ふたけたの10話

幸せになることは無理だと思っていた。

何かに取り憑かれたわけでもない。

ただ自分は、そんな権利がないような気がして

この世界は僕には綺麗すぎるような気がして。

綺麗な世界で汚れた僕が歩くと目立つから、なるべく外に出ないようにして。

だけど


物好きな君が僕なんかに構うから

問答無用で本なんか押し付けてくるから

君が優しく微笑んで感想を聞いてくるから

僕を見て嬉しそうに笑うから


僕の目に汚れがたくさん入っていたはずなのに

何も見えなかったはずなのに

君が僕に世界を見せるから


嗚呼、言い訳がたくさん出てくる。

悪者みたいに全部君のせいにしている。

君のせいにじゃない。

君のおかげなのに。


世界を見ることが出来そうだよ。

この汚れた上着を今日で卒業しようと思う。

君があまりに美しいから

隣で歩くには汚れた服は恥ずかしいから

君が綺麗に洗濯してくれたから


ああ、また君のせいにしてる。



これでも精一杯の感謝を伝えるために

君と一緒にいるために

頑張って考えてきたんだよ


卒業式の今日

僕は初めて君に本を貸してみようと思う。

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