7話ーお別れ、そして、未来へー

なんで、誰もわかってくれないんだ!なんで、俺はこんなに弱いんだ!わかってる。全部、自分が悪いことくらいわかっている。でも、どうしようもないだろう!どうしていいかわからないだ!全部全部、わからないだ!

俺は、葵と別れた後、一人暮らしをしていた。両親に言ったら二つ返事で、学校近くの一件屋をくれた。すぐに引っ越してそれからずっと俺は、ここで、一人ベットで自問自答して泣いていた。何が変わるわけでもない、全くの無駄だとも知っていながら。

何をしていいのかわからない。本当に情け無い。こんな俺が、金持ちの家に転がり込んだだけのクズな俺が、あの時なんて声をかけてあげればよかったのか全然わからない。

人はネガテイブになるとどんどん落ちていくっていうけど、本当だな。

俺は、何度かと思ったが、勇気が出なかった。やりたいことも、やり残したことももうないのに。なんで、俺は生にすがりついているんだ。

卵が落ちて割れしまって、そこから白身と黄身が漏れ出てきて、全てがごっちゃまぜになったかのように、酷く荒んでいた。

寝ても起きてもやっぱり、俺は何も変わらない。変わるどころかどんどん落ちていく。心もどんどんすり減っていく。まるでオズの魔法使にでてくるブリキの人形みたいだな。心がまるで削ぎ落ちたかのようにどんどん沈んでいく。

それが、一週間程だった時には、幻聴が聞こえてきた。

『心がいらないなら、僕がもらおう』っと。そして、『何心配は、いらない、君の心は、僕が有効的に使うよ。例えば、心が欲しい誰かにとかね』とからかうように言ってきた。それは、天使なのか悪魔なのかわからなかった。

だがそれでもいいやと思えてしまった。

そしてーーー俺は意識不明ので病院に運ばれた。

原因不明、何か突発的なものだったらしい。


俺は、夢の中にいた。

何もない白い世界だった。周りには、何もなく。誰もいない。

『ねぇ、今君はどんな感じ?心を失ってどんな気分?』

聞かれていることの意味が、全くわからなかった。心を失うってなんだ?

『君は願ったじゃないか。心を捧げるって』

願ったのか、俺が。

『そうだよ。だから、今、心を失って悲しんで人を探しているんだ。これがなかなか見つからないんだよね。何?後悔しちゃった?』

後悔しているのか?俺は?

『わからないの?そうか、君には、もう心がなかったね。不自由かい?』

いや、わからない。でも、もう何も考えなくてもう済みそうだ。

『そうかい。君はそうやって何もかも、失うまで逃げるんだね』

お前は、何が言いたんだ。心をくれと言ったり。逃げるなと言ったり。

『別に、何かを言いたいわけでもなんでもない。ただ、退屈なんだよ。僕は、君達程何かを考えたりしないし、何か欲したりしない』

気楽でいいな。

『そうかい?本当にそれは、いいことなのかな?君にとって?』

わからない。でもこのまま、ここにいればもう何もしなくていいって思うと楽なのかもな。

『ふーん。君がそれでいいなら、いいけど。ここに長くいると、戻れなくなってしまうよ』

なぁ、お前は、どこにいるんだ。ずっと姿を現さないけど。

『僕は、どこにもいないよ』

じゃあ、どうやって俺と話してんだ?

『うーん。難しい質問だね。どうやってか。君は僕のことを見たいか?』

話をしているからな、そりゃ、気になるな。

『そうかい。でも、残念。本当に僕はどこにも存在できないんだ。君みたいに現世への生への希望を失った相手に、突然声をかけるくらいにしかね』

そいうもんか。

『そういうもんだよ。でも、君はまだ何かを信じたいんじゃないかな?』

俺が?

『うん。君が!』

何を、今更と鼻で笑いたかったがそれができなかった。

『やっぱりね。君の心はとっていないよ。あまりにも、汚れていたからね。それじゃあ、他の人に渡せないんだよ』

心に穢れってものがあるのか?

『あるよ!憎しみ、後悔、悲しみなんかは、穢れやすいかな』

なんで、心が穢れるんだ?

