第3話 モブ子じゃないです。

モブ子と出会いここから俺の話が進み始める。

なんて、そんな都合のいい物語じゃないのが俺の人生(ストーリー)である。

あの一件以来モブ子とは会うことはなかった。

いや、正確には見かけるのだが近づきにくいのだ。

だって事故とはいえ女性の二つの膨らみを触ったんだぜ?そりゃあ気まずいよ

みんなだって万が一の確率でそんなことが起きてしまったら次の日その女の子に

声かけれるか?もし声をかけれるなら君は勇者だ。死に戻りだって恐くないさ

でもあの時あいつは俺に向かってこう言ったのだ

『私をあなたの物語の登場人物にしなさい』と

だが向こうからの接触はなし

やはり怒っているのだろうか

とは言え俺の物語の鍵(キー)は絶対あいつなのだ。どうにかして謝ってあいつを利用してラノベ主人公のようなハーレムを作るのだ。俺は絶対何もしない。

「クズねぇ」

「うわ!」

急に後ろから声をかけられ驚いた。別にクズという言葉が図星だったからとかではない。

「なんだネエさんか、驚かすなよ」

「驚かすなじゃないわよ、あんた心の声が口から漏れてるわよぉ」

おっとついつい昔からの癖で独り言が出てしまった。

もう高校生なんだし直さなきゃな

根暗な友達いないぼっち主人公と思われてしまう。

いかんいかん

「で、なんかようかネエさん。俺は今忙しいのだが」

「忙しいってあんたね、廊下の角で女子高生を凝視している息遣いが荒い男が

いたら誰でも声かけるわよ。警察的な意味で」

「確かに声をかけるな、もしそんな男がいたら俺が捕まえて生徒指導の先生の所へ連れて行くとしよう」

「ならわたしもそうするわ」

ネエさんがそう言うと俺の腹の辺りに手を回し、軽々と持ち上げた。

「ちょ!ネエさん!?」

「危ない人は生徒指導室に行きましょうね〜」

ネエさんがスタスタと歩き出した。

「ちょ!まっ!」

ネエさんは御構い無しである。オカマだけに

お、今のうまかったな

って

じゃなくて!この人どんだけ力つよいんだよ!暴れてもびくともしないのだが!

「ね、ネエさん!話を聞いてくれ!」

「あんたの話は1分1秒が無駄なのよ」

ひでぇ!

かくなるうえは

「今度流星くん紹介するから!」

「話を聞きましょう」


もうヤダァこのオネエ・・



ちなみに流星くんとは名前の如く『流星』のように突如現れた謎のイケメン転校生である。だが超能力は使えないらしい

すまない流星くん。こんどハーゲン○ッツ奢るから

俺はネエさんにこの前の出来事を事細かく説明した。そしてモブ子を利用して

ラノベ主人公になろうとしていることも

俺はなにもしない

「なるほどね、大体わかったわ」

「まぁそういうことだ」

「はぁー、前も言ったけど何も努力せずに何かを得ようなんて虫が良すぎるのよあんた」

「だがラノベでは主人公の周りにはいつのまにか美少女たちが集まる。それは主人公の特殊能力!一級フラグ建築士!俺もそれさえ習得すればなにも努力せずとも周りには美少女たちが!」

「それはあくまでフィk」

「それ以上はいけない」

そういつだって現実とは残酷なものなのである。


「で、どうやって声をかけてあの子と仲直りする気?」

「ふっ、まかせておけ。ラノベオタクの知識を活用する日が来たぜ」

そう。ラノベ主人公も初めから特殊能力もちではないのだ。

大体の主人公たちはいろんな美少女と出会いそこから能力に目覚め始める。

すなわち初めは俺と同じ一般人なのだ。こうゆうシーンもラノベではよくある。

それ通りにやればあんなモブ子一発だ。

「よ、よし。いくぞ」

俺はこれまでにないくらいの汗をかき、壊れかけのロボのようにキレの悪い動きをしながらモブ子に向かい一直線に歩いた。

にしてもあいつずっと一人だな、友達といるところ見たことないぞ

廊下の窓際でたたずむ黒髪ショートの女の子。その横顔は元からなのかそれとも理由があるのかどこか悲しそうだった。

俺はそんなやつに今からKY(空気読めない)な行動をするのだ。

胸を触ってごめんなさいって?

いや、胸には触れずソフトにかつシンプルに謝ろう。

そうだな、こんな感じで

『よぉ、この間は悪かったな。今度飯でも奢るよ』

よし、いい感じだ。ラノベの主人公も言いそうなセリフだな

モブ子までの距離3メートル近く。よし、声をかけるぞ!

「よ、よぉ・・」

モブ子は俺のほうを向いた。その顔は窓際でたたづむ悲しげな顔をした女の子そのままだった。

あれ?俺なんて謝ろうとしてたんだっけ?

やべーさっきまでは覚えてたのにいざ本人を目の前にしたら忘れたー

こ、こうなったらなるようになれ!

「こ、この間はおっぱい触って悪かったな。今度飯でも奢るよ」

やっちまったー出してはいけない言葉を最悪の形で出してしまったー

めっちゃ見てるもん。モブ子俺のことめっちゃ見てるもん。

あーこれはまた蹴られるな、次はどこを蹴られるのだろうか

俺が少し後ずさりをし、顔面蒼白になっていると予想だにしないことが起きた。

「ぷっ、あはははははは!」

何が起きた?モブ子がすごく笑っているのだが

「す、すみません、あなたがあまりにも真剣な顔でくだらないことを言うものですからつい・・くっ、あはははは!」

どうやら俺は蹴られなくて済むらしい。



モブ子が息を整えるのに3分弱。

俺はその間リア充に対し滅びの呪文を唱えていた。

『バルス!』

モブ子は一呼吸を置き、俺に顔を向けた。

「取り乱してしまいすみませんでした。ところであなたがわたしに何の用でしょうか」

そうだった。このモブ子が予想だにしない行動をしたから本来の目的を忘れるところだった。

しかしなんて伝える。急に『俺が美少女に囲まれる日々を過ごすために俺に利用されろ!』とか、『お前は俺の大いなる野望の為の贄となるのだ!」とか・・

もしくは、『ま、またおっぱい触らせてくれないかなぁ・・ハァハァ・・』

最後のはダメだ!絶対に!

なんて伝えれば

俺が言葉に詰まっているとネエさんが俺の近くに寄ってきて耳打ちしてきた。

「は!?いやそんなこと言っても」

「いいから♪いいから♪」

俺はモブ子の目をジッと見てネエさんに聞いた言葉を一言一句そのまま言った

「モブ子!俺と友達になってくれ!」

モブ子はその言葉を聞いて大きな目をパチクリさせた。何を言っているんだとでも言いたげな

そしてうつむき黙り込んでしまった。

や、やっぱりダメか?

「・・じゃないです」

小声で何か聞こえてきた。

「え?な、なんて?」

モブ子は顔を上げて俺の目をまっすぐに見て言った。

「モブ子じゃないです。わたしの名前は霧咲乙女です」

顔を上げたモブ子の顔は心なしか少し表情が柔らかい気がした。




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