8×8=64だけど9話

君に本を貸して

その度に色々な表情をして返ってきて

また貸して

また君は一つ感情を知って

そんなこんなを繰り返した私たち。

少しずつ、会話も増えて

君はちゃんとみんなと同じ、人間だよ

『皆んな幸せになる権利がある』

とか普通は言うのかもしれないけど

私はそんなことないと思うんだ。

幸せになるのは権利とかそんなもんじゃない。

誰かが誰かを幸せにしてくれるものだと。


君のその瞳には何が映る?

今でもまだ、何も見えないっていいますか?

貴方の瞳は黒真珠。

綺麗な瞳で何も見えないはずがない。

貴方が何かを見つけるまで

貴方が色を認識するまで

貴方が何かを綺麗だと言うまで

私は貴方を見守っていたい。



だから、卒業式の今日も、君に本を貸す。

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