彼氏
『はぁ・・・。』
ため息しか出ない。まさかこんなに何回も同じことされるとさすがに・・・。
咲良は最近、遅刻が多いのだ。
バスが遅れてるとかコーヒーこぼしたから服変えてくるとか髪型が上手くいかなかったから遅れるとか・・・他にもいろいろ。
いやいや、バスとか理解できるけど髪型がうまくいかないとかそれで人を待たせるの?!
理解ができない・・・。
咲良とはいつも改札前で待ち合わせをしているけど冬は改札横の階段下から吹き上げる風が冷たくて少し待ってるだけでもすぐに身体が冷える。
(もう帰ろうかな。)
どこかお店に入ればいいんだろうけどこの駅の近くにはコンビニと喫茶店しかない。喫茶店も11時からと行きたくても行けないのだ。
近くのコンビニでしばらく過ごそうかと思ったが何周も見てきた商品にはもう飽きた。
結局、その日咲良が私の前に現れることはなかった。
後日、謝りのメールがきた。
“行こうと思ったら喧嘩をしていた彼氏から電話がきて謝りたいから今から会えない?って言われちゃって・・・。これで会わなかったら別れちゃうかと
思ったの。ごめんね?”
今すぐに会わないと別れちゃうかもしれないという気持ちは私も過去にしたことがある。
でも、きっとその時に会わないと別れてしまうカップルなんて会っても会わなくてもいつか関係が崩れる時が来るのだと思う。
前に友達がドタキャンした理由が彼氏だったとか言っていたときは嫌だと言っていても人は結局、自分勝手でわがままだ。
友達に対してのすきと彼氏に対しての好きは全く違うもので、人によってはどちらも大切にできるかもしれない。
でも友達に対してドキドキしたりきゅんきゅんしたり好きすぎて変な事を言ってしまったとかそういったことはあるだろうか。
その差なのだと思う。友達は保険とでもいうのだろうか。友達との縁は切れにくいが彼氏との縁は切れやすいとでも思っているのかもしれない。
でも、友達だって縁が切れることはあるのだ。
私は決めた。
咲良に借りていた本を明日返すことになっている。本を返したら私は咲良とは関わらないでおこう。
そんなときに咲良から電話がきた。出てみるとそれは咲良の声ではなく知らない男の声だった。
『咲良が明日は行きたくないって言ってるから本は処分してほしいって言ってるから。あともう関わりたくないらしいから連絡しないでもらえる?』
どうして彼氏からそんなことを言われなければならないのだろう。私は腹立たしく思うのと同時にショックだった。私が何をしたのだろうか。私がそのセリフを言う立場だと思っていたのに、もうこどもじゃないのだから自分の気持ちは自分の口で言えばいいのに男に頼ってる所も気持ち悪いと感じた。
その電話のあと私は咲良と連絡を一切取ることはなく、借りていた本はその日のうちに処分した。
SNSもお互いにフォローしていたがそれも解除して、写真も全て消したが心に残った悲しさと頭に残ったあの電話の声や咲良にされたことだけは消し去ることはできなくてどうして人は楽しいことより嫌なことだけ頭に残るのかと考えてしまった。
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