番外編その四十二 「非殉教」

 秘書さん

今日雨きょうもあめ県の『潜伏基栗鼠蒲公英きりすたんぽぽの関連遺産』が世界遺産に登録されましたが、どういう政治的意図があるのでしょう?」


 小池さん

「我が目本の周辺諸国はこぞって、

基栗鼠蒲公英きりすたんぽぽを弾圧し、我が国を侵略しようとした目本幕府やサムライ社会に対する鉄槌が下ったのだ! ギャーハッハッハ!!』

って下品な笑い声を吐き出しているけど、こいつらは無視していいわね」


 秘書さん

「そうなんですか? てっきりこいつらがお得意のロビー活動で、今まさに総理がおっしゃった意図で工作活動をしたのかと……」


 小池さん

「そもそも今回の世界遺産登録はウネスコの脱退を表明したマメリカ、そしてトランプの置き土産といっていいわね」


 秘書さん

「……と、おっしゃいますと?」


 小池さん

「マメリカは今、テロ支援国家、さらにその国を支援するエウロパ共同体まで制裁対象にしているのよ。そしてエウロパ共同体の中心は基栗鼠蒲キリスタ教カストリック派の総本山であるバツカン市国!

 彼らは目本幕府と戦った基栗鼠蒲公英きりすたんぽぽを、洗礼していないから信者と認めていないどころか神の名を借りたテロ組織と見なして、戦死者は未だ殉教者と認めていないのよ。でもトランプは諸国に働き掛けて基栗鼠蒲公英きりすたんぽぽから受け継ぐ施設を世界遺産に登録したことでバツカン市国、カストリック派、そしてエウロパ共同体へ牽制を放ったのよ」


 秘書さん

「なるほど、

『おまえ達がテロ組織と見なした基栗鼠蒲公英きりすたんぽぽをウネスコは信者と認め、神の教えに沿った殉教者とみなしたぞ! カストリック派、そしてエウロパ共同体の奴らはどんだけ頭が固いんじゃ!』

って、国連の名を使ってトランプは怒鳴りつけたわけですか。もう何でもアリですね。さすがというか、無謀というか……。


 小池さん

「独自の文化を創って、それを何百年も受け継ぐなんて、もはや独自の宗派と言っていいわね。口先だけで金を集めて既存の箱物作って満足している新興宗派や、神の名を借りてヒヤッハーしているテロ組織には出来ないわよ」


 秘書さん

「ところで我が目本としては何をすればよろしいんでしょうか? やはり観光をアピール?」


 小池さん

「何もしなくていいわよ。亡くなった彼らの魂に安らぎが訪れるのを祈りましょう……」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る