Dream Kapitel § →null→space→time→ §

Veränderung der Weltlinie:→世界線変遷→:

 夢。それは人が何かに憧れ、現実に求めるもの。夢。それは人が睡眠を行う際に脳を整理する際に流れる生体電気が作り出す虚栄。人間の体には電気が流れている。それは神経の伝達に使用され、筋肉や感覚器官を脳と繋ぐ。記憶もまた、生体電気の電気信号によって脳にファイルされたもの。


 

 ここにとある少年が睡眠を行っている。彼の脳内にもまた、電気信号は流れている。それは彼に虚像の夢を見せる。



 見えるのは小さな手のひらだ。それが本人の物であることも同時に分かる。目の前には女子が三人ほど腕を組んでおり、何かをこの手の持ち主に追及している。言葉は荒く刺々とげとげしい。場所は机の低さと壁に張られた学級目標の低くさから小学校だとわかる。尋問されていた少年はやがてその罪を認めた。彼女たちは見下しながら去っていく。目線の移動と共に、見慣れた光景が移る。中学校。高等学校。どれも少年が通ってきた学校だ。その移動が止まった位置は先ほどと酷似している。女子三人が教室の後方廊下側に腕を組んで仁王立ちし、またもや少年を脅迫している。見渡しても他のクラスメイトは昼食を楽しそうに食べ、こちらのことは存在しないかのように振る舞っている。少年は自分の手のひらが目に入る。さっきより手の大きさが大きいなと、当然のことを思う。少年は少女たちに大声で呼ばれる。少年はその距離を詰める。すると少女たちの声が、表情が豹変した。組まれていた手も宙で行き場を探している。少年は驚いて自分の手のひらを見る。そこにはナイフが握られていた。とても小さな、小型の殺傷するためのナイフ。少年はナイフを強く握りしめ、少女たちに向けた。それから一思いに突き刺した。ナイフは動くことのできなかった真ん中の少女の腹に刺さり、鈍い声を上げた。少女が耐えきれずに少年に被さり、壁に押し付けられた少女は息を荒くする。少年の息もまた荒い。少年はナイフを引き抜き、周囲に少女の血液をばらまいた。教室内は阿鼻叫喚となり、取り巻きの二人がへたり込んで動けなくなっている。少年は少女を見下ろし、少女は見上げている。血の海は広がり続けている。そんな光景を少年はどこか遠くから見ていた。いつの間にか当事者でなくなっていた。視界がだんだんぼやけて中心から左右にノイズが現れるようになる。



 場面が戻った。



 少年はまた当事者だ。今度は手にナイフを握って言えることをしっかりと認知している。三人の少女は恐怖で動けなくなっている。一度も立ったことのない立場になって動くことができなくなっている。少年は再びナイフを向ける。そして同じように飛び込む。ナイフは少女の腹に再び刺さった。制服が赤く染み渡っていく。



 そこでまたノイズが走った。



 少女が二人に分かれていく。片やナイフに刺されて倒れ込む少女。片や友人が刺されて倒れ込む少女。少年は違う少女を刺していた。引き抜いて散乱する血液は異なる少女の物。少年は二人の少女を殺したことになる。隣に見える虚像の教室と今ここにいる少年と。それぞれが一人を、合計二人を。こうして事実は二つ作られた。原因はノイズとしか考えられない。事実は二つだが、存在できる世界は一つ。果たしてどちらの世界で彼が今は生きているのか。その部分は彼にとって頭を麻痺させる原因だ。



 世界は分岐し、世界線となって変遷する。意識が浮上する中で少年は有体に言って最悪の夢だと思った。

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