第3話 いついつまでも
それまでの私は、一人で義母の介護をして、寂しさや孤独を感じながらもやるべきことをして、毎日を過ごしてきた。そうしていつの間にか、心の壁が厚くなって何も感じなくなっていたのかもしれない。そんな時に出会ったりゅうは、前向きな考え方の持ち主で、いろんな話をしてくれた。自身の過去、仕事に対する気持ち…。りゅうとの会話で、私の気持ちにも変化が現れ、自分自身を取り戻していった。りゅうの前では、本当の自分になれたし、甘えさせてもくれた。
そんな時、単身赴任している夫が週末に帰ってくることになった。私のことは、詳しく話してなかったので、週末話せないことをりゅうに伝えなければいけなかった。
「夜…話せないな」
「ん?これからずっと?俺、昼間は仕事だし…」
「違うよ、週末だけ…」
………
りゅうから返信がなかった。
どうしたんだろう…怒ったのかな…
私は、自分のことをりゅうに話さなくてはいけないと思った。ある覚悟をもって…。
「りゅう…私のことだけど、私には夫、子供もいる主婦です。そして、義母の介護をしています。夫は単身赴任中で平日はいないの。だから、りゅうとも毎日話せる。その夫が、今週末帰ってくるんだ。そんな状況だから、りゅうとは連絡できない。お義母さんのこともしっかりやらなきゃ…って思ってる。今まで、ありがとう。楽しかった。」
このメールを見て、りゅうが私との関係を終わりにしたいと言うなら、それでもいいと思っていた。
りゅうのおかげで、毎日楽しかった。私の考え方もだいぶ前向きに変わってきたように思う。それだけでいいじゃないか…こんな、ふわふわした関係がいつまでも続くわけがないこともわかってる。ふと涙がこぼれていた。泣くつもりなんてなかったのに…こんなにも私の中で、りゅうが大事な存在になっていたなんて、自分でも気がつかなかった。
朝になると、りゅうからの返信がきていた。
「ごめん。昨日は寝落ちしちゃって…。
いろいろ話してくれてありがとう。みなこの状況はよくわかった。結論から言うと、このまま続けよう。どう考えても、みなこの心に隙間ができる。自分を支えきれない時がくる。そんな時、俺とのことを1日の、1時間の半分以上を前向きに楽しく考えられる材料にすればいい。バイバイはこのタイミングではなく、二人が飽きた時かな。とりあえず、旦那さんと仲良くして。」
そして、その日のりゅうの写真は…海辺を歩くカップル。タイトルは「いついつまでも」
私はスマホの画面を見つめ、泣いていた。
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