん、それでも公費負担ですので、有難いことなのですが。

そう、難病の治療は、ある程度公費で負担されてます。

難病の治療薬は、非常に数少ないがあれば家族は、使いたいと願うことでしょう。

しかし、ALS(筋萎縮性束索硬化症)に使うラジカットという点滴は1本¥5.115円を、しばらく続けなくてはなりません。

SBMA(球脊髄性筋萎縮症)のリュープリンSRという注射薬は、1本¥66.850円と大変高額なものです。

さすがに公費負担でなければ治療ができない患者がさぞかし多く出ることでしょう。

とくに、ALS(筋萎縮性束索硬化症)やSBMA(球脊髄性筋萎縮症)のような40歳代ぐらいから発症する難病は、昭和の初め頃には、ほとんど確認されていないと思えます。

人生50年ぐらいの頃には、重症化する前に、他の病気等で亡くなっていたと思われます。

現在ですら、ALSやSBMAの直接の死因は、誤嚥性肺炎が最も怖いと思われます。

SBMAの場合は名前の通り、球筋(舌の奥にある球状の筋肉)が麻痺する球麻痺になり、誤嚥しやすくなっているのです。

誤嚥性肺炎になる前に、誤嚥による窒息という危険まであります。

だから、数ヶ月に1度定期的に入院して症状を、検査することが生命の維持につながっているのは間違いないでしょう。

しかし、何年間も何度も繰り返して入院すると、経済的にはかなり負担がかかるのも事実でしょう。

そんな負担を政府が負担していれば、必ず文句を言う人間が出ます。

政治家かもしれません、一般人かもしれません。したり顔の有識者という非常識人かもしれません。

とにかく、政権に反対するしか能力のない人がいることも事実でしょう。

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