4話ー過去の話(1)ー
「はー。もう、なんか普通の青春からすごく遠のいてような感じがする」
「何を黄昏れてる?」
「?葵か。いや、なんでもない」
「私との新婚生活?」
思わず吹き出してしまった。
「なんてこと言うんだよ!」
だって、この場には、俺達二人以外にもいるのだから。
「そうよ!芽依は、私と結婚するのよ!」
「違うよ!ボクとだよね!芽依くん!」
そう捲し上げられたので、俺もつい言ってしまった。
「だぁ!俺はまだ、そんなぶっ飛んだところまで考えてない!もっと順序ってものかあるだろ!」
だが、直ぐに反撃にあった。
「人の下着を見といて?」
「私達の初めてを奪っておいて?」
「ボクの胸にさわったのに!」
三者三様の言い分を聞いた。俺ってゲスじゃね?ってちょっと待て!
「初めてってキスのことだろ⁉︎妙な言い方をするな!」
「それでも、初めては、初めてよ」
葵は、静かにそう言った。そして、ちょっとムッとした顔で俺を睨みつけた。
「それとも、オッパイ魔人の芽依君は、昴のオッパイを揉んで、昴のものになってしまったの?」
「おっ、む、胸なら!私にだってあるわよ!」
彩芽が食ってかかってきた。
昴さんはと言えば、顔を真っ赤にしながら、慌ていた。
「め、芽依くんが、ぼ、ボクのむ、胸で喜んでくれたんだ。もっと揉んでみる?芽依くん?」
頭が壊れれていた。
普段は、3歩後ろのような感じなのに、何でこういう時だけこう、積極的なんだよ!
「いや、少し落ち着けお前ら!てか、下着見られた一昨日は、避けていたのに。なんで今日は、こんなに積極的なんだよ!」
「だって!葵が!あの子が、私は平気だからこのままアピールするけど二人はもういいのね?って言ってきたから!」
「そうだよ!葵さんだけ、キミにアピールするのはずるいじゃないか!だから、ボク達は、なけなしの勇気を絞ぼってここにいるんだよ!」
「照れるから、そう言うこと本人の前で言うなよ」
俺は、思わず目をそらしてしまった。だから、なのか見えてしまった。
葵の本に栞の代わりに写真が挟んであるのを。
「なぁ、葵?お前、栞の代わりに写真なんかを挟んでいるのか?」
思わず、そのまま聞いてしまった。
「そうよ、貴方とあった初めての時に撮った写真よ」
それは、幼い時の俺に似た少年と女の子が三人写ってた写真だった。
三人の女の子は、銀髪、金髪、黒髪だった。
んん?まさかね?これって・・・。
「これって、彩芽達か?」
「固定。懐かしい。これを見ていると、未来の私達の子は絶対に可愛いと思う」
「何で、そうなる!それより、俺、この写真を撮った覚えがないんだけど?」
「芽依って、この後」
「ん。交通事故にあってる」
彩芽と葵がそんな話をしていた。
ん?事故?確かに俺は、昔、交通事故にあった事がある。
前後の記憶が曖昧になっていると、医師にも言われていた。
実害が無かった為、記憶はそのまま放置していたのだ。
「あぁ、だからか、それで記憶にないのか」
「それって、」
彩芽が、何かに気づいたように、葵と昴を手招きして、何事かを相談しだした。
「これを機に、既成事実を作るってのも手じゃない?」
「そうなると、問題は、誰かってことだよね?ボクは、絶対に譲らないよ!」
「私だって、絶対イヤよ!」
「芽依君は、私を選んでくれる。何故なら、世の男子は、いたいけな少女に弱いと聞いた。この、中で一番中身は兎も角、見た目が幼いのは私。だから勝利は確実」
って、声がデカ過ぎて聞こえてるぞ!
内緒話しの意味が、全く無いぞ!