『簡単だよ。全てを自分のせいだって決めつけ、そして、全てを己でどうにかしようものなら、他に行き場のなかったものがどんどん侵食していき、そして、全部食べちゃっうんだよ心を。そうして、穢れた心の完成ってわけだよ』

治す方法とかって無いのか?

『あるよ、話を聞いてあげて、行き場の失った感情を解き放つんだよ!そうすれば、侵食は収まって、時期に穢れを治してくれる』

時間が全てを解決してくれるとは思わないんだが?

『そうだね。結果として、君はここにきてしまった。ここより先に行けば、心は、浄化されるけど、本当に君は戻れなくなってしまうよ?』

浄化されれば誰かの役に立つんだろ?

『やっぱり、君はどこか優しいね。それを自分のことに使えばいいのに。本当に不器用だね』

俺も、そう思うよ。

一つの扉が目の前に現れた。

『これを通れば、君は全てを忘れられる』

真っ白で、何の飾りっ気のない扉がそこに立っていた。

俺は、そこに手をかけた瞬間。彼の声以外にも何か聞こえた。


「戻ってきてよ!芽依!」

が聞こえてきた。

「芽依君、あの時は、ごめん。一方的に帰ってしまってごめん。だから、謝らせて、お願い」

今度は、葵の声だった。最後にあった時のことを後悔してるような感じだった。

謝るのは、俺の方なのに。

「芽依くん!もう、嫌だよ!君を二度も失うなんて!お願いだから目を覚ましてよ!」

最後に、昴の声がした。

そうか、俺は前にもここに来たことがあっんだな?

『少しばかり、記憶思い出してくれたみたいだね?』

あの事故の時か?

『そうだよ。ここは、現世と神の世界の境界線だよ』

お前は、神様なのか?

『いんや。ただの使いさ。こう見えてもって、見えないか。コキ使われて疲れるんだよ』

使いと言う彼の言葉は、本当に疲れているみたいだ。

俺は、この扉をくぐればどうなるんだ?

疑問に思ったことを聞いてみた。

『愚問だね。消滅だよ。この世界は、輪廻転生って言って何回でも生き返れる。だけど、その扉を潜れば、その輪から抜けてしまうんだ。だから、次、死んでしまったら、世界から消えてなくなる。無に還るんだ』

そうか。

扉にかけていた手に少し力を込めた。

『おいおい、本当に通る気か!消滅しちまうんだぞ!さっき聞こえてた、嬢ちゃん達の声ももう聞こえなくなっちまうんだぞ!それでいいのか!』

珍しく、彼が声を荒げた。

俺は、彼女達に何もしてあげられない。また、いつここに来るかもわからない。それなら、もう、終わらせた方が彼女達のためだ。

『神様ごめん。もう無理。まさか、ここまでとは思っても見なかった。十年前の少年があの時以上の絶望してまったなんて。僕が、あの時、君を無理矢理現世に返してしまったから、こんなことになってしまったんだね』

どう言うこと?

『簡単な話だ。昔のお前も同じことを言って扉を開けようとした。だから、君の記憶を、少し奪って現世に戻したんだよ。だけど、君を傷つけただけだったみたいだね。神様の言う通りだったよ。未熟な僕何が君を助けたばかりに、君を傷つけた。本当にごめん』

彼は、ずっと謝っていた。

だけど、俺は


それから、数年が経った今でも、一ノ瀬 芽依という存在がいなくなって悲しむ声が続いていた。

彩芽、葵、昴の三人は、毎日欠かさず芽依の墓石の前で、今日は何があったのかを話していた。



『ずっと君達の側にいるよ。何があっても。』



「なんか、芽依の声を久しぶりに聞いた気がしたけど、おかしいよね、あれから何年も経ってるのに」

私ー篠崎 彩芽はそんなことを思ってしまった。そんなことないってわかってるのに。

どこかで、私達三人を優しく見ている彼を感じてしまったから。

いつまでも、あなたをずっと愛しています。

多分、それが、私達四人が知りたかった本物だと思うから。

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