12 コップ

 コップに水を入れると、溜まっていく。満杯になっても注ぐと、溢れる。


 至極当たり前のことだが、これは精神力に良く例えられる事柄。心を一杯のコップと考えてみる。注ぐ液体はストレス。


 まず、個人によって与えられているコップの大きさは違う。普通のグラスの人もいれば、ジョッキサイズの人もいるだろう。


 次に、液体を注げば溜まり、なおも注げばいずれ溢れる。とめどなく溢れて、はけ口が見つからないと唯々途方に暮れるのは当たり前のことだが、心も同じと言うと、異を唱える人がまだまだ沢山いるように感じる。意見というものは多様性があって然るべきだから追及するつもりはないが。


 液体にも種類があるだろう。ヘドロを注がれると捨てようと思ってもなかなか落ちてくれず、蔓延る。逆に、清らかな水であれば容易に捨てられる。どうでもいいストレスと、引きずるストレスがあろう、ということ。


 どういうストレスをどのように感じるかも、また個人で差がある。だから、僕がヘドロを投げつけられたと思ったことでも、相手方からすれば、キチンと捨てられる水を注いだはずだったのに、と思っていることが多い。そこで意識のずれが起きる。分かり合えないのだ。不幸だが、個人の意思というものをぶつけたら交わり、分かり合えるなんてことは幻想でしかない。どこかでズレる。それが広がり続けると、一方が壊れる。それを弱者と蔑まれる。あるいは理解されない。


 そう、私のコップは小さい。小さいからこんなことを書く。おまけに清らかな水を入れてもヘドロのように捨てられなくなってしまっている。そういう時どうすればいいのかわからなかったから、カウンセリングルームに赴き、話すだけ話した。いくらか気持ちが楽になったが、どうしていこうか、わからない。それを見つけるために、また赴くことになるだろう。ここまで来られたその一歩が大変すばらしいと言われた。それを希望にして、世界とのかかわり方を、今一度見直そうと思う。


 

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