6話ー初デートそして後悔ー
次の日は、葵とデートをした。
待ち合わせは十時だったので、それより十五分程早めについた。
渋谷のハチ公前。
なんてベタベタの待ち合わせなんだろう。これ以上ないってくらいにだ。しょうがないだろ、だって俺デートなんて始めてなんだから!
そうこう、考えているうちに時間になっていた。葵は時間ぴったしにやってきた。
「今日は、よろしく。芽依君」
「こちらこそ、お手柔らかに」
今日の葵は、黒いデニムに薄手の淡い桃色のセーターを着ていた。いかにも、ラフって格好だった。
それでも彼女は、すごく絵になっていた。
俺はといえば、青いデニムに白いシャツ、その上に黒いジャケットと地味だった。
「すごく可愛いよ。葵」
「芽依君だってカッコいいよ」
葵は、少し照れたように言ってきた。
「お世辞でも嬉しいよ。さっ行こ!ってなるかーー!これは、どういうことだ!」
「さー?私には、さっぱり。貴方のご両親に聞いたら全てわかるわよ」
「そうだろうね!」
俺は、親に電話をかけた。ワンコールですぐに出た。
「父さん?これどういうこと?」
『息子のデートだ、無粋な者が来ないように一帯を封鎖した』
「いやいや、そんなことしなくていいよ!」
『でも、何かあっては、困るだろ?』
「そうかも、しれないけど!」
『それじゃあ楽しくやれよ!』
ツーーーー、、、、
「いったい幾ら使ったんだよ」
「貴方の実家なら、そんなに困らないでしよ」
なんでもないかのように彼女は、そう言い切った。
「映画でも、観に行きましょ」
「葵は、よく平然としていられるな?」
「よくあること」
葵は、そういってのけた。俺は困惑していた。これが、普通なのか?金持ちの普通ってなんだ?
「行くよ」
俺はどこか投げやりな感じで、映画館に向かった。
料金を払おうとしたら、この一帯は、全て無料でお楽しみいただけます!御曹司様!と言われた。どうやら、お店の人までもそうなのだろう。
だからなのだろう、映画の内容はまるっきり頭に入って来なかった。当たり前だ。
俺の普通は、金持ちの普通とは合わなかった。だから、集中もできなかった。
この映画は、どこか嘘ぱっちな感じがして。
葵もこんな俺に幻滅したかな?
隣を見ると、葵もこっちを見ていた。
「やっぱり、私とじゃ、つまらないみたいね」
彼女は、寂しそうに立ちあっがてで出っていっていまった。
追いかけて、何かを答えるべきだったとは、思うけど、やはり、追いかける事ができなかった。
浮かれていた自分が、いつの間にかに消えていた。
俺は、空っぽだったのかもしれないな。
この、嘘ぱっちな映画のように。
はっきり、言おう。これまで、騙し騙しやってきたが、もう限界だった。
金持ちってなんだよ?いきなり、金持ちになったからってそう簡単に今までの自分を変えられわけないだろ!
俺には、金持ちのルールなんて知らない!
常識だって知らない!
俺はいつもの、あの平穏な生活をずっとしていたかった!
なのに、なんで世界はこうも変わってしまうんだ!
俺を置いて、いつも、いつも!
あの時もそうだった。
去年までの俺、つまり中学生時代の俺は、教室の隅で本を読んでいるようなやつだった。
誰の気にも触れない。
成績は優秀でなんでもこなせる奴が青春を謳歌できるとは、そんなのは嘘ぱっちだ。
実際俺は、クラス中から疎まれた存在だった。
教師は、俺をチヤホヤするが、それが良くなかった。
教師にいい顔して媚びへつらう、ずるいやつだと噂をされた。
イジメにもあった。
両親には、迷惑はかけたくなかったので明るくしていたがな。
学校は、成績は分かるが人間関係については、まるっきりといっていいほどにザルなのだ。
だから、優秀な子は褒めて伸ばす。
その裏で、その生徒がどうなってても知らないのだ。
ーそれが、三年間続いたのだ。
だから、志望校は誰も来れない所にしたのだ。
俺が中学まで過ごしていたのは北海道なのだ。田中夫妻の実家が北海道だったてことでそこで暮らしていた。
だから、北海道から出て東京の高校に進学したのだ。
新規一転、心を切り替えてって思ったら、今度は、金持ちだからって、チヤホヤされる。
なんだよ、それ。俺のことなんて、誰も観てないじゃないか!俺は、俺だ!
だからかも、しれない。葵とのデートで、彼女を傷つけてしまったのは。俺のそんなつまない意地みたいなもので、彼女を悲しませた。
俺は、次の日から不登校になってしまった。
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