Program12. それから。
「おはよ、
修学旅行はもう随分前のこと。
年明け頃からこの地域を訪れている寒波のせいですっかり寒くなってしまった朝の通学路で、後ろから「どーん」と軽い声を上げながら体当たり?をしてきた
「んー、そうだね」
「あれ? 何か普通の反応してる。すっごい寒くない?」
ガタガタ震えている由梨は可哀想だけど、うん。さすがにスカートの中生足じゃ寒いって思わなかったのかな? 今までどうやって過ごしてきたのか気になる。マフラーの巻き方もこだわっているみたいで、だいぶ隙間が……。
絶対に寒いよね、それ。
そう思いながら由梨にかける言葉を探していると、後ろから聞き慣れた少し低い声が軽やかな笑い声と混じって聞こえた。振り返った先には案の
「由梨の格好が寒いんじゃないの?」
「あー、容赦ないなーほんとに。
「それで風邪ひいて洟垂らしてたら可愛さ半減どころじゃないぞ~」
「うぅ」
「そうだよ、由梨? あとで大変なのは由梨だし」
とりあえず今は震えている由梨を何とかしたいけど、さすがに今身に着けているものをあげたりはできないしなぁ……私が凍えてしまう。
「まっ、ならくっついて登校するしかないね」
ニヤリ、そんな擬態語が似合う笑みで御影さんがいきなりそう提案してきた。
「えっ」
「それだ!」
漫画だったら目がキラッと光ってたんじゃないか、っていう笑顔で、由梨はすぐに私の腕にくっついてきた。その姿がどこか猫っぽくて思わず頬が緩みそうになったけど、いや、今は通学路だし。
少しずつ込み上げてくる恥ずかしさと由梨の温かさの板挟み状態になりながら登校して、
ふとそう思ったら、こうしていられる時間がとても貴重なものに思えたんだ。
「――ゎ、おーい、
「…………、」
「おぉ、起きた~。そろそろ昼休憩終わるよ? 行こ?」
目の前で優しい笑みを浮かべる先輩について、仮眠室を出る。よし、午後ももうひと頑張りだ。デスクの上にあるそれを見て、気力を充填する。
「あれ、それ懐かしい。えっと……、
隣のデスクに座る
「あっ、伊藤さんも好きですか?」
「わたしもそうだし、あや――じゃなくて、
うんうん、と考えに耽るような頷きを何度か繰り返して、伊藤さんは仕事に戻った。私は徐々に昼休憩の空気が消えていく室内で、仕事に戻る前にもうひと撫でする。
あの年の春休みに集まって行ったゲーセンでとった、手頃な大きさのぬいぐるみ。由梨も喜んでくれてたっけ。
毎日大変だけど、こういう思い出が背中を押してくれることもあるんだね。
あの頃みたいに毎日4人揃うことはそうないけど、あれから数年経ってもあの日々の思い出は色褪せないで残ってくれている。
思い出と、新しい出会いと。
そういうのがバランスよく入り交ざっている世界の中で、私は今日も生きている。
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