偶然

あれから数年たち、私は社会人となった。私は、地元の信用金庫へ就職が決まり、実家から通うことにした。大学時代の友人と会う機会はほとんどなくなってしまい、今は仕事に打ち込むか休みの日にたまに地元が一緒の友人と軽くお茶や、ランチをする程度で、予定がない日は家から出ない主義だった。


そんな私に先輩から合コンに来てほしいと言われたのが入社2年目の春。

大学時代、周りは合コンに行って携帯番号を交換したり合コンがきっかけで彼氏ができた子も数人いた。彼氏作りのためではなくただ楽しそうだから行っている子もいたが私は誘われるたびに断っていたのだ。

田舎に住んでいる私にとって夜の合コンほど嫌なものはない。わざわざ初対面の人間と夜遅くまで呑んだり話したり笑顔をつくって1時間半かけて家に戻るのは疲れそうだと思ったからだ。

しかし、大学時代にやり残したことのひとつに合コンが含まれているなんて言えなかった。

だからこそ、先輩から誘われたのはとても嬉しく今のうちに行っておこうと思った。


-1週間後-


合コン当日。


その日、仕事を終えてから先輩と先輩の友人たちと合流し指定された店へと向かった。

その店はよくテレビでも見るようなところで田舎にはないとてもお洒落な雰囲気で、照明は暗めの店内だったので少し緊張しながらも落ち着くと思った。


男性4人は先に店内にいると連絡があった。

先輩から今回の合コンはイケメン勢揃いだからちゃんと目に焼き付けて!!目の保養になるよ!!などイケメンという言葉を10回以上は聞いた。

イケメンと話したことなど今までであっただろうか...そもそも女子大に通っていた私はずっと男性とまともに話したこともなければ社会人になってからも仕事についていくのに必死で出会いなんて考えてもいなかった。

ちゃんと話せるのか不安だったが、実際に会ってみると相手が話し上手なのか盛り上げ上手なのなとても話しやすく合コンが始まった瞬間すぐに場は盛り上がりお酒もはいっていった。


そんなとき、ひとりの男性は呑みすぎたらしく少し外に行くと言いながら私にこっそり一緒に行かない?と小声でみんなにバレないように話しかけてきた。

正直、ドキッとした。これが恋のはじまりなのだろうか。私たちは時間差で部屋を出て店のテラスに行った。

その日、風が少しあったので、酔いをさますのにはちょうどよいと感じた。


彼の名前は宮野京。

私より3つ上の先輩で、大手企業に勤めている。彼女はいないが周りが結婚ブームのため憧れからそろそろ自分も相手を見つけたいと思ったそうだ。


宮野さんは優しくて、私からしたら少し大人の男性にも感じたが時々見せるその笑顔が可愛くて仕方がなかった。

そのとき、宮野さんから彼氏いるの?と聞かれ、その時本当に彼氏がいなかったのでいないと答えると宮野さんは明るい声でとても嬉しそうに『ほんとに?!じゃあさ!今度映画とか行かない??無理ならごはんだけでも...』と言ってくれた。


これからどんな恋愛が待っているのだろうかと少し期待をしている自分はすでに恋に酔っていたのかもしれない。

もしかしたら運命なのかな...とか。









そう思っていたのにね。

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