第5話 ■Blue-collar worker

 派遣労働者は違法残業に悩まされていた。

「我々はジーンズをこよなく愛する。縫製前のジーンズで奴らに正義がない例えを説明する」

「そのココロは?」


「ステッチさ。ステッチには、縫い目という意味以外に飾りミシンという意味がある。」

「それが何か」

「縫い目は点々としているだろう」

「はい」

「ミシンに点々で微塵」

「え?」

「裁縫前のジーンズにはステッチもない。ステッチは飾りミシン。縫い目は点々、ミシンに点々で微塵、だから、奴らに正義など微塵もない、だ」


「なるほど」

「それから」

「まだあるんですか」

「ジーンズに付けるはずだったチャックを口に付けちゃうとどうなるかな」

彼はジェスチャーをつけて説明した。

「ング、ング」

肩を動かして口を閉じる真似。

「喋れない?」

「裁縫は英語でソーイング。ングだけになったら」

「ソーイ」

「だろ。つまり相違ない。奴らに正義など微塵もないに相違ない、だ」


「こじつけっぽいですね」

「それに奴らの行為は違法さ」

「うん」

「違法さと続けて言ってみろ」

「違法さ違法さ違法さ違法さ違法さ」

「いほうさいほう裁縫裁縫裁縫……」

「……ほらな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る