第3話 権限:作者に任命されました

 どうも、色々身バレしている「Growry Fantasy」作者の成作です。そのグローリーなんちゃらって何だって?それは追々説明していくとして… 今、タリアン広場に四人の主人公と二人の作者がいる。作者というのは、俺と相互フォロワー関係のリャーさんだ。


<皆さん集まって! 今、この広場に危機が迫ってるんです!>

<隕石が…いずれ堕ちるかもしれない…>


 ベルとスコットの呼びかけに、皆は無視している。皆に集められた作者たちもだ。


「隕石がこの広場に堕ちるって?んなわけないでしょ、ここPCの中だよ?」

<そうだよねェ>

「証拠はあるのか、証拠は!!」

<マスター、そんなに怒らなくてもいいのでは?ですが、確たる証拠はゼロです>


 全然信じてもらえない。この広場に双子の隕石の片割れが落ちる事が。アナライズ魔法は完璧だ、間違う事はない。でも…言われてみれば、パソコンの中に隕石が降ってくるなんてありえる…のか?


「全然ダメですね…誰も集まらない」

「広場の危機…確かに、平和そうな広場にゴブリン一匹出た程度じゃ危機だなんて思ってもらえない、か」


 すると、一人の和服を着た美麗な青年が話しかけて来た。どうやら彼はどこかの作品の主人公らしい。


<すみません、広場に危機が迫っているとお聞きしたもので。わたくしめに詳細を教えて頂けないでしょうか?>


「あ、えっと…この隕石の欠片なんだけど、これが双子隕石っていう隕石の片割れで、地球にそのうち隕石が飛来してくる、って言っても信じてもらえないよな」


<ほう…実に興味深いですね。少し辞書で調べさせてもらいます>


 彼の手持ちの辞書で調べ始めた。どうやら、アナライズと同じ効果を持っているらしく、すぐに調べ終わった。


<確かに、これは双子隕石ですね>

「やっぱり合ってたのか、双子隕石で!?」

「良かったですっ、確証が持てて…!!」


 良かった、これで信憑性が増す。そして、それと同時に広場がざわつき始めた。


「オイ、あれって確か…ジュンだろ!?」

<100%合っています、マスター>

「私の尊敬するジュン様だぁー!ハスハス!!」

<えー尊敬してるの私じゃないのォ?>


さっき疑っていた奴らが、ジュンと俺たちに寄って来る。

「ジュン!!お前確かに双子隕石って言ったよな!!」

<マスター、先ほどそう発言したのを確認しまし…>

「お前は黙ってろ!!」

<ひ、酷いマスター!>

「ジュン様ー!サイン下さいサイン!」

<私のサインはいらないのォ?>

「アンタは黙ってて!」

<ひどい人だねェもう>



「す、すごい… ジュンって何者なんだ?」

「分かりませんけど、一部界隈で凄く有名なんじゃないでしょうか…」


すると、ジュンの作者がジュンの所へ寄ってきた。


「ちょっとー、うちのジュンに触らないで欲しいんだけど、オッサン!マジキモイ」

その子は、女子高生だった。


「え…きみが『純愛順不同』の作者?」

「そーだよ、だからもう離れろよオッサン!」

<マスター、どうします?>

「幻滅したぞ…」


 おじさんの方のファンが帰っても一方に迫ってくる、女性のファンにはSNSでいくらかお世話になっているようなやり取りをして、解散していった。


「…で、ジュンの辞書技能が本当だって言うんなら、おにーさんとおねーさんの主人公たちが言ってた事は本当なワケ?」


 この広場では繋がらないスマホを一瞬見て、ポケットに入れて話をする女子高生。


「ああ、だから色んな作者と主人公に手伝って欲しいんだ」


「ん、分かったー。じゃあコネ使って集めとくわー人数。…あ、繋がらないのかココって、徒歩かよ…」

<わたくしが歩くだけでも、宣伝効果にはなると思いますよ>

「んじゃー任せるわ、歩いてきてジュン」


 ジュンが呼びかけに行った所で。


