122冊目 オタクの教養

 どうも、吾輩です。

 オタク暮らしも長くなってくると、いろんなものに詳しくなってきます。


 好きなものについてもっと知りたい。

 そう思って詳しく調べた結果、「好きなもの」の周辺事情にまで詳しくなってしまう場合が多々ある。

 お船のゲームから当時の軍隊事情に精通する人あり、刀のゲームから武将や剣士に詳しくなる人あり。スポーツものなら、そのスポーツを趣味にしてしまった人の話も聞く。

 自ら調べようとしなくても、専門的な題材を扱う作品を好きになったら、その分野は嫌でも詳しくなるだろう。ただ単にヒロインが好みだから読み始めただけであっても、ストーリーを完全にシャットアウトすることなどないだろうから。

 で、ひどい場合には作品そのものより周辺事情のほうが長い付き合いの趣味になったりするのだ。

 そして、また違う、でも一部共通する背景を持つ作品に出合った時、元ネタがわかってうれしい。


 例えばファンタジーが好きな人なら、ユニコーンとかドラゴンとか言えばすぐに姿かたちをイメージできるだろう。それのマニアックになったバージョンと思ってもらえればいい。


 吾輩の例を出そう。

 12,3歳の時だ。当時の吾輩はすでにドラキュラ伯の洗礼を受けていて、子供向け翻案ながらも海外の名作ホラーをいくつか読み、また現行のファンタジー児童書も大好きだった。ハリー・ポッターやダレン・シャンがぶいぶい言わせていたころである。

 もっと面白い本を読みたい。しかし、やみくもに探すだけでは見当たらない。悩んでいた吾輩が出会った1冊の本。


 その名も「ファンタジーノベルズガイド」である。


 古典・現代作品、洋の東西を問わず様々なファンタジー作品が紹介されている。タイトルや作者はもちろん、これを読めばみどころも良くわかる。この系統の本を複数読んだ結果、吾輩の頭の中には「タイトルとあらすじだけ知っている、いつか読みたい面白そうな小説」のリストが蓄えられた。昔の話なので大部分は忘れてしまったが、ちょっとしたきっかけで思い出すこともある。


 何を言いたいのかというと、マイナーなファンタジー作品のタイトルやキーポイントを出されると「あれね!」と反応してしまうのである。

 ドラゴンはラベンダー色だし、消防士は勇敢だが眠くて死にそうだし、ハイアイアイ諸島には鼻行類が生息している。


 顕著な例がひとつある。このエッセイでも以前さらっと書いた話だが、だいぶ間が開いているのでまるっと書こう。

 現在アニメ放送されている「からくりサーカス」を、一時期友人に熱烈プッシュされていた。面白そうだと思ってはいたが、読むには至らない日々が数日過ぎたころ、友人から「こんなキャラもいるよ」という説明が画像付きで飛んできた。

 吾輩は「彼、何巻から出る?」と返信して、答えも待たず漫画喫茶に飛び込んだ。顔が好みだったというのも大きいが、何よりその設定と名前からすぐさま元ネタを拾ったことによる。あんなマイナー作品を元ネタに持ってくるとは! それとも吾輩が無知なだけで、一部界隈では有名作品なのか?


 キャラクターの名はドクトル・ラーオ。

 元ネタはまず間違いなく「ラーオ博士のサーカス」!


 名前だけなら偶然の一致という可能性もある。古典のほうのラーオ博士は中国人だし(※)。しかしドクトルの操る幻獣の類は、博士の天幕にいたものばかりだ。なによりサーカスというところが引っかかる。

 漫画喫茶に通い詰めてラーオ戦を読んだその日に、吾輩はAamazonで「ラーオ博士のサーカス」を注文した。すっかり読書無精になっていた吾輩が、こんな理由で新しい本を買うことになろうとは。

 本は期待を超えて面白かった。


 困っているのは、「博士」を読んでもすべて「ドクトル」の風貌で脳内再生されることと、目的にたどり着いた満足感によって漫画を読み切っていないことである。


※ 中国人だし

 なので漢字で書くと「老先生」となる。

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