第5話 やっぱり清楚系女子は黒髪ロング

目を覚ますとそこには白い天井。

俺が気を失っている間に誰かが運んでくれたらしい。

そしてここはたぶん保健室だ。それか異世界。

ラノベ展開なら横を向けば美少女が看病に疲れて寝ているという展開なのだが

ちらっ

まぁ当然のごとく隣には美少女どころか保健室の先生もいない。

いや、せめて保健室の先生はいるべきだろ

職務放棄するなよ

うちの保健室の先生は見た目はマフィアだが中身は乙女というこれまた変わった

先生なのだ。

俺たち生徒は先生を『マフィア先生』と呼んでいる。

本人曰く呼ばれて欲しくないらしいが見た目が見た目だから仕方がない。

なんでスキンヘッドにしたの?マフィア先生。

それにしても

「ハァー・・まさか女装趣味の変態だったとは・・」

現実は残酷である。

ボクっ娘美少女が実は男でしかも女装趣味の変態。

ヒロインを見つけたと思ったのに・・思ったのに!

「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」

俺は頭を抱えながら唸った。

「とりあえず教室に戻るか・・」

時計を見ると3限目の中盤あたりの時間だった。

今から授業受けるのもめんどくさいしこのまま寝とくか

俺は3限を自主休講することにした。

静かな保健室は時計の針が刻む音だけが響く。

静かだ・・

こんなにも静かだと急に奇声をあげたりとかしたくなるんだよなー

それか妄想ごっこ

「暇だし異世界転生妄想でもするか」


※ここからは妄想です


ここは現代に似た異世界。ヘングリー

コンビニもあれば高いビルもある

俺がここが異世界だと気付いたのは最近のことだ。

決め手になったのは俺の隣で寝ているこいつ

獣人のネオ。

頭には俺たちの世界でいう猫に似た耳が生えており、お尻には同じく尻尾が生えている。

初めはにわかには信じがたかったのだが、こいつと時間を共にしているうちに

信じれた。

そして俺がなぜ今この廃墟となった高校の保健室で寝ているかというと

それはネオが負傷した俺をここまで運んできてくれたからなのだ。

俺はそっと優しく隣で疲れたからなのか眠っているネオの頭をそっと撫でた。

「ありがとうな」

俺は今こいつとこの世界。ヘングリーを救うために戦っている。

一般人の俺に何もできるはずはないと思っていたが、この世界に来てから俺に

特殊な能力が目覚めた。

その特殊な能力は珍しい能力らしく、ネオ曰くこの世界ではA級の能力だとか

俺はこの能力を使って数々の敵を倒してきた。

そしてこの高校にいる理由はその敵がここに現れたという情報を聞いたからだ。

俺は少し調子に乗っていたのかもしれない。

特別な能力を手に入れ、なんでもできる気がしていた。

けどそう甘くはなかった。

今回俺たちの前に現れた敵はS級。正直俺たちの力では倒せない敵だ。

だが俺は考えなしに突っ走ってしまった。

そのせいでこいつに心配をかけてしまった。

「ダメだな、俺」

俺はネオの頭を撫でながら悔しさを噛み締めた。

「クソ!俺は本当にダメなやつだ!」

すまないネオ。俺にはやっぱり

「そんなことないよ」

「!」

ネオが顔を起こし俺を見ていた。

「悠は全然ダメじゃない。私はあなたのことを信じているから」

「ネオ・・」

ごめんなネオ。弱気を吐いてしまって

お前が一番つらいのにな・・

俺は涙ぐんだ目をこすりまたネオの頭を撫でた

「ありがとうなネオ。もう大丈夫だ」

俺はベッドから体を起こし、服を着た。

「よし、行くか。世界を救いに!」

俺が保健室から出ようとしたところでものすごい轟音が二階の方から聞こえてきた。

向こうもお待ちのようだしな

「行くか!ネオ」

「うん」

俺は保健室のドアを勢い良く開けた。


「だ、大丈夫ですか?」

「うおぅ!?」

保健室のドアを開けるとそこには黒髪の女子がいた。

※現実に戻ってきました


「3限が終わったので様子を見に・・もう大丈夫っぽいですね」

「・・はい。」

おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!

なんてタイミングで来るんだこの女子は!

いや、俺も悪いよ?いい歳して妄想にふけっていた俺も悪いけどさ

ノックするとかあるわけじゃん。なにもせずに扉の前にいたってことは俺の妄想を聞いてたってことだよね?それ盗み聞きっていう犯罪だからね?

許されることじゃないから

「と、ところであなたは・・?」

「え!同じクラスなのに知らないんですか!」

「あ、はい。すみません・・」

その黒髪清楚系女子は、はぁーとため息を吐くと俺に対し丁寧に自己紹介してくれた。

「私の名前は喜多川穂花。あなたと同じクラスで保健委員です!」

あ、だから様子を見に来たのね

「あ、そうだったのか、まぁ来てくれてありがとうな。もう大丈夫だ」

「なら良かったです」

二人の間に沈黙が流れた。

俺こういう空気苦手なんだよな

「じゃ、じゃあ俺は先に教室に戻るから」

俺がベッドから立ち上がり保健室のドアに手をかけた時だった

「待ってください!」

穂花の声が俺の足を止めた。

「な、なにか」

なんだよ!

おれは早くこの空気から出たいんだよ!

空気を読め!モブ!

「あなたにお話したいことがあります。放課後教室で待っています」

「へ?」

この後に彼女から話されることを聞いて俺は戸惑いを隠しきれなかった。


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