「…じゃあ、ここらで全員自己紹介しよう、いいかな?」

「いいかな、って年下に見ないで欲しいんですけどー」

「確かに、成作さんだけしか名乗ってないですよね…私は、腕田 李杏うでた りあんと言います。プチダークファンタジーという名目のほのぼの劇作ってます」

「俺は大神 成作。旅をして精神が強くなる的な感じのゲーム目指して作ってる」

「次うち? 根戸瀬 悠歌ねとせ ゆうか、よろしくー」


「U歌!?」 俺は思わず飛び上がった。

「何?うちの名前、変?」

「いや、丁度ネット声優にU歌って人が居たなーって…ハハハ」

「あ、それうちだけど?」

「ええええ!?」 俺はまた飛び上がった。


「何か楽しいんだよねーやってるのが。あとお小遣いの代わりにそれで稼いでろってさ、うちの両親が!あはは」


「…全然イメージと違った…」

 何を隠そう、ベルの担当声優はU歌さん…つまりこの子の予定だった。ベルの声は、サイトに置いてあるサンプルボイスと同じ声域だけど、この子は…全然違う!


「いやあ、凄いなネット声優って…地声とサンプルが全然違う」

「あったり前でしょー、何言ってるの成作おにーさん うち的には常識」



 と、話している間にジュンがいくらか作者と主人公を集めてきてくれた。

<ねーむばりゅー、という物ですね。ほとんどは>

<…凄い…ネームバリューの力…>

<あたしたちネームバリュー無いものねえ?>

 思わずスコットとベティカが感動する、ネームバリュー力53万のジュン!


<さて、人数は集まりましたけど どうやってこの広場にギルドを?>

「決まってんじゃんジュン、木切って柱建てて屋根つければもうギルドだよ」

 恐らく悠歌さんはサンドボックスゲームをやった事がある。


「いや、本格的に作ろうU…悠歌さん!」

「本格的にですか、でも成作さん、資材がありませんよ…?」

「そーそー、資材が無いんだよ」



「何言ってるんだ、俺たちはゲーム製作者。この広場にイベントを作ればいい!」



「あ~なるほどなー、頭いいわ成作おにーさん」

「権限が無いんじゃないですか?」

「えっ」


 思わぬ落とし穴。そうだ、ここは思い返してみればダウンロードして来たゲームの中だ。エディターファイルが無いとイベントが作れない!!


「そうかああああ!!」

「やっぱ頭良くないわー成作おにーさん」


 すると、近くにあったテントがピカピカと光り始めた。そこは確か…博士の女性が居た所!何かヒントがあるのかもしれない。すぐに向かった。


「…何か落ちてる!」


 俺がゆっくりと拾い上げたそれは、青いフチに囲まれた狼の印。そう……


「エディターファイル落ちてたァァァァ!!!」

「おにーさん声でかいー!!」

「え、何も持ってるように見えないですけど…」

「見えない?ここにあるって、ここに!」


 そこで気づいた。これは、俺だけが手に入れた権限なのでは。


「…よし、木材をDBに追加して建築システム作るぞ!」

「最初からギルド建てりゃいーじゃん」

「それじゃあ面白くないだろ、製作者として!すぐ作るから!」

「分かりますその気持ち、凄く…!」


 こうして、俺の急ピッチでのデータ作成作業が始まった。


「あと、マップ上に木材が採れるポイントを追加する! ひとまず既存のアイテム入手コモンで間に合わせるけど! 皆は採取を始めて欲しい!」

<分かったよ成作!頑張るね!>

<製作者のこだわり…俺には良く分からん…>

<ま、いいじゃねーか わざわざ採取してもな!>

<ふふ、これだけいればすぐ終わるわ♪>


<さて、始めましょう ギルド建設に向けて>



『その調子です…』


 また、声が聞こえた気がした。

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