「ちょっと待て!お前ら何言ってんだ!既成事実って本気かよ!捏造にも限度があるぞ!それよりも、そう言う話は俺のいない所で話せ!妙に生々しくて、精神的に悪い!あと葵。断言するが、俺にはそう言う趣味はない!」
何でこいつらは、見た目は超美少女なのに、頭の中がコレなんだ。
「なぁ、その。事故の時の話をもっと詳しく教えてくれないか?その時の記憶って無くて。今まで放置してきたけど、お前達と過ごした過去があるのなら、知りたいんだ」
最近では、事故にあったことすら忘れていたが、俺の背中と頭には、古い傷跡があるのだ。
今なら、少し思い出せる。
これは、あの時の事故が原因でついた怪我だと。
「別に、知らなくていいじゃない。昔のことよ」
「芽依君は、昔から、自分のことを悪く思い過ぎ。もっと人を疑ったりした方がいい」
「芽依くん!ぼ、ボクと一緒に昔のこと色々話そう?二人っきりで!」
三人は、それぞれの思いを吐露してくれた。
でもな、昴はもうちょっと二人を見習ってほしいな。
でも、すごく可愛いから、何でも許してしまいそうだ。
「昴?あんたは、もっと自重しなさいよ!何で、昴と芽依だけで話すのよ!私達も混ぜなさいよ!」
「そうよ、昴。それなら、私と芽依君の二人で話すべき」
「葵も、話を聞きなさいよ!二人でじゃなくて、皆んなで話すの!」
「彩芽、こいつら二人って、昔からこんなにマイペースだったのか?」
とりあえず、安全そうな彩芽に話を振って見た。
「そうなのよ!昔から、どいつもこいつもひとの話を聞かないでドンドン話しを進めていくのよ!」
なんか、地雷を踏んだ気がする。しかも、これって俺も入ってない?
「そんなことより、私達があったのは、十年前くらいよ」
話を無理矢理切って、葵が話始めた。
「そうそう、最初に出会った時も、芽依くんボクのこと男の子だと思って一緒にお風呂入ろうって誘ってくれたんだよね」
昴は、虚空を見据えていた。
「ごめんなさい!」
俺は、その場で土下座をしていた。
そりゃそうだろ!だって男にしか見えないだよ!服装のせいで!もっと、女子らしい服装なら直ぐ分かるけど、男装したら、わからないだろ!
それでも、二回も男子と間違えたのなら、それは、俺が前面的に悪い。いくら昔のことを覚えてないからって。
「あの時、一緒に入ったお風呂で見た芽依くんは可愛いかったな〜。だって、ボクのこと女の子だと知って、顔を真っ赤にしてて、ちょうど今と同じように土下座してたね。その時の芽依くんの小さいのが、、、」
うっとりとした目で、当時のことを語っていた。俺の思考回路って単純過ぎないか?って何を言おうとしてんだ!この痴女は!
「それ以上は、言わせないわよ!それに、それだったら私にだって芽依との思い出あるわよ!あれは、確かホラー映画を見た時だったわ。芽依と一緒のベッドで寝たわよ!」
「うん。その時はボクもいたからね」
「固定、私もいた。私の記憶が正しければ、あの時一番ビビっていたのは彩芽だった」
「あっれー?そうだっけ?おかしいな?」
彩芽は、何かを思い出そうとしていた。
逆に、葵は何かを誤魔化そうとしている。
ひょっとしたら。
「葵、お前じゃないのか?」
「何か思いだしたの⁉︎芽依くん⁉︎」
「いや」俺は、葵の目を見て「明らかに目が泳いでる」
「わ、私は幽霊なんてものは信じてない。化学的には、あらゆる実験で、怪奇現象は、化学的にできると証明しているから」
んー。葵のこういう照れてる所可愛いな。普段、無気力で無表情な分、こういう時は一層可愛く見える。だから、
「葵は、天使だな」
思わず、心の声が出てしまった。
「っふ」
葵が勝ち誇った笑みを浮かべてた。それを、恨めがましい目で二人の美少女は、目を血走せて睨んでいた。
「いや、二人も俺なんかには、もったいないくらいすごく可愛いぞ?」
「そんな、取り付くったお世辞を言われても嬉しくない!どこがいいかを言って!」
「そうだよ!ボクの魅力的な所を挙げて見て!じゃないと納得できない!」
二人は尚も、食い下がってきた。
そんなふたりを勝ち誇るように、葵は、その小さな身体で見下ろすように見ているのだった。
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