3話ー初めてのキスー

 昨日の一件以来、俺は彼女達をまともに見れなくなっていた。

 てか、当たり前だろ!

 あんな痴態を見せられて、平然と話しかけられ奴なんているのか?

 彩芽や昴も、俺と顔を合わせた途端、茹でダコのように真っ赤になって走って逃げるし。


「俺の夢にまで見た高校の青春とは違うような気がする」


 と、落ち込んで歩いていたら屋上に来ていた。


「ここで、しばらく考えるか」


 三人は、一体何を知っているんだろう?明らかに、テレビを見たから知ってるってよりは、何処かで知り合ったことがあるみたいな雰囲気だったしな。


「私達のことを考えているの?」


 不意に、後ろから声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには貯水庫の近くで体育座りをしながら本を読んでいる葵の姿があった。

 てか、また、下着が丸見えになっていた。

 今日は、ピンクのレースだった。

 って、なんの感想言ってんだよ!

 俺は慌てて、回れ右をした。


「葵⁉︎お前いたのかよ!ってか、また下着見えてるから!と言うより、俺もそうだけど授業中じゃないのかよ?」


 そう、今は授業中なのだ。

 腹痛と言い、仮病を使って校舎内を彷徨っていたのだ。


「私はもう、この学校での単位は、申し分なく取れているから授業には、でていないわ」

「え?単位?」

「そう。貴方は、確か高校からだったわね。この学園、国立鳳凰堂学園は、小学校から大学までのエスカレーターだから、小中で大学までの単位は全て取れるのよ。まぁ、貴方の行こうとしていた、庶民の学校とは違うけど」


 そうなのだ、女子校しかもお嬢様学校と一般の学校が合併したため、俺以外と言うよりは、元々その学校にいた人達、これから入学する人達は、別の学校に転校、入学することになっていたのだ。

 元々の学校より、高待遇の高校に移れると言われて、全員が納得して転校をしてくれたのだ。

 俺を除いて。知らされてなかったしなー。


「だから、私はずっとここにいるわ。だから、会いたくなったらいつでもいっしゃい。私の夫」

「なぁ?その夫っていうのどうにかならないか?俺達は、まだ結婚もしていないしさ」

「婚姻前の淑女の下着を見た、これでも不服かしら?」

「それは、悪かったけどさ」


 葵は、俺の弁解も聞かずに、貯水庫から降りて、こちらに近づいてきた。


「でも、あれは・・・」


 不幸の事故で、と言葉を発することができなかった。

 なぜなら、葵の綺麗なお顔が、その花弁にも似た綺麗な桃色の唇が俺の唇を塞いだからだ。

 そう、所謂、キスをされたのだ。


「これで、貴方は私のもの。初めては、貴方に捧げたから」


 何処までも無機質で、それでいて、圧倒されるようなそんな感じを葵に抱いてしまった。

 このまま、流されてしまってもいいような、そんな感じがした。

 たけど、ギリギリ持ち堪えた。

 何故なら、ドアの隙間からこちらを見る二人の影が見えたからだ。


「なんか、この後の展開が読めてきたな」

「同感ね、あの嫉妬狂いの二人が何をしでかすのかは、目に見えているわ」



 だから、早く私のものになればよかったのに



 葵は小さく言ったが、それどころではない。てか、これ、誤魔化しようがないじゃん!


「め〜い〜!私ともキ、接吻をしなさい!早く!」

「芽依くん、ボクにもして?」


 彩芽は、キレながら。昴は、甘えるように言ってきた。


「いや、何で二人がここにいるんだ?昨日から、ずっと避けてじゃないか?それに、授業中だろ?だからな?な?話せばわかる!話せば」


「「問答無用!」」


 二人に、押し倒されて、キスをされた。

 初めてのキスがこんなのって酷すぎるじゃないか?

 もっと、いい感じのシチュエーションにしとけば良かったって、後で後悔するぞ?

 という、俺の心の声はガン無視された。


「芽依くん、ボクなんだか、身体が熱くなってきた」


 目をトッロとして、顔を赤らめながら昴が尚もそのあとに行こうとしていたので、流石に、彩芽に止められた。

 もう、なんなんだこの展開は?結局三人の秘密を、知ることも出来ずに今日も終わっていく。

 本当に、これからの高校生活が不安で仕方が無い!

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