魔王と勇者の相談役

しんおのれ

第1話 不形の訪問者

あの人には悩みごとなんて全くないだろうなと思ったことは無いだろうか。

恐らくあると答えた方はきっとその完璧超人のことを羨ましく思ったことだろう。

しかし、知性ある生物として生まれた以上悩みごと等生まれて一度もないなんて生物はこの世には存在しないのだ......多分。


これはどうしようもない俺とその相談者とのお話である。

就職先が決まり残りの人生の夏休みを堪能しようとしていた矢先だった異世界転移という悲劇に見舞われたのは。

異世界転移といえば、普通チート能力や能力は無い代わりに元いた世界の知識とかを使って可愛い女の子達と困難を乗り越えていく感じのものを想像するだろう。

俺も最初はそうだった。家族にもう会えないこと等不安もあったが、これから可愛い女の子達と冒険が待っているはずだと思う事で何とかその時は平常心を保つことが出来た。

だが、俺を待っていたのは冒険や女の子ではなく地獄だった。異世界に来たもの達は転移した国で定期的に集められ適正検査なるものを受けるのだ。そして、その結果によって仕事を決めたりするのだが、その結果が酷すぎた何故なら商人適正や冒険者適正共に目も当てられないくらいに悪かったというより他の転移した人達があまりにも凄すぎたある者は一瞬で百の兵を気絶させまたある者は、錆び切った武器などを新品の状態まで戻してみせたのだ。

あとで、聞いた話によると皆なにかしらの能力与えられてくるのだと言う。

一言で言うと不平等だ....

しかし、能力がないからと言って何もしないという訳にもいかず、色々あり今は困っている人の相談に乗ると言う様な仕事をしている。


「さて、前置きはこのくらいにしておいてそろそろ本編に行こうじゃないか作者さん」


「いや、仮にも主人公である君が本編とか作者さんとか言わないでくれる?ゲームで言えば禁じ手だからね。それ」


「前置きが長すぎるんだよ。普通あんなの見せられたら読者逃げるぞ」


「分かった。分かったから読者とかいわないでくれ」


ーーーーーーーーーーーーーーー


この俺、鳥見とりみ たもつが異世界に来て相談役という仕事をしてきて5年ぐらいだろうか。

今はオーインという国で仕事をしている。

まぁ相談役と言ってもお客さんの愚痴を聞くだとか困っている事に対して一緒に解決策を考えてあげるとかそんな事しかしていない。


「先生お客さんです」


目を開けると黒髪の中に白髪が目立つ整った顔立ちの女性が不機嫌そうに立っていた。


「どうしたんだ。ノートさん目が怖いよ」


ノートとはこの相談所を立ち上げた時からの仲で会計から雑務など手のかかる仕事をしてくれている。


「さっきからずっとお客さんが来たって起こしてたんだけど」


「そうか、そりゃ悪かった呼んでくれ。」


そう言うと、彼女は「はいはい。」と言いお客さんを部屋に呼び入れた。


「今日はどうされ....!!!?」


いつも通り相談者との会話を始めようとした時、その相談者の姿に驚愕してしまった。

その人はというよりそいつの体は液体のようなものだった。


「あの〜ノートさんこの方は何者なんですか?」


「スライムのベホヌズソさんです」


おい、名前がすでにギリギリアウトなんだが。某ゲームの回復呪文みたいになってるぞ。


「あの〜私は魔物ですけど相談にのってもらえるんでしょうか。噂では誰でも相談にのってくれると聞いたんですけど」


おおっ!喋れるのかそれに結構声が綺麗だな。


「大丈夫ですよ。この男は金さえ払えば基本的には相談にのってくれるから」


横からノートが余計なことを言って会話に入ってくる。

やめろ!面倒ごとだと断りにくくなるだろうが。


「良かった頼る所がもうここしかなくて断られたらどうしようと不安だったんです。」


最悪だ。ここで断ったたらなんか見捨てた感じになる。それにこの感じは本当に困っているって気がする。


「分かりました。とりあえず何に困っているか話してもらえますか。どのような事に困っているのか知らないとこちらもどうしようもないので」


そう言うとベホヌズソさんは自分の周りで起きた問題について語り始めた。






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