写メ

 今から十年以上前、大学一回生の夏の出来事です。


 蒸し暑い夏の夜でした。私は今思えばなんであんなとこに住んでいたんだっていうくらいぼろいアパートの部屋でテレビを見ながらゴロゴロしていました。そこに関西の大学に進学した高校時代の友人Tから電話がかかってきました。

 「やばい、心霊写真とれた!今からメールするから見て。そういうの詳しいだろ、どうしたらいいか教えて。」

 いや別に詳しくないから、そりゃ高校時代には怪談話したりしたけど、霊感もなんもない素人だから、怖いから送るのやめてくれ、と断ったのですが私の話を聞かずにTは電話を切ってしまいました。すぐにメールの受信を知らせる着信音が響きます。

 まじで送ってきやがったあの野郎、と怒りを覚えますが、送られてきものはしょうがありません。人間不思議なものでやってはダメなことをやってしまいたくなります。私も怖いし見たくないという思いはあったのですがついついメールを開き、添付されていた写真を見てしまいました。

 写真には二人の若い男性が写っていました。電車の座席に座り、缶ビールを片手に笑顔でピースしていました。うわっ調子こいてんな、絶対仲良くなれんタイプの奴らだと思いました。でどこが心霊写真なんだともう一度よく見るとわかりました。手前の男性の膝の上に白いナニカが写っていました。よく目をこらしてみると、中年男性の顔に見えます、しかもその表情は怒りをあらわにしていました。うわっマジモンじゃねぇか、テレビで見るやつよりハッキリ見えるじゃねぇか!こんなもん送ってくんなやくそぼけが!

 恐怖と苛立ちを覚えた私はTに文句を言うべく電話をかけるため、メール画面を閉じようと電源ボタン押しました。するといきなり黒い画面に、電源が落ちてしまいました。電源ボタンの長押しで電源を落とすことができますが、一回一瞬押したぐらいでは通常電源は落ちません。何でやねん、まだ買って一年経ってないぞと思いながら、電源ボタンを長押しして復帰させようとしますが、いくら押し続けても復帰しません。おいおい、おかしいだろうと諦めずに操作を続けていたところ、ふと頭によぎることがありました。「心霊スポットに行くとカメラや音声等の機器に異常が発生することがある」ということです。これまさにそうじゃねぇか!寒気が全身に走りました。一人でいることに恐怖を感じ、隣の部屋に住む友人のKのところに行きました。鍵がかかってないのを幸いに寝ていたKをたたき起こし、事情を説明、寝起きで機嫌が悪く半信半疑だったものの電源の入らないを携帯電話を見せると一応は信じてくれました。携帯の方も一度バッテリーを抜き差ししてみろとアドバイスをくれ、実施してみると見事復活。Kにも問題の写真を見せると、「うわっおっさんの顔が見えるっ」とドン引き、写真を転送してやろうかと言うと本気の拒絶をされました。

 その後はTに危ないものを送ってくるな、携帯に異常も発生したし多分本物だから気をつけろと電話をして、一人でいることが恐かったのでKの部屋で寝ました。

 翌日、気持ち悪かったので携帯ショップに行き機種変しました。学生には痛い出費でした。

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