第4話 声

りゅうとの関係は、終わることなく続いていた。

私も「一番大事なのは家族で、ここでは楽しく会話するだけ」という、りゅうの考え方に賛成だったし、二人が会うということも考えていなかった。二人は離れた所に住んでいたし、実際問題、私が家を空けることも不可能だった。ただ、この前のように、ちょっとした行き違いとか、メールより電話した方が話が通じると感じたこともあり、「電話したい」と言って私の電話番号を教えた。りゅうは、最初迷っていたようだった。


そんなある日、私は買い物の帰り道に「キバナコスモス」が咲いているのを見た。風に揺れるコスモスを動画に撮りながら、りゅうへのメッセージを入れることを思いついた。


「こんにちわ、りゅう。みなこだよ。はじめまして」


自分でもわかるくらいの、緊張した声を聞き、一人で照れ笑いをした。りゅうはどんな反応するかな?考えるだけで楽しかった。


家に帰ると早速、動画を送った。すると、りゅうから返事が…。


「みなこの緊張した声が良かったね。うれしかった、ありがとう」


「次は、りゅうの声が聞きたいな」


「今度な」


何日かして、りゅうから動画が届いた。

部屋の壁に掛かった、りゅうが撮った写真が映っていた。


「はじめまして、みなこ。りゅうです。」


初めて聞く、りゅうの声…。想像より低い声だった。りゅうだって、緊張してるみたい。私はますます、りゅうと話してみたいと思うようになった。


そんなある日、りゅうから「今なら電話できる」というメールが届いた。

「こっちも大丈夫」私が返事をすると、「非通知でかけるから…それが俺の一線だから」と言った。

少しして、私のスマホの着信音が鳴った。画面には「非通知」の文字が…。緊張の一瞬だった。

「もしもし…」

「もしもし」

この前聞いたりゅうの声…。あまりの緊張で、何を話したかよく覚えていない。でも、昔から知ってる友達のように、楽しく話せた。そして、私の耳には「みなこ」と呼ぶ、りゅうの低い声だけが残っていた。



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