第2話 不形の訪問者②
「異世界から来た冒険者達は新しい技を習得するとこの辺りに来て私達のような弱小キャラに呪文の試し撃ちをしたりするんです。でも何故、新しい技や魔法を覚えたからって私達が試し打ちの実験台にならなきゃいけないんですか」
憤りか恐怖からかは分からないがベホヌズソさんはこの話の間スライムの体をプルプルと震わせていた。
あー分かる。なんか柔道の技とか覚えたらちょっと技かけさせろよってやつクラスに一人はいたわー。
「では、ここにはその相談に?」
「はい、出来ればそのやめさせる方法等を教えて欲しくて」
「やめさせるって言っても奴等は新しいオモチャを貰って遊び半分でやってるようなもんだからやめさせるのは難しいですよ」
そう大した理由など殆ど無いだろう。だからこそ余計にタチが悪い。いじめに大した理由などないように生物として上位に存在するものが下位のものを虐げるのは恐らく本能なのだろう。
「なら、どうすれば?」
「まずはやめてくれと言ってみてはどうでしょう。それで駄目ならアス◯ロン唱え続けて相手が諦めるのを待ちましょう」
「おい、やめろノート。それ以上いうと鉄の塊になる前に俺たちが肉の塊になるぞ」
「そうですよ。アス◯ロンなんて呪文使えませんよ。マダム◯ーデンのトラウマを忘れたんですか?」
あっベホヌズソさんもそこら辺触れていくんだ。でも、トラウマを植え付けてたのはあんた達の種族だけどな。
「では、この国の市民権を取得されてみては?幸いこのオーインでは魔物でも試験さえ受かれば取得できますよ。」
再びノートが提案する。なるほど市民権を得てしまえば法を盾に抑制することはなんとか出来そうな気がしないでもない。
だが問題は...試験に合格できるかどうかとこの国でスライム族が働いていくことができると証明することか。
試験については一般常識やらを聞くだけだからそちらの方はまぁなんとかなるだろう。もしダメでも最悪奥の手をがある。
だが、この国で働いていけることを証明するとなればスライムでは難しいだろう。
「ベホヌズソさんは働いてた経験とかありますか?」
「一度だけありますよ。でも、あれはもうしたくないです」
意外な答えが返ってきたので驚いて「えっ!?」と声が出てしまった。だがあるのなら話は早い。その仕事をこの国ですれば良いのだから。
「その仕事ってなんですか?」
「横一列に並んで冒険者の前に現れるっていう仕事なんですけど...」
「えっ!あれ仕事だったんですか?偶然出会ったとかじゃなくて?」
「当たり前ですよ。誰が好き好んで死ににいくんですか。ちゃんとその地区の魔王様から給料出ますよ」
まじかよ。すごく聞きたくない裏話を聞かされたんだが...
「因みに給料は一回につき1Gから3Gぐらいでした。もちろん倒されたら冒険者に奪われますので、その時は収入ゼロです」
倒した時に獲得するアレお前らの給料だったのかよ。しかし、命がけの仕事をして1Gって林檎を一個買えるかどうかだぞ。異世界ブラック過ぎるだろ。
それにその経験を生かす仕事なんて普通ないぞ。
「殴られ屋とかどうです?少なくとも収入は確実に入りますよ」
また、唐突にノートがとんでもない案をぶち込んできた。
「ノートさんそれ何の解決にもなってないし、なにも変わっていないんだがスライムからサンドバックにジョブチェンジしてるだけなんだが」
「私ももう痛いのは嫌です」
まぁ当然の反応だろう。それが嫌だからここへ来たのだから。
さて、本当にどうしたものか。まずは自分に合った仕事でも見つけてもらうか。
「とりあえず、明日から仕事探しでもしませんか。良ければ自分たちも手伝いますので」
「本当ですか。是非お願いします。」
現状が辛いのが要因なのか分からないが即答だった。こうして俺たちは明日会う約束を交わしひとまずこの話を終えた。
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