縄跳び
中学三年生の夏の話です。
私の人生で一番速く動けたのが中二の夏~中三の夏でした。短距離、中距離走なら県内でもまあまあ速い方で陸上の大会にも助っ人で出場していました。その頃は兎に角、脚力を鍛えることにはまっていて毎日5キロのランニングとダッシュ、縄跳びを千回くらいやってました。速く走れるようになる、高く跳べるようになるということが楽しくて学校から帰った後の夜に一人でやっていました。もう少しその情熱を部活に向けていればよかったなと今になって思います。
さてその日は私の地元の花火大会でした。一人暮らしをしていた母方の祖母の家に集まって親戚と花火見物に行くことになりました。母の運転する車で私と弟の三人で祖母の家に向かいました。父は残念ながら仕事で不参加でした。
到着したのが18:30で花火の開始には時間があり、かつ親戚もまだ来ていませんでした。暇になった私は時間を有効活用すべく近所の公園に縄跳びを持って向かいました。いつでも跳べるように、当時は常にカバンに入れて持ち歩いていたのです。
公園には私の他に人はおらず、日が沈む頃合で少し寂しい雰囲気でしたが、トレーニングは黙々と一人集中してやりたい私には好都合でした。軽く柔軟体操をしてからスタート。普通に跳ぶのに加え後ろ跳びや二重跳びを交えながら順調にメニューをこなしていました。少し風も吹いていて気持ち良かったです。私の前方三メートルくらいの距離にペットボトルのフィルム(正式名称わかりませんが商品名が書いてあるやつ)が風に飛ばされて来ました。ゴミ棄てんなやと思って見ているとフィルムはくるんと丸まりました。縄跳びの風圧でどっか飛んで行くだろうと思っているとフィルムは丸まったまま私の周りを回転しはじめました。「なんで風圧でどっか行かんの、つか今風吹いてる?」私の疑問そっちのけでフィルムは周りを回転し続けます。回転のスピードも徐々に速くなっていきます。気のせいか私を中心に回転するフィルムの円も小さくなっているようでした。「いや気のせいじゃない!さっきはあの石よ外側だったのに今は内側回ってる!」明らかに異常事態です。ペラペラの軽いペットボトルのフィルムが縄跳びの風圧に負けることなく私の周り回転し、かつ距離を詰めてくるのです。言いようのない気持ち悪さに、私は縄跳びを中断して祖母の家にダッシュで逃げ込みました。家には仕事を終えた従姉の姉ちゃんたちが来ていました。早速今起きたことを祖母、母、弟、姉ちゃんたちに報告すると、そんなことあるわけないと誰も信じてくれません。私もムキになって「くだらん嘘なんかつかんわ!」と言うとそれなら見に行こうと弟と姉ちゃんたちを連れて公園に向かいました。
公園に着くとフィルムはすぐに見つかりました。丸まっておらず伸びきった状態で。こっちが手を加えてやると丸まるのですがすぐに伸びた状態に戻ってしまいます。「いやさっきは勝手に丸まって、そのまま俺の周りをぐるぐる回転したんだって!縄跳びしとったけど風圧なんか関係なく廻ったんだって!」私の必死の説明に納得したのか相手をするのが面倒くさくなったのか、姉ちゃんたちは「世の中不思議なことがあるからね。もう花火始まるし家に戻るよ。」と言って帰ってしまいました。その際にフィルムはゴミ箱に捨てて。
結局なんだったのかわかりませんが、みなさんも一人の公園で夕暮れに縄跳びする時は気をつけてください。
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